第40話 次回訪問の準備

 フラウ姫とミズハ隊長が帰って行き、後片付けをして何となくフワフワしていた雰囲気も落ち着いたので、丸太小屋で大樹さんと朱里ちゃんと今後の予定を打合せた。


『ひとまず来週持って行くのは、前回と同じマト、じゃがいも、枝豆、ウィンナーに、玉ねぎをプラスで良いかな?さつまいもも無くはないけど、今(6月)はあまり量がないからね』

『はい大樹さん、ありがとうございます。それでお願いします』

大樹さんはいつも抜かり無く準備してくれてさすがである。


『後は丸太小屋の玄関扉を直しておこうか?』

『それなんですけど、先程切った丸太をリュノが魔法で乾燥できるって事なんで、DIYで扉や家具を作ろうと思うのですが、使って良いですか?』

『それは良いけど、加工はどうするの?』

『この前大学の実習で知り合った製材所にお願いしようと思ったのですが、自然に持ち込むのが難しいんですよね…運ぶのはマジックポーチでできるのですが…』

『何ていう製材所?…あぁ、その製材所ならうちも使っているな。そこならキャンプ場まで取りに来てくれるよ。頼んどこうか?』

『ホントですか!?助かります!』

『ただ何かのついでになるだろうし、取りに来るまでちょっと時間かかるかもね。あと、加工費考えると普通に買った方が安いかもよ?』

『うーん、そうですか…』


結構大変そうだなと思っていると、リュノが腕をツンツンと突いてきた。

『それなら私が木を魔法でカットしようか?』

『え?でもカットするような魔法は素通りするのでは?…あ、コーティングすれば良いのか!』

『そうそう』

リュノがにっこり頷いて、私に任せてと胸を張っていた。

その自信満々で微笑ましい姿を見ると…

『『…若干不安が』』

『なんでよ!! しかも朱里ちゃんもハモるってどういうこと!?』


ぎゃいぎゃい騒ぐリュノをあしらい、

『とりあえず、加工は何とかなりそうです』

と大樹さん伝えると『うん、分かったよ』と苦笑いしていた。


他に課題としては…素材の組み合わせがあったな。

大樹さんにも相談してみよう。

『~と言う訳で、朱里ちゃんが何時でもあちらの剣を使えるように、剣の柄に巻くものを、あちらの素材とこちらの素材を組み合わせた物にしようと思うのですが、何を組み合わせるのが良いですかね?』

『あちらの素材は…それは革かな?』

『そうですね』

『日本刀の柄糸のように巻くだけじゃ駄目だろうから、こちらも革を用意して縫い付けるか…何にせよ使うのは朱里だから、朱里がしっくりくる素材と方法を探すしかないかな…』

大樹さんがつぶやくと

『そうね!じゃあ早速探しに行きましょう!』

と朱里ちゃんがしめた!と脱兎のごとく駆け出そうとして、

『待ちなさい、朱里』

と大樹さんに首根っこを捕まえられていた。


『とりあえず見に行くのは良いが、今日は時間もあまりないし、焦って決めるんじゃないぞ。それと晩飯には帰ってくること』

『う~、分かったよ』

『ゴメンね、和真君。またうちのじゃじゃ馬が世話になるけど』

『いえいえ、こちらこそ世話になりっぱなしですし、朱里ちゃんが居てくれて助かってますので。それじゃあ山を下りますか。あっその前にリュノが加工できるように1本だけでも丸太をコーティングしとこうかな』



そうして、諸々の準備や片付けを済ませて、キャンプ場で大樹さんと別れ、山を下りた。

なお、朱里ちゃんの移動手段はクロスバイク(自転車)である。

余裕でスクーターに付いて来るのはさすがというか…こらっあおるんじゃない!


ひとまず朱里ちゃんとデパートやホームセンター、手芸店、100均など様々な場所で、色々な素材を見て回った。

手芸店なんて初めて入ったよって言ったら、朱里ちゃんも「私も」って言っていた…さもありなん。

朱里ちゃんを見て深く頷いたら殴られた…えぇ、理不尽過ぎん!?



今日のところはお試しで、朱里ちゃんが気に入ったハギレの革を買ってきた。

あと、アパートの床の敷物用にホームセンターの安いカーペットも買ってきた。

これらの材料と針と糸にコーティングして、素材同士を縫い合わせてみることにしたんだけど…縫い合わせるのは“恐ろしいことに”リュノにやって貰うことになった。


…いやまぁ、朱里ちゃんは魔力譲渡しないとあちらの素材に触れないから、俺かリュノの2択だったんだけどね。

ひとまずおおざっぱで良い床の敷物をやってみようという話になり、最初は俺が試しにしてみたんだけど…あちらの虎の毛皮みたいなやつにこちらの針が通らなかった。

四苦八苦していると、リュノが『私の出番ね』と、虎の毛皮に魔法で小さな穴を開けて、ようやく出来るようになったので、“仕方なく”リュノに任せることになった。

…なぜこんなに“恐ろしい”とか“仕方ない”とか付けるかって言うと、スムーズに出来るようになった訳で無く…その穴を開けようとした最初の魔法が威力があり過ぎて、革の端っこを消し飛ばし、大惨事を起こしたように見えたからなんだけどね。。。

…下から見上げる形で撃った魔法がアパートの天井を貫通したときには、朱里ちゃんと2人で

「「うひゃあぁあーーーー!!」」

って叫んだけど、ホントにこちらの世界に影響を与えられなくて良かったよ。

リュノは

『い、威力が大き過ぎたけど、も、もちろん周りに影響ないのは想定通りだよ!』

と視線をそらせて言ってたけど、朱里ちゃんと2人で

『『蒼の暴発魔…』』

って呟いたら滝汗流して固まってたし…

その後、

『ふ、普段は力加減間違えないのよ!この世界だと威力が半減するから、これ位必要かなって力入れ過ぎただけで!!ホントよ、信じて!!』

と言ってきたけど、暴発魔の片鱗を見た気がする…。


実力は間違いないし、気をつければ同じミスをするタイプではないので大丈夫だと思うけど、予想のはるか斜め上を軽くすぽーんと超えてきそうなのがね…まぁ被害に遭うのは俺だけで済みそうではあるが…


とりあえず下にカーペットを付けた虎の毛皮みたいな敷物は、部屋に敷くことが出来たが…赤と銀色の縞模様しまもようで見た目の違和感が凄いことに…

普通の人には見えないのが救いだけどね。


それを見届けた朱里ちゃんが苦笑しながら帰って行った。っぐぬぅ

しかも『今日から同棲生活ね』ってニヤニヤしながら言い残すおまけまで付けて…

リュノと2人で思わず赤面してしまった。ぐぬぬっ意識させるなよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る