いずれ深淵に至るもの

　戦う才能を持たないテオが冒険者となったのは、ある傷ついた狼を拾った事がきっかけだった。

　ズィーリオス島には奈落を囲むようにドーナツ型のダンジョンがある。そこにテオという１人の画家が暮らしていた。
　冒険者の家系に生まれながらも、冒険者になることを許されなかった彼女は、今日も退屈に酒場のバイトに精を出す。そんな彼女はある夜、１人の傷ついた冒険者を拾う。狼の耳と尻尾を持つ獣憑き、幼馴染の魔法使いを解雇したことをきっかけに、落ちぶれてしまったヴォルフラムという青年だった。

　何もかも正反対な２人の唯一の共通点は、なりたい自分に成れないということ。
　冒険者になりたくても戦う才能を持たないテオ。
　誰よりも強くなりたいのに回復術士の素養ばかりあるヴォルフラム。
　２人が出会い、理想の自分を目指しながら冒険するお話。