　魔力譲渡を受けると同時に魔力を練りだしていたリュノは、いびつで凶悪な姿に変わり行く族長を見ると、魔力を練りながら水球を作り、

『姫様、この水球に聖なる属性を付与して下さい！』

と気迫のこもった声でフラウ姫に頼んでいた。

　こちらに向かっていた朱里ちゃんは、猪族の族長が雄叫びをあげ俺達に踏み出そうとした瞬間に、全力でダッシュして先に到着すると、俺の前に立って迎撃態勢に入った

原型を留めないほど膨れ上がり変わり果てた族長は、明らかにさっきまでよりヤバそうだけど大丈夫か！？

『モナカっ！朱里ちゃんをサポートして！』

俺がモナカに伝えると、モナカは朱里ちゃんを包むように体を変化させた。

すると土煙を上げながら突撃してきた族長は、そこを狙って凄まじい速度と力感で大剣を水平に薙ぎ払い、朱里ちゃんを覆うように展開していたモナカを両断した！

『モナカっ！』

モナカの上半分と共に朱里ちゃんの太刀が地面に落ち

『イヤァッーーー！！』

その情景を見たフラウ姫が悲鳴をあげる中、

『「くっ！」』

俺は振りきって前傾姿勢になった族長の顔に向けて予備のファルシオンを投げつけた！

しかし近距離から必死に投げた剣は、族長が顔を横にずらして簡単に避けられた。

剣はそのまま族長を通り過ぎ……直ぐに止まると、族長を背後から袈裟懸けに切り裂いた！

剣はさらに止まることなく振り上がり背中を逆袈裟に切り裂くと、族長の胴をズバッ！と薙ぎながらこちらに戻ってきた。

族長が連続攻撃にのけぞり、動きを止めている間に、危機的状況にも中断する事なく魔力を練り続けていたリュノが、いける！と伝えてきた後、

『セイクリッド・ウォーター・レイ！！』

と光り輝く水球を前に押し出すようにして呪文を唱えた！

すると水球からリュノの身長ほどもある極太のレーザーが射出され族長にぶつかり、

『がぁぁぁあぁ！』と叫んだ族長が抑え込もうと抵抗したが、

『今だ！』

と叫んだミズハ隊長と近衛隊が族長の背後から追撃の魔法を打ち込むと、

力の均衡が崩れ、レーザーは族長の体を突き破り貫通していった！

光り輝くレーザーが消え去った後には、体に大穴を開けた族長が立ち尽くしていた。

族長は大穴の空いた自分の体を見て

『あっ…？』

と信じられないというような声をもらした後、そのまま崩れ落ちていったのだった。

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