第53話 屋敷にて
お屋敷に到着した後、不安な気持ちを抑えつつ、フラナ姫達と燃え盛る森の方を見ていると、巨大な水の壁が炎を挟むように両側にそそり立つのが見えた。
何だあれは、魔法か!?凄い!!
『『おぉぉ!』』
『あの圧倒的な水量と安定感はミズハ隊長か!』
『さすがだな!』
周りから歓声と感嘆の声が沸き起こった。こちらの基準でも凄いみたいだ
危機感と焦りから重苦しかった空気が、少し光が差したようになった
引き続き注目していると、水の壁が炎を押しつぶすように動き始めた
『む、左右で微妙に速度や動きが違うな』
『さすがにミズハ隊長でも2つは無理だろう』
『それはそうか…しかしそうすると、もう一つの壁は誰がやっているんだ?』
『あの規模を扱える者が向かった中に他に居たかな?』
ん?話してた者たちが周りを見渡し、こちらに目を留めたあと固まったが…
『リュノか!?』
『あの暴発魔か!?』
『確かに規模はいけるだろうが、無謀すぎるだろ!』
と騒ぎだした。
『おおぅ…あれをやってるのリュノなのか?マジか…』
驚きと共に呟いて呆然としていると、次第に周りの不安がる声が大きくなってきて、俺も不安や焦りが出てきたが…いや、どんな状況か分からんけど、せめて俺だけでもリュノを信じて待ってないとな。
そう思い直して自然と祈るように手を組んで、応援する気持ちを込めながら水の壁を見ていると、フラナ姫が寄ってきて、
『リュノを案じてくれているようで、ありがとうございます。…でもリュノなら大丈夫ですよ。ミズハも居ますし、上手くやるでしょう。私は信じています』
と俺を安心させるように微笑んでくれた。
さらに朱里ちゃんも、
『リュノさんはやる時やるでしょ!』
とこちらの肩をポンっと叩いてきた。
朱里ちゃんに頷き返し、
『姫様、ありがとうございます。私もリュノを信じています』
と俺が落ち着いた態度と声で微笑みながら返すと、俺の表情を見たフラナ姫が
『あらっ!…思ってる以上に信頼関係が…』
と言って目を少し見開いた後、フフフッと笑い、
朱里ちゃんは「ふーん」と呟いた後、ニマニマと笑っていた…ぐっ、後でじっくり追及するからねって大きな目が言ってやがる…
その後フラナ姫は
『私たちもあそこで対応している里の仲間を信じて待ちましょう!』
と周りに声をかけて、落ち着きを取り戻させ、対応策に取り掛からせていった。
…こういうところ、さすがだよな。
そうして皆が応援するように意識を向け、ジリジリと長く感じた時間が経ったあと、遂に水の壁が合わさって炎が消えると、お屋敷に割れんばかりの歓声が上がった!
しばらくすると伝令が来て、ミズハ隊長とリュノの活躍により火が消し止められたことが報告された。
改めて歓声が上がったのだが…またドンッという激しい音と炎が上がって騒然とし、さらに凄まじい水の魔法が発動して、最終的にミズハ隊長とリュノにより溶岩竜が仕留められたと報告が上がってきた時には、あまりの目まぐるしさにお祭り騒ぎのようになっていた。
ミズハ隊長とリュノが近衛隊のメンバーと共に里に戻ってくると、大歓声で迎えられた。
それに手を挙げて応えていたミズハ隊長とリュノと隊員が、そのままお屋敷の前に到着し、里長が消火と討伐の偉業をたたえ感謝を述べると、集まっていた里の人達から今までで最大の歓声が上がったのだった。
その後、ミズハ隊長をはじめとした近衛隊とリュノは、里長やフラナ姫達とお屋敷に入ってきた。
リュノが俺の姿を見て、満面の笑顔でビューンと飛んできたので、抱き止めてハイタッチをした
『凄かったなリュノ!』
『えへへへ~』
そして、朱里ちゃんとリュノをわいのわいのと褒めたたえていると、フラナ姫やミズハ隊長もその光景を見て、微笑ましそうに微笑んでいた。
そうして少しの間ゆるんだ和やかな空気だったのだが…ミズハ隊長が真面目な顔になり、里長や姫様に何かを手にもって説明を始めると、深刻な雰囲気となっていた。
『何かあったのか?』
『うん、結界の魔道具が壊されていてね…』
雰囲気の変化に気づきリュノに聞いていると
『すみません、カズマ様、私に魔力譲渡をお願いできないでしょうか?』
とフラナ姫が申し訳なさそうにお願いしてきた。
フラナ姫が説明してくれた話をまとめると、
今までフーリル族の里とマリョの木の森は、フーリル族が結界で覆って守っていたのだが、それを構成している魔道具の一つが壊れてしまっていたようで、その結果溶岩竜が入り込み、今回の事件が起こってしまったらしい。
そこで壊れた結界を直すために、壊れた魔道具を交換して魔力を込め直す必要があり、それはフラナ姫の得意分野なのだが、とにかく大量の魔力が必要になるので手伝って欲しいとのことだった。
ただ…その壊れた魔道具を調べると不備ではなく力で壊されていたらしく、また、魔道具自体は結界の中にあり、このようなことが起こらないように厳重に隠されて、定期的なチェックと周辺の巡回が行われていた物なので、里の内部に犯人がいる可能性が限りなく高くなったようだ。
…不穏な感じだ。…とりあえず俺ができることはしてあげよう
『魔力譲渡はもちろん良いですよ。お役に立てるなら良かったです』
『カズマ様、本当にありがとうございます。本当にお世話になってばっかりで…このご恩は必ず報いますので』
『既に沢山頂いているのでその気持ちだけで十分ですよ…それより直ぐに向かいますか?』
『そうですね。できれば早く対応したいので、可能でしたら是非お願いします』
そうやって話を進めていると、ダダダダンッと里の周囲の巡回に出ていた攻撃隊の隊員が、慌てた様子でお屋敷に駆け込んできて
『大変です!
と危急を告げたのだった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます