第46話 赤
そして
『えっ…?あれは炎?燃え広がってる?』
全く想像していなかった光景に、呆然としていると、リュノが
『あの辺って、魔力の実がなるマリャの木の群生地がある所じゃないの!?』
と焦った顔で飛び出して行きそうになった。
するとそこに、
『リュノ!』
と声がかかり、振り返るとミズハ近衛隊長がこちらに気付き、10人ほどの隊員を引き連れて向かってくるところだった。
『ミズハ姉さん!何があったの!?』
『詳細は分からないが、つい先程ドンッと音が鳴ったと思ったら、火の手が上がったんだ!今から消火に向かうところだ!』
『わ、私も行く!』
『あぁ…そうだな、リュノの水の魔法は里でも1番だからな。来てくれると助かる!…カズマ様、アカリさん、申し訳ないが里長のお屋敷でフラウ姫達と待っていてくれないだろうか!』
心配だけど、手伝える事が無いならせめて邪魔にならないようにしないとな。
『分かりました!お気を付けて!魔力補充とか手伝えることがあれば言って下さい!』
あとリュノ、水の魔法は里で1番なのか。凄いな…だけど、火事に向かうのも心配だし、パニクって暴発するのも心配だ…
『リュノ!実力を発揮できれば凄いんだから、焦らずに落ち着いてな!ミズハ隊長の指示を良く聞いて、絶対無事に帰って来いよ!』
リュノの目を見つめて手を取り、
『うん!!待っててね!…じゃ、姉さん行こう!』
そう言ってちょっと頬を上気させたリュノとミズハ隊長は、隊員と共に飛んで行き、俺と朱里ちゃんとモナカは御屋敷に向かったのだった。
◇◇◇◇◇(リュノ視点)◇◇◇◇◇
リュノとミズハ隊長達が燃え盛る炎の近くまで来ると、里の者たちの中で水の魔法が得意の者が、水の魔法で延焼をくい止めている所だった。
『ぐっ、こんなにも燃えてっ!』
慌てて消火に加わろうとしたが、首根っこをミズハ姉さんに掴まれて、止められた。
『ぐぇっ!』
『リュノ、待て。今燃え広がるのは防げているから、慌てて突っ込むな』
ミズハ姉さんは(急に息が詰まって涙目の)私に向けてそう言ったあと、
『皆、良くぞくい止めてくれた!これから私と近衛隊員とリュノも加わる!魔力が厳しい者は一旦下がり補給してくれ!』
と声を上げ、状況が厳しいところに的確に部下を送り出し、指示を出しながら様子を見ていた。
そして、
『…範囲が広いから、このまま続けるやり方だと鎮火にはまだまだ時間がかかりそうだな。そして、ずるずると時間がかかるほど魔力の消費が増えそうだ…マリャの木と実がかなり焼失した中でそれは不味いな…』
と呟き、
『リュノ、2人で水の壁で挟み込んで一気に鎮火するぞ!今手の空いている者は、収まり切らずに漏れ出た分をサポートしてくれ!!今抑えている者はそのまま続けて、持ち場の火が消えたら待機し、失敗した時に再度抑制するために備えてくれ!!』
と周りの者達に聞こえるように声を張り上げていた。
『『『了解!』』』
皆と共に返事をすると、
『それでは、イメージを共有するぞ』
とミズハ姉さんが念話の魔法の効果を広げ、ここにいるメンバーに対策方法を共有してきた。
そして、
『リュノ、均一な厚みでタイミングを合わせるのが重要だぞ!どこかが薄かったり、タイミングがずれると、弱い所から勢いよく炎が噴き出すかもしれないからな!…かなり難しいし、フォローは多めに付けるが、できるか!?』
と問いかけてきた。
…うっ、前までの私ならパニクって暴発しそうだけど、大丈夫。
カズマが焦らず落ち着いてやったら、何でもできると言ってくれたから!(言ってない)
『うん、大丈夫!任せて!』
私は頷いて返事をすると、ミズハ姉さんの指示通りに、立ち上る炎を挟んで姉さんと反対側の方向に回り込むように向かい、配置についた。
『リュノ準備は良いか?…よし、3カウント後にいくぞ!…3,2,1,GO!』
ミズハ姉さんの掛け声に合わせ、高さ10m,長さ200mぐらいの水の壁を作り上げ、火を押し包むようにゆっくりとミズハ姉さんの方に向かって進んだ。
…うああぁぁぁっ!熱いし、莫大な魔力の維持と繊細な操作が同時に求められるし、魔力も意識も
…でも!里の仲間や、信じて送り出してくれたカズマに応えるためにも頑張らないと!…ぐぬぬぬっ!
燃え上がる炎を歯を食いしばって抑え込みながら、私は一歩一歩進んでいった。
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