第7話 その頃
その頃、訓練所では長内と峰川、篠宮が訓練していた。
「もっとちゃんと振らないとスキルは手に入らないぞ!」
と教師の
職業がなくなってからは今までのように笑って過ごすことがなくなってしまった三人は落ちこぼれと言われて蔑まされていた。
「まーだやってるよ、いい加減諦めたらいいのに」
「しょうがないんじゃない?だって職業すら無くなったんだし」
聞こえるように言われて悔しい思いをしている。
また篠宮はネット通販なんてスキルで楽をしていたのだからさらに言われる。
「マジネット出来なくなったらいる価値ないじゃん」
「だね!言えてる!」
篠宮は耐えて歯を食いしばり木剣を振る。
せめて剣術を獲得して、レベルを上げればこんなこと言われなくなると思い、臼井のエロい目も気にせずがむしゃらに振っている。
「ほらもっと腰に力を入れる!」
「くっ!」
教師の臼井は教育と言うスキルがある為、優位に立って指導している。
これまでは教育と言うスキルの使い所がわからず、みんなに紛れていたが、いまは言うことを聞く三人がいるだけで楽しくて仕方ないのだ。
歪んだ大人は増長していく。
「ほら、長内!もっとしっかり下まで振り切れ!峰川ももう疲れて来たのか?身体がブレてるぞ!篠宮は腰をもっとこう!こうだ!」
と篠宮に触れて教える。
ただのセクハラだが異世界にいる臼井には関係ない。
ここには教育委員会も無ければ、篠宮の味方をする生徒すらいないのだから。
王城の方はと言うと、騎士団長は自分が剣術しかないのを黙って兵士を扱いていた。
「おら!そこ怠けるんじゃない!」
だが内心では早鐘を打つほど焦っている。
こんなことではいつバレるかわからないので自分自身を鍛えたいが、部下の手前それすらできない。
レベルが1になったのでその辺の新米兵士にすら負けるであろう対戦もなんとか口を濁して避けている。
それに性欲増加も要らないスキルだ。
女を見れば発情してしまうので自分を抑えるのに必死になっている。
そこらの女ですらレベルは10ほどあるのに手篭めにしようとしても負けるかもしれないと言う恐怖からなんとか耐えている。
王国騎士団長は頭がどうにかなりそうだった。
王はと言うと、王の証が無くなった事で秘密の部屋にも入ることができない。
宰相も政治学、経済学などのスキルが無くなったために何をすればいいのかを考えきれずにいた。
それでも勉強をして国庫を守らねばいけないと思っていたが、宝物庫に行くと全てがなくなっていたので愕然とした。
直ぐに王に報せると、
「こんな時に魔物の襲来なんてあったら…」
魔物から守る為、代々受け継がれて来た防護壁を張るための魔石がどうなっているかも確認出来ていない。
誰がやったのかわからないが、国庫が空になっていて、あるのは手元にあった金だけになる。
王も知らない事だったので2人で頭を悩ませ、民衆の税をあげるしか方法がなかった。
民衆からの突き上げも怖いがやるしかないのである。
森の方ではレベルが1になって最初からあったスキルさえ無くなってしまったクラスメイトはゴブリン狩りをしてレベルを上げることをしている。
スキルもないのでゴブリンを倒すのにも時間がかかり、勇者の悟が援護してようやくレベルを上げて来ていた。
「お前ら何やってるんだ!さっさと倒せ!」
と悟から檄が飛ぶが、
「くっ!お、おまえはいいよな!レベルもスキルも無くなってないから!俺らは職業以外何も残ってないんだよ!」
「だから助けてやってるだろ!西園寺ですらやってたんだ!できて当たり前なんだよ!」
「ぐっ!」
西園寺ですらできていた、と言う言葉に皆んなは何も言えなくなる。
「まぁ、そんな怒るなよ、みんな仲間なんだぜ?」
と内藤が言い、悟は次のゴブリンに取り掛かる。
が内藤も自身の変化に気づいていた。
内藤は職業もスキルもあるが最初の戦士ではない。
内藤の職業はオークソルジャーになっていて、スキルも『中級体術』『中級剣術』『絶倫』になっていたのだ。
自分がこれからどうなるのかを怯えながら出来るだけクラスメイトから良く見られようと努力をしていた。
もし本当にオークになってしまったらと言う恐怖が内藤の中にある。
ただでさえ女を見るだけで興奮してしまいそうになるのだから自分をしっかり持たないとやばいのはわかっている事だ。
悟も頭を悩ませていた、今までできていたことの半分も消化しきれていないし、これなら健人の方がマシだったとも言えるが、もういないのだ。
自分のレベルすら上げられない状態に気持ちは萎えるが、他のクラスメイトのレベルが上がれば元に戻ると信じて今はやるしかない。
西園寺健人が抜けて、全ての歯車が狂ったように何もかもうまくいかなくなった王国は今は持ち堪えているがいつ崩壊するかわからなくなっていた。
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