第38話 アパートの朝
ベッドの隣にキャンプ用のマットを敷いて寝ていたのだが…
「ぐぇほぅっ!」
何か腹部に衝撃を受け、安眠が妨げられた!
豆球の明りのみの薄暗い中、何事!?と思い寝ぼけた目で腹部を見ると、半分くらいの大きさのリュノが腹の上にうつ伏せ状態で乗っており、目をこすりながら頭をふりふりした後、薄目を開けて頭をもたげようとしていた。
…
そして、頭を上げたリュノと目が合った。
……
………
『リュノさんや…』
『、んひゃぁぁっ!』
おそらくベッドからダイブしてきたであろうリュノに半眼になりながら声をかけると、状況を把握したリュノは押し殺した声で悲鳴を上げるという器用な真似をした後、ワタワタと頭を下げて謝りながら、ベッドに戻っていった。
時間を確認したら朝の4時である……ったく、しょうがねぇな、しかしベッドから少し離れてるのにリュノは一体どんな寝相してんだ?。それにしても服を貫通するから感触がダイレクトだし、こそばゆかったなー。まぁいいや、寝直そう…
と寝ぼけた頭で、思いつくことをほぼ放棄しながら目を閉じると、
「ごふぁっ!」
また落ちてきた。
『くおらっ!』
『ひゃぃっ!私も悪いと思うんだけど、でも、さっきは姫様が大きくなってて、今度は姉さんが大きくなって!』
涙目のリュノが弁明するので、どういうこと?と思いながら半身を起こしてベッドを見ると
…リュノの言う通り、フラナ姫とミズハ隊長が元の大きさに戻っていた。
これは確かにリュノの寝るスペースはないな…さっきどんな寝相してんだよって思ったけど、弾き飛ばされてたのか…
『…確か皆で半分くらいの大きさになってたよな?』
『そのはずなんだけど……あっ、こっちだと魔法の効果時間が半分くらいになること伝えてなかったから、小さい期間の設定がまずかったのかも』
『あーなるほど…で、どうするか』
リュノはベッドで寝れないだろうし…ソロキャンプ用のマットは狭いしな…
とりあえず半分の大きさのリュノには、マットの横にクッションを2つ並べて、その上に寝てもらうか。マットを敷けるように脇にどけてた座卓を縦に立て掛けて、あっちに転がらないための境にすれば、転がり落ちて行くこともないだろうし。毛布は共同で良いかな。
ということで毛布と、こっちに転がってきた時用にマットにもコーティングしといて、セッティングしてと…
『リュノ、これで良いか?』
『うん、ありがとう』
『じゃあ、おやすみー』
『おやすみー』
その後は特に問題もなく朝を迎えた。
案の定こちらに転がり落ちていたリュノが、腕を抱きかかえるようにもたれ掛かっていたため、少し幸せな感じである。
と腕に目をやっていると、先に起きていたフラナ姫とミズハ隊長が、リュノの位置が変わっていることの原因を察していたらしく、直ぐに謝ってきた。
っていうか、今の見られてたー!
『ふっ不可抗力ですし、大丈夫ですよ』
そう言って、何気ない風を装って腕を引いて起き上がろうとすると、リュノが目を覚ました。
そして状況と、ニマニマ笑うフラナ姫とミズハ隊長を見て、リュノは顔を真っ赤にし、俺とリュノは冷やかされたのだった…まぁ原因があれだから軽くで済んだけどね…
さて、全員起きたので朝ご飯にした。
昨日のうちに炊飯器のタイマーはセットしといたので、ご飯は炊けてるし、後は鮭を焼いて、さつまいもと豆腐の味噌汁にした。
ザ・日本食である。
お米もいけるようで、焼鮭と味噌汁の味も大好評だったし、大豆といもで魔力にも良いということで大絶賛だった。
日本食が受け入れられるとやっぱり嬉しいね。
フラナ姫は俺と同じでさつまいもが結構好きみたいで、ホクホク顔だった。
この前用意したのはじゃがいもだったし、今は旬じゃないけど、今回ついでにさつまいもを少し持って帰ってもらおうかな。
朝ご飯を食べ終わり、フラナ姫達が帰る準備をしていると、携帯が鳴った。
あ、朱里ちゃんからだ
「はい、もしも…」
「和真君、おはよう!扉まだ開いてないみたいだし、フラナ姫達まだ居るんだよね!?」
おぉ声がでかい、朝から勢いが凄いな…
「あぁ、今帰る準備しているとこだけど…」
「えぇ!もう!?私が絞られてる間に、和真君だけ楽しんでずるい!」
「…そんなこと言われても」
「くぅ~!あ、じゃあさ、丸太小屋の所で和真君のコーティングした種を植えてみようよ。この前育ててみるって話があったから種とか準備してるんだ。それで、お昼にカレーでも作って食べようよ!ねっ!?」
「おぉ~!俺は良いと思うけど、フラナ姫達に予定きいてみるよ…あれ、でも畑は耕してないから厳しくない?」
「うっ!」
「あっ、ちょっと待ってて」
フラナ姫達に予定を聞くと、お昼過ぎでも問題ないってことだった。というか、帰る前に朱里ちゃんに会えるなら是非ってことだった。
あとは…
『リュノ、魔法で丸太小屋の周りの土って耕せる?』
『うん、土は触れるから魔法で動かせると思う…はっ!?もしかして、土を動かしてたらもっと早くこちらの人に認識されてた!?』
リュノが今気づいてガーンってショックを受けてる。笑
『まぁ土の動きは気付かれたかもしれないけど、理由が分からないから怪奇現象扱いかなー?…それで映像が拡散されて、俺じゃない人がリュノに気付いたかもしれないけど…対応や扱いがどうなったかは分からないなー。下手したら捕まって実験とかされてたかも?』
『ゔっ!それはヤバい…そうよ、私のやり方でカズマに出会えたんだから、私は正しかったのよ!うんうん』
リュノが自分に言い聞かせるように立ち直った。ただ俺は叩き落としたし、あのやり方が正しかったのかは微妙だと思うけど(笑)
『とりあえず土いじりはできると思うよ。あれくらいの広さなら余裕余裕~一気にできるんじゃないかな』
おぉ…重機要らないじゃん
「あ、朱里ちゃん、予定オッケーだよ。フラナ姫が朱里ちゃんに是非お願いしますって。あと、耕すのはリュノが魔法でできるかもって。もう少ししてから行くので、用意お願いして良い?」
「やった!!オッケー!リュノさん、もしできたらすごいね!種はね、トマトと枝豆(大豆)とトウモロコシを用意してて、後はさつまいもの種芋があるかな」
「おっ良いね!フラナ姫がさつまいも好きだから丁度良かったよー。お土産に少し持って帰ってもらおうと思ってたところだし」
「あ、じゃあ食べれるさつまいもも用意しておくよ。あとカレーの材料も」
「助かる。じゃあまた後で。大樹さんにもよろしく」
「うん、じゃあまた後でー」
うし、今日も充実した1日になりそうだ。
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