第18話 8番街へ
『ダンデ・ライオン』の個室に通されたロッタと老婆――ラウラは、そこで改めて9番街で起きた事を語った。
ヴォルフラムの家まで無事に戻ったロッタは、真っ先に老婆を頼った。彼女にとって信用できる他人は、ヴォルフラムかラウラの2人くらいしかなかったからだ。
ラウラを伴って戻ると、そこにはすでにヴォルフラムの姿はなく、眠る子どもと謝り続ける老婆しか残されていなかった。その老婆は見知らぬ男たちに脅されてお茶に薬を仕込んだと言ったそうだ。
「それでテオお姉ちゃんに知らせなきゃって思って……ほかに頼れる人も知らないし……」
「さすがに住まいまではわからなかったからね。6番街の新聞屋を頼らせてもらったのさ」
カウンター席に座って「情報料は特別割引にしてやるのにゃ」とふんぞりかえるリーヌスに、テオは黙ってミルクセーキを出す。
「最近横行している人売りの仕業だろうね」
「そうなると、あまり悠長にはしていられないわね」
ディーデリヒの言葉にメリエンヌは頷いた。
「市場に出回ると手が出せない、ということでしょうか?」
「そこは心配しなくていい。そんなに早く売りには出されないからね。ただ、人売りは、捕まえた人間を商品になるよう教育する。……薬や暴力でね」
「それは……!」
「そう、だから急がなきゃならない。私は自分が傷つくのは大歓迎だが、友人が傷つくのは看過できないんだ。幸い、人売りの本拠地はもうわかっている」
「本当ですか!?」
「もちろんさ。こんな嘘は吐かないよ」
ぱちん、とウインクを飛ばすディーデリヒの告げた事実は、その場の人間を驚かせた。それは情報を取り扱うリーヌスですら例外ではなかった。得体のしれないには身体だけではないらしい。「侮れない男だにゃ……」とリーヌスは悔しそうにしながらミルクセーキを啜る。
「この件は引き続き私に調査協力が依頼されているからね。自然と情報も入って来るよ。……以前、ダンジョン内に仕掛けられていた罠で行方不明になった冒険者たちがいただろう。彼らのうちの数名が8番街で保護された。心神喪失でまともに話ができる状態じゃないんだが……少なくとも、自分の足で8番街に訪れたわけでないのは確かだろうね」
「関所に記録がなかったのね」
「ええ、その通り」
8番街はズィーリオスの街で唯一通行手形が必要な場所だ。というのも、8番街の土地だけは領主のものではなく、彼の弟であるモーリッツ・ハーバーの私有地なのだ。
カジノ、闘技場、サーカス……娯楽施設が集まったこの土地に入るには、関所で発行される通行手形がいる。警備は厳重というわけではないが、心身喪失状態の人間が掻い潜れるようなものではない。
「8番街は唯一領主様……父上の目が届かない場所だからね。悪事を働くにはちょうどいい土地なのさ。叔父上はお世辞にも褒められた人間ではないし……」
「おい、こいつ今ナチュラルに領主のこと”父上”って言ったにゃ」
「関係者どころか実子ですか」
「世も末だにゃ」
「ちょっと2人共聞こえているよ」
ひそひそと囁き合う女2人に対して、ディーデリヒは唇を尖らせてみせる。そう言う割にはたいして気にした様子でもない。言われ慣れているのだろう。
「そんな事より、場所がわかっているなら助けに行きましょう」
すっぱりと話題を変えたテオに、リーヌスなどは「マジで言ってるのかにゃ?」と口元を引きつらせる。それはメリエンヌやラウラも同じだったようだ。少し前に大怪我をしたばかりであったし、何より彼女が冒険者でも何でもない一般人であることは、見た目からわかることであったからだ。
呆れたように半裸の美丈夫もため息をつく。
「……相変わらずテオ嬢は恰好良いね。けれど、私も反対だよ」
「それはなぜです?」
「キミがいまだ一般人だからさ。危険な場所とわかっていて連れて行くことはできないよ。いかに、キミの能力が有用で、ヴォルくんのことを想っていてもね」
「危険は承知の上です」
「そうまでする理由はなんだい? 偶然拾っただけの青年を、ひとときの間を共に過ごしたとはいえ、そこまで気にするのは何故だい? 会いたくないとまで言われた相手を、危険を顧みず助けに行って、キミは、彼と、どうなりたい?」
捲し立てるような男の言葉は、まるでテオを責めているようにも聞こえた。
いいや、違う。
彼は背中を押してくれているのだ。
テオはゆっくりと目を伏せた。テオが冒険に焦がれていることも、彼がヴォルフラムと行動する事に嫉妬していることも、すべて見抜いたうえで問うているのだ。未だに踏み出す一歩を躊躇うテオに、自分のために、ヴォルフラムのためにも、どうしたいのかはっきり示せと。
夢を捨てて生きるのか、父の遺言を破って夢追い人になるのか――。
「――僕は、彼の仲間ですから」
マカライトグリーンの瞳に強い意志が宿る。
「仲間を助けに行くのは、当然のことです」
小さな唇が告げる意思に、ディーデリヒは嬉しそうに微笑んだ。
***
8番街は絢爛豪華な装いの建物が連なる極彩色の街だ。
至る所に設置された雷電球のために、昼夜問わずに明るい。眠らない街は娯楽に飢えた成金貴族の遊び場だ。
コツコツとヒールを鳴らしながらテオは8番街の入口に立つ。
関所とも呼ばれるこの入口には、8番街の主であり、ディーデリヒの叔父でもあるモーリッツ・ハーバーの雇った門番がいる。青い制服を纏った彼らは気難しそうな顔でこちらをチラチラと眺めていた。――それも無理のない話だ。
「うん! 2人ともよく似あっているよ!」
まぶしい笑顔で頷くディーデリヒは、太陽のようにまばゆい美貌を放っている。先ほどまでは上半身裸の男だったのだが、ここに来る前に着替えていた。奔放を絵にかいたような男が、カッチリとしたフォーマルなものを身に着けると一瞬誰なのかわからなくなる。サラサラの長い金髪を1つにまとめ、前髪は額を出すように撫でつけていた。
その両脇に並ぶのは、やはりここに来る前にドレスを着せられたテオとリーヌスだ。普段は無造作に垂らしている髪の毛も、ぎちぎちに結われて固められた。純銀の髪留めが重く感じる。
テオは厚みのない胸元を悲し気に見た。黒地にシルバーと薄い紫をアクセントにした可愛いドレスだが、本当に悲しくなるほどに胸周りが寂しい。隣で青い裾長のバルーンスカートを翻すリーヌスが、意外と凹凸のある身体をしていたものだから、自分の貧相な体が際立っているような気がしてくる。
「どこで服のサイズを知ったのか気になりますが……」
「気にしにゃい、気にしにゃい」
どんよりとしたテオの声に、リーヌスは「くれるっていうなら貰っておくにゃ」と明るく返した。
たしかに、と内心頷く。
ドレスなんて庶民は結婚式くらいしか着る機会がない。それもこんなに高級なものではなく、近所のお姉さんや母親が着たものの使い古しだ。こんな特異な機会がなければ、袖を通すことなどなかっただろう。
8番街にはドレスコードがあるのかと言われればそんな事はないのだが、これからディーデリヒは島の領主の代理として、テオとリーヌスは彼の友人として島の視察に同伴する事になっている。それならば、そう見える格好をしなくてはなるまい。バーテン服の女とよれたパーカーを着た猫耳女などが馴染めるのは、せいぜい仮装大会くらいのものだ。
「というか、何で貴方が同行しているんですか。僕には一般人がどうとか言っておいて……」
「ゴーレムの罠のことを考えると、多少でも魔法に詳しい人員がいるって事で協力依頼があったにゃ。私には《根無し草》のカルマがあるから、いつでも脱出できるしにゃ」
リーヌスは懐から取り出した小切手に軽くキスを送る。先ほどディーデリヒに渡されたらしいそれには、見たことのない数のゼロが書かれていた。必要以上の危険を冒さない彼女が二つ返事でディーデリヒの依頼を受けたのはこれが大きな理由である。
「ま、テオが行くにゃら、頼まれなくても協力くらいならしてやったにゃ」
「ならそれ半分ください」
「それとこれとは話が別にゃ」
するすると小切手はリーヌスの胸元に吸い込まれていった。「どこにしまっているんですか」とテオは顔を赤らめてふくれっ面になる。
「それにしてもおチビちゃんを置いてくるのは大変だったにゃあ」
「『オイラも行く』って聞きませんでしたからね……」
8番街に向かうのはディーデリヒとテオ、リーヌスの3人に決まり、メリエンヌやラウラ、ロッタは店で待つことになったのだが、ロッタは自分も行くと言って聞かなかった。店の床を転がりまわり『オイラも行く! 絶対行く~!』と泣き叫ぶロッタをライラが抑えているうちに慌てて店を出て来たのだ。あの幼い妖精がヴォルフラムによく懐いているのは知っていたが、さすがにあのような子どもを連れて行くわけにはいかない。
「2人とも! もう通れるよ~!」
「わかったにゃ! 子どもみたいに手を振るんじゃにゃ~よ」
「どんな格好でも目立ちますね、あの人」
関所の前で手を振る美丈夫に急かされた2人は、すぐ後ろの景色が不自然に揺らめいたのに気が付かなかった。蜃気楼のようにゆらゆらと揺れる景色は、一瞬だけ栗毛の少女の形を見せたが、少女が慌てて指を振ると、その姿は煙のように掻き消えたのだった。
***
「坊ちゃん! おまちしておりました~!」
関所を潜り抜けたテオたちを出迎えたのは、甲高い男のねこなで声だった。
生え際の怪しい茶色い髪を、きっちり七三に固めた壮年の男だ。ぴっしりとした黒服に身を包み、猫背に揉み手、愛想笑いを張り付けてへりくだっている。
「やあ、フランツくん。元気そうだね」
「坊ちゃんも壮健そうで何よりです」
突然の出迎えに目を白黒させている2人に、ディーデリヒは「父の仕事仲間さ」と囁いた。
「――デニス・フランツ。島の貿易を取り仕切るフランツ商会の会長だにゃ」
「そのとおり。さすがはリーヌス嬢だ」
情報屋のリーヌスはこういった情報に明るい。
小声でもたらされる情報に、表情を変えぬまま頷く。テオの良いところはクールな所だとディーデリヒは思っていた。いつだって平静を忘れない。彼女ならとなりに王子様が立っていたとしても、冷静に対応できるだろう。
「さぁさ、こちらへどうぞ。サーカス団の方にはもうアポイントをとってありますから」
猫なで声の先導を聞きながら、テオ達は絢爛な8番街をひた進んだ。赤だったり青だったりと派手な建物の周りで通行人を呼び込む従業員がいる。外部からの客人もいるのか、道行く人々の服装も異国情緒溢れるものだった。
やがて正面にひときわ大きなテントが見えてくる。
濃紺の生地に夜空を散らした屋根と、黄色のカーテンに覆われた円形のテント。細かい色付きの雷電球でライトアップされている。
「あれが、『ツークフォーゲル旅団』のテントでございます」
デニスが手で指し示す。リーヌスは「大きいにゃあ」と飛び上がった。
「今までで最も大きなテントを作ろうと、モーリッツ様が多大な出資をされたようです」
「叔父上が?」
大げさに驚いて見せるディーデリヒの後ろで、テオをリーヌスはひそひそと囁き合う。
「この人が領主の息子って事実に未だ慣れないんですが」
「同感にゃ」
「ははは! 今まで色んな知人に正体を明かしてきたけど、どうしてか信じてもらえないんだよね!」
「どうしてかは胸に手を当てて考えてください」
「心拍数が上昇しているね!」
「興奮はしないで」
ディーデリヒと挟んでわちゃわちゃと戯れる女性陣を見て、デニスは珍しいことは続くものだと目を見張った。
ハーバー家の嫡男といえば、博識で有能と言われていたが、どちらかというと孤独な男だった。人当たりは悪くないのに、誰とも組まず、特定の人間とは付き合わず、1人きりでダンジョンに潜る日常を送っていた。
それが最近はあのヴォルフラムというスラム在住の獣憑きと一緒にいる所を見かけるようになった。たまに4番街の邸宅に招いて食事をすることもあるほどだ。そのうえ、年の近い女性たちとも親し気に話すようになるとは。
「あ、あの~……」
はっはっはっと明るく笑うディーデリヒの声を聞いて、テントの隙間から小太りの男が出てくる。次いで背の高い筋肉質な髭の男と、3mほどの長身を持つ巨大な女がぬるりと現れる。
翡翠の髪をした美しい女だった。雪のように白い肌と、虹色に輝く不思議な瞳をしている。唇は艶やかな薔薇色で、人間の視線を奪う妖しげな引力めいたものがある。そして何より、その体は常人の3倍ほどには大きい。
「でっ……」
リーヌスの口をテオは咄嗟に塞いだ。
「まあ、お客様? ごきげんよう」
「ええ、こんにちは」
歌うような声で挨拶すると、翡翠の髪の女は少女のように頬を赤らめて喜んだ。
「『こんにちは』ですって。貴女、あたくしに『こんにちは』って言ってくれるのね。嬉しい。知ってるわ。アイサツは人間が仲良くなりたい時にするんでしょう? うふふ、とっても嬉しいわ。私に旦那様がいなかったら結婚したいくらい!」
「何やってんだ、エレノア! 行くぞ!」
先に進んでいた髭の男が怒鳴った。
ぺらぺらと口早に語っていた女は「はぁい、ごめんなさいね。ダーリン」とニコニコしながら小走りで追いかける。足の長さが違うのだろう。2歩で追いついて、その後は髭の男の後ろを小股でゆっくりと歩いていった。
「……なかなかにやばい女だったにゃ」
「初対面の女性に求婚されかけるとは思いませんでした」
「彼らは?」
呆気に取られている女性陣を横に、ディーデリヒは一緒に出てきた小太りの男――団長のルチャーノに尋ねる。
「最近雇った冒険者ですよ。30層付近で魔物を狩って、素材を卸して貰ってるんです」
「あまり見ない顔でしたね」
「最近島に来たばかりですからね。女の方は目立つのが得意じゃないそうで……美人ですがあんなにどこもかしこも大きいとね……人目を避けているんでしょう」
テオは正直ルチャーノの言い分は面白くなかったが黙って頷いた。
「では、我が自慢のサーカス『ツークフォーゲル旅団』を紹介します」
自信満々に胸を張る男に促され、テオ達は分厚いカーテンを潜った。
円形のテントの内装はシンプルなものだった。
中央が最も低く、円形の舞台がある。舞台を囲むように席が連なり、後ろにいくにつれて座席は高くなっていくようだった。出入口は舞台と同じ高さにある。
「ここで我々はショーをいたします。演目としては火吹き男、ナイフ投げ、空中ブランコ、綱渡り、その他いろいろという感じですね。どの演者も素晴らしく洗練されています。今日はこのまま見て行かれますか?」
「もちろん。実はそのために来たと言っても過言ではないんだ」
「ありがとうございます。最高の席をご用意していますよ!」
ディーデリヒを相手に機嫌よく話をするルチャーノに、周囲を見渡していたテオが尋ねる。
「演者の控室がないように見えますが」
ルチャーノは「よく気が付きましたね!」と顔色をさらに明るくした。
「なるべく多くのお客様に来場いただけるよう、演者の控室は隣のテントとなっております」
「それじゃあ、舞台に上がる時はどうするのですか?」
「舞台に白いタイルがいたるところにあるでしょう? あれと同じものが控室にもあります。あのタイルを踏むと同じタイルの場所に瞬間移動できるのです」
「転移魔法ですか」
ちらりとテオはディーデリヒを見た。ディーデリヒは小さな声で囁いた。
「私の目は特別製でね。半径500メートル圏内の地上にあるものは確認できている。地上にはめぼしいものはない」
「なら、地下ですかね」
「その可能性は高い」
袖口から小さな懐中時計を取り出して確認する。ショーの開始まで30分を切った。そろそろ一般客が入場し始めてもおかしくはない。
テオはリーヌスの脇腹を肘でつついた。
リーヌスは「ちょっと外の空気を吸ってきますにゃ」と眉間に皺を寄せて口元を抑える。ルチャーノが「医者を呼びましょうか?」と尋ねたが、ディーデリヒが手振って制した。
「昨日飲み過ぎただけさ。彼女は酒好きでね」
「僕が付き添います」
「ああ! ……よろしく」
バチコーン、と強めのウインクに微笑みかけ、テオはリーヌスの肩を抱いて一旦テントの外へ出た。
すばやく人目のない場所まで移動すると、リーヌスは魔法で自分とテオの2人分の分身体を作った。ずるりと影から瓜二つの分身が生まれてくる。彼らをテントへ戻すと、本体は控室用のテントへと忍び寄った。
「なるべく演者には鉢合わせしたくありませんね」
「今は本番前だからか、一か所に集まってるにゃ」
感覚器官の鋭いリーヌスは人の気配にも敏感だ。
「なら、ショーが始まるまでは反対側にいましょう」
「了解にゃ」
忍び足で進むテオの後ろにリーヌスが続く。情報の収集を生業にしているリーヌスはもちろん、テオも隠密行動は苦手ではなかった。
リーヌスの目はテオのドレスに注がれていた。彼女はスカートの中に物騒なものを隠し持っている。その小さいが威力は抜群という金属の塊は、扱いが難しいものだと聞いていた。
「それ、使えるのにゃ?」
「ああ、これですか」
テオはドレスの上から自身の太ももを触った。ゴリ、と固い感触がする。
「気休めですよ。使う機会がないことを願います」
そう言った矢先、テオは空気中を漂っていた透明な何かにぶつかった。
「わっ!?」
「んぎゃ!?」
それは短い悲鳴をあげて地面に落ちる。思ったよりも小さい、白い布の塊のようなそれ。
「ロッタちゃん!?」
「ぎゃっ、ばれちゃった!」
地面に落ちた白いワンピ―スの少女は飛び上がった。おたおたと指を振るが、動揺しているためだろう、思うように魔法が使えないようだった。
「こいつ、魔法で姿を隠してついてきてやがったにゃ~! ババアとオカマは何してるにゃ!」
うにゃ~!と頭を抱えるリーヌスの頭をはたきながら、「ロッタちゃん、そんなことできるんですか」とテオは感心する。
「妖精は魔法が得意なんだ。これくらい朝飯前だぞ」
えっへん、と小さな胸を張る。
ロッタが使用しているのは、水魔法と光魔法を組み合わせたもので、光の屈折を利用して周囲の景色に溶け込む魔法だった。容易く使っているように見えるが、十分に高度な魔法。少なくともロッタのような年恰好の少女が使うものでない。
「どうするのにゃ、テオ」
「ここに置いて行くわけにも、今更連れ帰ることもできませんし、連れて行きましょう」
「まじかにゃ……」
「やった!」
ぱっとロッタの顔が喜色に染まる。その顔はテオに鋭い目で見られたことでギクリと固まった。
「その代わり、絶対に魔法で姿を隠していてください。危ないことは絶対にしないで。万が一戦闘になっても参加せずに、できるだけ離れたところにいてください」
「わ、わかった……」
「わかればいいんです」
ふわ、とテオの手が栗色の髪を撫でた。
「一緒にヴォルくんを迎えに行きましょうね」
「……うん!」
お転婆な妖精を加えて、3人はテントの中に忍び込んだ。
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