第51話  接敵!猪族!

威圧感のある大きな人影が立ちふさがり足を止めると、

左右の側面と斜め後方の木の陰から、新たに4人が囲むように現れた。


全員特徴的な潰れた大きな鼻と牙を持っているが…

フラウ姫やミズハ隊長が、凶悪な顔でニヤついている正面の大きな人影を睨んでいるし、これがおそらく…


『猪族の族長!やはり貴方達ですか!…しかし、どうやって!?』

フラウ姫が叫び、予想通り猪族だと分かったが、族長か!


『クククッ焦った顔も可愛いではないか。どうだフラウ姫、普段バカにしている猪族にしてやられる気分は!?想定もしていなかっただろう?ここの事はもちろん協力者が居るからだがな。おら、望みのフラウ姫だぞ。出て来いよ』

そう言った族長の後ろから、2人出てきた。

1人は黒に近い肌色で角をもつ男で、もう一人は…フーリル族か!


『貴方は…!』

『おい!お前は確か、姫様になりふり構わず思いを告げて玉砕したヤツだろう!?何を考えている!?』

近衛隊の一人が現れたフーリル族に声を荒げて問うと、顔色が悪く震えている感じだった相手が

『ぼ、僕が姫様を確保するのに協力して成功すれば、姫様は族長と僕のものになり、猪族は姫を通して里の魔法戦力を手に入れられる…里には戦力になってもらうため、マリョの実を渡して手をださないことも約束してるから、マリョの実が減って困っていた里も救われるんだ!み、皆幸せになる!!』

と徐々に声を大きくしながら言ったが…目が異様にギラギラしているな…


『対等な関係ではないだろうし、姫様がそれで喜ぶとでも?』

ミズハ隊長が冷めた声で言うと

『ぼ、僕が幸せにする!…姫の笑顔はあんな部外者ではなく僕が作り出す!』

そう言って睨まれたが…もしかして俺がきっかけの一端になってるのか?


 驚いていると、リュノが視線を遮るように一歩前に出て、射殺すように睨み返し、フラウ姫も怒りを帯びた表情に冷めた声で『残念です』と応えたため、相手は気圧され震えが大きくなった。


『既にマリョの木が燃え、甚大な被害が出てるのが分からんか?』

『だ、誰も死んでないだろう?』

『この状況で穏便に話が進むとでも?』

『と、当然だ!ですよね族長!?』


あちらのフーリル族が隣の族長を仰ぎ見ると、族長はニヤリと笑い、

『あぁ、だからな。今までご苦労だった』

と言うやいなや、拳を握りしめた俺たちの胴回りより太そうな剛腕を振りぬき、あちらのフーリル族を吹き飛ばした!

フーリル族は弾丸の様に20mぐらい飛んで、ドガンッ!と太い木の幹をへこまして止まると、ピクリとも動かなくなった。


『あらら、傀儡くぐつにするのに手間かかったのに…残念』

隣に居た黒肌で角をもつ男が、軽い調子で言うと

『クックックッ、対して気にもしてないだろうに…まぁ役に立ったし、後でたっぷり報酬払うさ。…さてフラウ姫、こちらに来て貰えるかな?でないと、仲間がどうなるだろうなぁ?』

と猪族の族長が凶悪な顔で笑い、凄んできた。


『…』

『ふざけたことを。行かせる訳がないだろう!フーリル族をなめるなよ!』

ミズハ隊長が吠え、フラウ姫を守るべく前に出て剣を構えると、同時にリュノと近衛隊の人達も囲む相手に対し臨戦態勢を取った!



それに対し猪族の族長が

『ふっお前らのことは良く知ってるさ』

と言って手を挙げると


『『『『魔力ドレイン!フーリル族!』』』』

と言う声が響き、


周りのフーリル族から『うっ』という呻き声が上がり、フラウ姫をはじめフーリル族全員が、焦りと苦しさの混じった表情を浮かべたのだった!

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