第21話 異世界前日(2)
ということで色々試したところ、今の朱里ちゃんにはリュノは見ることも触ることもできず、またリュノのマジックポーチの中にあった棒などの道具も朱里ちゃんをすり抜けていた。
あと、攻撃魔法はすり抜け、念話や身体強化などの魔法も使えなかった。ただし、魔法で生み出した炎・水・土・風の刃はすり抜けたが、その場にある空気を押すように風を流したり、
「『自然にあるものは通り抜けないんだね。つまり投石が有効と…メモメモ』」
「…何かある度に石投げるのはやめてよ」
「『俺は直接触れるから良いけど、リュノ達は触れないからねー。リュノ達が荒ぶる朱里ちゃんを抑えたり、突っ込みたくなったら石を投げてくるってことだね』」
「むぅ。リュノさんをからかうの、やり過ぎ注意かな…?」
「『じゃあ次は魔力譲渡したらどうなるか確かめてみるか』」
「分かったわ」
『了解』
ということで朱里ちゃんに魔力譲渡をしてみると、祠の中でも問題なく渡すことができ、朱里ちゃんは相変わらず顔が真っ赤になったが、特に問題なさそう…
と思っていたら、
『カズマ!何やってるの!』
とリュノに思いっきりビンタされた!
「『いてー!何する!?』」
『何って、朱里ちゃんを裸にして!どういうつもり!?って…あっ!?』
「『はぁ!?…ってそうか、俺には普通に服を着たままに見えるけど…』」
「どうしたの?」
「『あぁ。リュノには朱里ちゃんだけが見えるようになったから、その、裸が見えるって』」
「へっ?あっそうか服…和真君には見えてないのよね。残念?」
「『そりゃあ…って、いやいや、直ぐに服コーティングするよ!』」
リュノに睨まれ、朱里ちゃんにニマニマ笑われ、直ぐに服のコーティングをした。
「『自分では見えてるだけにな…服に限らず気をつけないと…しかし痛い』」
頬がすごいヒリヒリする…
『それは、その、ゴメンね?』
後で確認すると俺の頬には見事な手の形がついていた…
その後朱里ちゃんに魔力譲渡した後も色々試してみると、リュノは朱里ちゃんに触れることができるようになり、リュノの道具も魔法も全て朱里ちゃんに影響を与えることができた。
なお、身体強化の魔法をかけて貰った朱里ちゃんのはしゃぎっぷりはやばかった…
大樹さん見なかったようにフェイドアウトしていくし。訓練とかに巻き込まれないように気を付けないといけないなー。
そうやって
そういえば朱里ちゃんに魔力譲渡すると、リュノに認識されてあちらの物や魔法で干渉されるけど、リュノに魔力譲渡してもこちらの世界の人に認識されないんだよな…リュノにどうしてかなって尋ねると、
『私は即座に自分の魔力に変換して吸収できるけど、朱里ちゃんは魔力が混じった感じになって吸収まで時間がかかるからかな~?…想像でしかないけどね』
ってことだった。
まぁ全て始めてのことで判断できる材料もそんなにないし、それをどう活用するかの方が大事だよな。
『ひとまず朱里ちゃん、魔力譲渡でできることは増えるし、変な影響もなさそうで良かったね』
『うん。魔力譲渡の有効時間も地球側と大きく変わらないっぽいし、計画的に動けそう』
『コーティングの方は昔やったのもまだ劣化しないし、かなり有効時間は長そうだなー』
魔力譲渡は体内で消費される感じでコーティングは消費されないからずっと有効なのかな?……はっ!これ有効時間が逆だったら、服が先に消えたりしたのか!…思わず想像してドキドキしてしまったが、俺にはどうせ見えないんだよな…
我に返って周りを見ると、俺の様子の変化にリュノが怪しむような目を向けていて、朱里ちゃんがニマニマ笑いながら近づいてきた!
「和真君、すごーく興奮したあと落胆したように見えたけど、何を考えていたのかなー?例えば魔力譲渡とコーティングの有効時間が逆だった場合を想像してみたり?」
くっ、察しが良すぎないか?まさかバレているのか?
『えっ、な、何言ってるの?そもそもリュノの里への食材のコーティングこともあるし、逆の方が良かったなんて思うわけないじゃん』
『へー、そっか。そういえばリュノさん、念話で相手の考えてるイメージって伝わるんでしたっけ?』
『うん』
『っ!!いやっ、それよりどうゆう風に動くのが良いか考えよう!』
うぇっ!変な汗が止まらん!…ぐぅ、そのジト目とニマニマ笑いはやめて…
そして祠で検証した結果から、異世界に行きたい朱里ちゃんvs.朱里ちゃんが心配な大樹さんのバトルが始まったのだけど…
結論から言うと、朱里ちゃんの圧勝だった。
久門家の“扉を開く者が現れたら助けになるように”との家訓はかなり強力なようで、リュノの世界の状況など不明なことが多くて心配な大樹さんの説得に対し、不安があるからこそ助けるために行くべきと朱里ちゃんが訴え、大樹さんは言葉に詰まってしまっていた。それなら俺が行くと大樹さんは言ったんだけど…明日キャンプ場に来るお客さんどうするの?と言われ、ぐむむっと唸っていた。
最終的に、魔力譲渡をしなければ朱里ちゃんはほぼ認識や干渉されないことから、魔力譲渡をしない状態で付いて行くならってことで、大樹さんの許可が下りた。
そして行くならしっかり準備をするぞってことで、朱里ちゃんは魔力コーティングがされてるされていないに関わらずこちらの道具に触れること、道具自体は魔力コーティングの有無で認識や干渉されるかどうかが変わることを利用して、朱里ちゃん用の道具を選別することになった。
コーティングしないで利用するものとしては、無線機(トランシーバー)を持って行くことになった。元々キャンプ場にあった山岳用のものなのでスペックも高く、朱里ちゃんも使い慣れているものだ。これで少し離れても連絡が取れるし、朱里ちゃんの声も認識されないので、索敵なんかもやりやすくなる。それに、仮に朱里ちゃんがはぐれても連絡が取りやすくなるので多少安心感も上がる。
コーティングして利用するものとしては、なんと刀を持って行くことになった。これはコーティングして俺が身に付けておくんだけど、使うのは朱里ちゃんという…使ったら刀が空中で勝手に飛び回る感じになるんだろうな…
他にも色々と道具を選び明日に備えることになった。
ちなみに扉から丸太小屋に戻った後に、大樹さんとリュノはお互いにしっかりと自己紹介と挨拶を行った。
そのために、大樹さんにも了解を取って魔力譲渡をしたのだけど、どんな感じか聞いたところ、痛いということはないとのことだった。どちらかと言えば少しほわっと温かくなる感じで心地良いらしい。リュノや朱里ちゃんとは違いリアクションは薄めだけど、個人差があるのかな?
さてそんなこんなで、遂に明日リュノの里に行くわけで、不安もあるけど…まさか異世界に行くことになるなんて!朱里ちゃんじゃないが、楽しみでしょうがない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます