第28話 フラウ姫への魔力譲渡とお礼の品

『じゃあ、やりますよ』

『うむ』


ミズハ近衛隊長に手を添えて、魔力譲渡を行うと、目を閉じて顔を紅くし『あっ、…ん!』と少し声をあげつつ、直立不動で受けきった。


『大丈夫ですか?』

と声をかけると、ミズハ隊長は荒れていた呼吸を整えて、

『素晴らしい。魔力がみなぎっている…魔力の効率としては口から体内に摂取した方が良いのかもしれないが、カズマ殿が居れば前準備が必要なく即座にできるし、他にも利点が……カズマ殿が良ければまた是非お願いしたい』

と言って微笑みかけてくれた。


…さすが、強いな

ミズハ隊長に感嘆していると、


『では、次は私にお願いします』

と家老の方が歩み寄ってきた。



『では、いきますね』


家老にも魔力譲渡を行うと、『ふむ…少し温かい』と頷いていた。

そして苦しそうに耐える事もなく、そのまま受け終わった。

…この感じは大樹さんのリアクションと似てる感じだな

そして感想を聞くと、

『これは、魔力も増えますし、何か血行が良くなって体調も良くなった気がしますぞ。ミズハ隊長が言う通り、場面によっては非常に有効ですな』

と納得していた。


『ではフラウ姫に行っても良いでしょうか?』

『ふむ。これなら姫様に行っても問題ないでしょう』



『では、お願いします』

そう言って少し緊張した面持ちのフラウ姫に行うと、

フラウ姫もミズハ隊長と同じように顔を朱に染め、『ンっ…』と声を漏らさないように堪えていた。

そして『終わりましたよ』と伝えながら魔力譲渡を止めると、身体の力が抜けたのかもたれ掛かってきた!


…おっと!フラウ姫の身体を支えて

『大丈夫ですか?』

と尋ねると、フラウ姫は寄り掛かった体勢で荒い呼吸をしながら

『大丈夫です…素晴らしいです…』

と答え、しばらくして呼吸が落ち着くと、

『ふう…今までにない感覚に少し驚きましたが、魔力も増え、体調も良くなった気がしますし…私も機会があれば、また是非お願いしたいと思います』

と言って、身体を起こし、

『支えてくれてありがとうございました』

と潤んだ瞳でにっこり笑っていた。



その後、3人の体調に問題がないことを確認したあと、フラフ姫が

『カズマ様、今回は無理を聞いて頂き、本当にありがとうございました。是非何かお礼をさせて頂きたいのですが、何が宜しいでしょうか?』

と聞いてきた。


…う~む、これと言って思いつかないのだよな…

「朱里ちゃん、何か欲しいものある?」

「うーん…こちらの世界に何があるか良く分からないし…でもそうね、出来ればこちらの世界を色々見て周りたいから、それに役に立つものとかあったら良いかも?」

「なるほど、じゃあその希望で、何か良さそうなものを挙げてもらおうかな」



『朱里とも相談したのですが、こちらの世界を見て周ったりするのに役に立つものがあれば、それがありがたいのですが、何か良いものをお教え頂けないでしょうか』

と答えると、

フラウ姫はしばし考え、

『そうですね…他の街にも行くのであれば、身分証明できるものがあった方が良いでしょうね。何かないと街に入るのにも苦労するでしょうし…じい、どうするのが一番良いかな?』

と案を出し、家老にも確認してくれた。

『それであれば一度街へ転移して、冒険者ギルドか商業ギルドに登録してしまうのが良いでしょうな。商業ギルドは審査が厳しいですが、転移先の街であれば姫様や里長の紹介状があれば問題ないでしょうし』

…おぉ!冒険者ギルドあるのか!朱里ちゃんにも伝えると凄いワクワクしていた。テンション上がるよね!


『なるほど、カズマ様、如何でしょう?』

『はい、ありがとうございます。審査の厳しくない冒険者ギルトで十分ですので、是非それでお願いします』

『うん、それではリュノ、カズマ様を連れて街に転移し、ギルド登録をしてきてください。あと、カズマ様がお嫌でなければ、リュノにはカズマ様に常に付き添ってサポートする役をさせようと思っているのですが、カズマ様、如何でしょうか?』

『えぇ、リュノが嫌でなければ、こちらこそお願いしたいと思っておりました』


『あぁ、良かったです…では、身分証はひとまずこれで良いですが、まだ他にも何かないかしら?』

『いや、十分ですが…』

フラウ姫がさらに周りに意見を求めたので、十分満足していることを伝えようとしたが、ミズハ隊長が、

『里の外を見て周るのであれば、カズマ殿の装備がいるのではないか?攻撃は透明なアカリさんやリュノが居るので問題ないかもしれないが、特に防具が要るであろう。あぁ、アカリさんの防具も念のため用意しておいた方が良いかな…』

と提案していた。


『確かにその通りね。どんなのが良いかしら?』

『私達は魔法で防御できるからあまり鎧を重視してないし、飛ぶことを前提にしているので薄く軽量の物しかありません。また背中の羽の関係で背中部分が大きく開いているから、残念ながら里にはカズマ殿に相応しい物は今ないですね。街に行った時に買い求めては如何でしょうか』

『魔法で強化できるので、カズマ殿に合う鎧と盾があれば改良して素晴らしいものに仕上げられますぞ』


『なるほど。でもそれであれば、強化前もできるだけ良い物を手に入れたいところね。金属製の鎧であれば…ローガ族かな…あの人達は私達に力を貸してくれるかしら?』

『おそらく私達では難しいですね…逆に私達の存在を感じさせずに、カズマ殿が訪れた方が良いかもしれません』

『そうね。ひとまず街で買い求めた物を強化し、より良い物はその後で考えましょうか…カズマ様申し訳ありませんが、ひとまずカズマ様とアカリさんの装備を街で買い求め、強化するのを第一弾としたいと思います。宜しいでしょうか?』

『いや、ホントに十分です。ありがとうございます!』


申し訳なさそうにフラウ姫が伝えてきてるけど…十分過ぎるし、凄い胸が高鳴る展開になってきた!楽しみ過ぎる!!

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