第28話 消えない心と友達


「悪いがダンジョンに行ってくる」

 俺はイラつくのを抑え、みんなに言う様に喋る。


「そうか、我は行かぬぞ」

 ファフはそう言う。


「あぁ、1人でいい」

 と言って1人でダンジョンに行く。



 岡崎ダンジョンに入って行く。

 いつもと違う俺の雰囲気を感じ取ったのか受付のお姉さんも喋りかけてこない。


 カードを通し、中に入っていく。


 とにかく暴れたくて素手でモンスターを倒して行く。

 もう50階層だが、汗ひとつかかない。


「そうだ、自分のレベルを下げればいいのか」

 自分のレベルを収納で下げる。


 どれだけ傷つこうが『超再生』があるので動き回れる。


 瞬歩を使って戦うなんていつぶりだろうか。

 レベルを下げすぎかもしれないがこれくらいがちょうどいいな。


 服は破れ血だらけだが身体には傷は残らない。

「オラァ!かかってこい!」

 と言ってモンスターの中に身を投じ、ありったけの力で殴り倒して行く。


 自分のレベルが上がって行くのがわかる。


 なんとか100階層まで来た。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 クソッ!何でまだこんなにイライラするんだ。


 扉を開けると水龍がいる。

「オラァァァァ!!」

 と瞬歩を使い殴って行くが流石に100階層のボスだけあってタフだな。


 何度も攻撃を食うがそれでも素手で水龍に向かって行く。

「オラッ!」

『グオオォォォ…』


 やっと倒して水龍が消滅していくのを見ている。



 俺はどうしたいんだ?


 また元に戻れる?


 そんなことできるわけない!


 俺は裏切られたんだ!


 あんなに信頼してたのに!


 親友だと思ってたのに!



 ふと、そんな事を思っている自分に気づく。


 ふぅ、俺はまだ子供なんだろうな。


 まだあいつが謝ってくることを待ってるんだなぁ。


「あははは…ハハハハハハハ!俺は弱いなぁ!なんでこんなに寂しくて悲しくて…ゔぁぁぁぁぁあぁぁ!!」


 俺は泣いた、心の底から泣いた。


 俺は友達だとまだ思ってる。


 親友の言った言葉が刺さって抜けない子供なんだ!


 だからこんなにイラつくんだ!


 

 泣き止むと心は晴れないが気持ちは落ち着いた。


 どれだけ大人だと思っても、心はまだ大人に成り切らずに子供のままで刺さった時のまま。


 俺はアイツが謝って戻って来ることを待ってるんだな。


「はぁ、帰ろう」


 ドロップで出たのはブレイブハートと言う剣だった。


 なんて嫌味なドロップだ。


 俺の心はそんなに強くないぞ?


 俺は新しい服に着替えて、ドロップを腰に付けダンジョンから出る。


「もう夜か」


 家に帰る。

「ただいま」

「おかえりなのじゃ!少しはスッキリしたみたいじゃな」

「あぁ、まぁな」

「そうか」

 ファフはやっぱりいい奴だな。


「母さん、腹減ったな」

 母さんにも悪い事したなぁ。

 だが、普通に接してくれる。

「そう、じゃあ用意するわね」

「母!今日は何なのじゃ?」

「今日はハンバーグよ!」

「よっしゃー!なのじゃな!」

 ファフは喜び、セレネも出て来る。


 そして夕飯が始まってすぐに父さんが帰って来てまた騒がしい食卓だ。


 そして風呂に入りベッドで横になる。


 次の日、俺は悟の家に行く。


「おばちゃん、この前はごめんなさい」

「い、いいのよ!私こそ本当にごめんなさい!まさかあんなことになって「いや、いいんだ」…」

 俺はおばちゃんの言葉を遮る。


「アイツに言ってくれるかな?岡崎ダンジョンの100階層で待ってるって」


 おばちゃんは泣きながら頷いてくれた。


「さぁ、俺はこれから行ってるんで」

「わ、分かったわ」


 俺は100階層で待つことにした。


 ファフやセレネも置いて来た。


 今回は普通に100階層まで行く。


 1ヶ月が経った、まだ来ない。


 飯はネット通販で風呂はないのでクリーンでどうにかしている。


 結局、悟がここまで来るまでに半年はかかった。


「はぁ、お前はいつまで待たせるつもりだ?」

 俺が振り向くとボロボロになっている悟がいた。

 鎧も殆ど機能していないだろう。

 


「しょうがないだろ…俺はお前ほど強くない」

 下を向いている悟。


「あんだけいきってたのにか?」


「そうだ、俺は弱い。弱いし間違えるのに、勇者なんかになったんだ!」

 と涙を流し俺に言う悟。


「そうか」


「ごめん!ごめんなさい!俺は間違ってた!お前に言った言葉、言われて初めて分かったくらいにバカだけど!本当にごめん!」


「まぁ、しょうがないな!お前だもんな!」


「ごめん…本当に」

 俺は瞬歩を使わず。レベルを落としたまま悟をぶん殴る!

「許してやる!お前みたいなバカはやっぱ俺くらいしか友達になる奴はいないからな!」


「いつっ…あぁ、お前しか友達はいないな」

 と立ち上がり、俺の胸を軽く叩く。


「今度間違ったらぶん殴ってでも正してくれ」

「わかった、いつでもぶん殴ってやるよ」

「健人、ごめんな」

「あぁ」


 俺はヒールをかけてクリーンを掛けてやる。

 服も俺のを渡して着替えさせる。


「んじゃ帰ろう」

「あぁ」

「会わせたい奴がいるんだ、俺の仲間だ」

「俺は1人で頑張ってたんだがな?」

「それはお前に友達がいなかっただけだろ?」

「そうだな、お前以外はいなかった様だ」

 と言って肩を組みダンジョンから出て行く。

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