第51話 鎮火!犯人!?
◇◇◇◇◇(ミズハ近衛隊長視点)◇◇◇◇◇
特大規模の水魔法の壁を使った怒涛の急速消火をリュノに頼んだが、難易度が高すぎるので、正直どこかで暴発すると思っていた。
その場合には暴発で押し出された炎が私の方に向かって来るはずだし、来ない場合には私の方に誘導して、私が何とか耐えることで、炎の規模を縮小しようと思っていた。
もちろん犠牲になるつもりはなく、水の魔法を駆使して耐えられると踏んでのことだったが…
リュノが暴発せずにやり切るとはな…
私とリュノの水の壁が合体して炎が封殺され、多少漏れ出た炎も控えてた者たちによって鎮火が完了し、周りから『うおぉぉぉー!』と歓声が上がった。
進んでも進んでも燃え盛る炎に、私でも心が折れそうなほど厳しかったのに…
何なら私はくじけそうになるところを、リュノより先に音を上げる訳にはいかないとの意地で乗り切れた感じもある。
予想を上回ってやり遂げ、水の壁が消えた先には、汗と熱と水でよれよれの姿で地面にへたっと座り込みながら、ガッツポーズをしているリュノの姿があった。
リュノに近づき
「良くやったなリュノ!成長したな!」
と声をかけ手を差し出すと、
「うん!姉さんの足を引っ張らずに、役に立てて良かった!」
と安堵と満足感でいっぱいの笑顔になって、手を取って立ち上がり、
「…それに、信じて待ってるカズマにも良い報告ができる!」
と頬を上気させ、ニヘヘッと嬉しそうに笑っていた。
おぉ!?これはもしや……そういうことか!?
もちろんリュノがカズマ様のことを好意的に思っていることには気付いていた。
カズマ様は私にとって、異世界に迷い込んだリュノを救けてくれ、魔力の譲渡で危機的状況の里に希望を与えてくれた大恩人である。
今回の騒動でマリョの実と木が焼失するという状況でも冷静に対処できているのは、カズマ様の存在によるところも大きい。
なので、リュノがカズマ様と結ばれるなら、種族だけでなく世界も違うので障害は尋常じゃなく大きいと思うが大賛成だし、全力で後押ししようと思っていた。
…しかし、リュノは今まで、その手の話が進展しそうになると色々とやらかし、爆破するように
なので一歩を踏み出せなくなっており、進展は一筋縄ではいかないと思っていたし、その過程でポンコツぶりを発揮して、カズマ様に対し暴発とかの
そんな“周りで見る分には可愛くて面白いけど、傍にいると時限爆弾のようなリュノ”を……どの程度か分からないが、表情がふやけるぐらいには受け入れてくれ、さらに心の支えとなり成長を促してくれたとなると…
…これはもう、カズマ様には感謝してもしきれない!
落ち着いたら、どうやって恩に報いるか真剣に考えないと!!
思わず状況も忘れ、意識飛ばしてしまっていた。
っと、いかんいかん、まずは報告と現状の把握をしないとな。
私は何とか座らずに耐えているヘロヘロの体に力を入れ、お屋敷への伝令を送ったあと、調査班を割り振り
『それでは被害の状況と火災の原因を調べるため、調査を開始してくれ!』
と部下を送り出した。
そして、報告が上がってくるのを待っていると、送り出した部下が
『うわあぁぁ!』
と悲鳴を上げ、ドンッという音と共に鎮火したはずの場所から一瞬炎が立ち昇った!
『何があった!?』
念話で問いかけると
『結界の範囲内に小型の溶岩竜がいます!!ぐっ!』
『湿っているため火が付く前に消せてはいますが、このままではっ!』
と切羽詰まった声が聞こえた。
そんな物が居るとは……まさかとは思っていたが、マリョの木と里を覆う結界が壊れているのか!?
とにかく今は理由を探るよりもソイツを排除するのが先だ。
『今からそちらに向かう!それまで耐えてくれ!』
しかし…万全な状態なら問題ないが…疲弊して魔力が乏しい今の状況でいけるか?
私は、予想される戦闘の厳しさに、ギリッと奥歯をかみ締めながら前方を睨んでいた。
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