第43話 枝豆?

 丸太小屋の畑に着いた俺たちが見たのは、リュノに襟首?くびれ?を捕まえられた30cmくらいの巨大な枝豆が、リュノの手の中でぐにぐに動いている姿だった。


『父さん、和真君、私の目がおかしくなったのかな?巨大な枝豆が動いてるように見えるんだけど!?』

『朱里、大丈夫だ、俺にも同じ物が見えてる…』

『リュノ、あちらには枝豆に似たモンスターが居たのか!?』


俺たちが激しく動揺していると

『うん、驚くのは分かるけど、ちょっと落ち着いてね。実はちょっと違うんだよー』

とリュノが動く枝豆?を捕まえたまま近づいてきた。


『これは、あちらの世界の生き物なんだけど、取り込んで吸収した物を再現できるヤツなんだよね。だから、どこかで枝豆の皮を取り込んだんだと思う』

『えっ、吸収するようなヤツを掴んでて大丈夫なのか?』

『うん、こいつは生きて動いてるものは取り込めないからねー。ただ、普通は粘り気のある液体状になってるし擬態もするからなかなか見つからないヤツで、こんな風に捕まえられることはまずないんだけど…よっぽどこの姿が気に入ったのかな?』


そう言ってリュノが持ち上げて興味深そうにしげしげと眺め始めたので、

『俗にいうスライムみたいなものかな?』

『捕まらないっていうなら、はぐれメ〇ル的な感じか?』

と良く見ようと朱里ちゃんと身を乗り出すと、リュノが捕まえていた所から下が半透明の液体のようになって、ぐにょーんとこちらに伸びてきた。


『和真君、危ない!』

即座に大樹さんが後ろに引っ張ってくれたし、リュノも掴んでた手を遠ざけてくれた上、それほど鋭い動きでもなかったので、余裕を持って触れられずに避けることができた。


俺に届かなかったものは、動きを止めて伸ばした部分を漂わせていたが、

『カワニツイテタ、マリョク、スゴカッタ!オイシカッタ!モットチョウダイ!』

と念話が伝わってきた!


『えぇ!?しゃべった!?』

『うそっ!?そんな話きいたことないよ!?』

この生き物を知っているはずのリュノも目を大きく見開き驚いていた。


『タクサンノマリョクデ、イッキニセイチョウシタノ!コンナノハジメテ!』


『そうか、普通はほとんど魔力がないものしか吸収できないだろうからねぇ…進化した感じなのかな?』


『マリョククレルナラ、ナンデモスルヨ!ナカマニシテ!』


『えっ仲間!?…リュノ、こう言ってるけど、危険はある?』

『うーん、進化前しか知らないけど…元々攻撃力はないし、こっちではカズマがコーティングしたものしか吸収できないし…大丈夫じゃないかな〜』

『和真君やリュノさんが寝てる時に覆いかぶさられたらヤバくない?』

『そこは寝る前に私が魔力の檻を作れば大丈夫かな』

『ダイジナヒトガ、イヤナコトハ、シナイヨ!シンジテ!』


『まぁこの子にとってもカズマは大事だろうしね。それに私達の世界に戻れば、従魔契約もできるしね。そうすると主人に危害を加えられなくなるし、逃げられなくなるから、より安全かな』

『なるほど…じゃあまずは、ここに居る人たちに攻撃や危ないことをしないと約束できる?』

『モチロン、ゼッタイシナイヨ!』

『あと、許可しない限り攻撃や吸収をしないこと』

『ワカッタ!』

『他には…何かありますかね?』

『うーん、特には…そういえば、普段はどんな感じになるのかな?』

『ナニモナイトキハ、チイサク、マルクナッテルヨ、コレクライ』

そう言うと、リュノの手の中で5cmくらいのボール状になった。

表面は半透明の液体状から、やっぱりお気に入りなのか、枝豆の皮のような感じに戻していた。うん、リュノが枝豆ボールに微妙な顔をしているな(笑)


『とりあえず問題なさそうだけど。どうかな?』

周りに聞くと、それぞれO.K.とか、問題なさそうとかの反応だった。


『じゃあ、とりあえずよろしく!』

そう言って手を差し出すと

『ヤッタ!!』

と言ってこちらの手に乗り移り、ぽよんぽよん弾んでいた。


『ちなみに何て呼べば良いのかな?』

『ナマエハナイカラ、ナヅケテ!』


『お、まじか。何が良いかな?』

『ちなみに種族名は“ナンタム”よ』

『朱里ちゃん、候補ある?』

『ん、はぐれメタメタ枝豆饅頭えだまめまんじゅう

『長いよ…』

『じゃあ、まり○っこり』

『止めようね……じゃあ、』

(擬態する皮とスライムのような中身か…)

『“モナカ”何てどうかな?』


すると、相手は手の上で飛び跳ね

『ウン!ワタシハ、モナカ!』

と気に入ったようだった。

『じゃあ、これからよろしくな、モナカ!』


こうして、新たなちょっと変わった仲間ができたのだった。

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