第29話 街への転移
『リュノ、それではカズマ様とアカリさんをよろしくお願いしますね』
そう言って、送り出してくれるフラウ姫だが…苦笑いしている。
このセリフ2回目だしね…
なぜなら、
「よし!ギルドに行くぞー!」
「おぉー!」
と朱里ちゃんとテンションが上がりまくった状態で、リュノに転移してもらったのだけど……魔力譲渡してない朱里ちゃんを、またしても置いていってしまっていた…
いや、もうね、直ぐに慌てて戻ってきた俺とリュノの姿や、また三角座りしている朱里ちゃんを
…ギルドや装備の話に舞い上がってしまったんだよ~
気を付けないと、ポンコツトリオって認識されてしまいそうだ…(既に手遅れか?)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そうしてぐだぐだになりつつも街に転移してみると、そこは宿の一室だった。
この宿は、昔リュノの里の人とパーティーを組んでいた冒険者夫婦が、引退した後に開いた宿らしく、その一室をリュノの里との転移部屋にしてくれているとの話だった。
リュノを通じて宿の夫婦とその娘さんに俺と朱里ちゃんを紹介してもらったが、夫婦はすごく温和な感じで看板娘は朗らかで、親しみやすい感じの人達だった。(頭に角が生えていたが)
…まぁ転移で現れたと思ったら直ぐに引き返すというバタバタ劇を見せてしまったので、第一印象がアレだろうけどね…
なお、街にはリュノ達が言うところの猿族(2足歩行の知能が高い種族、宿の夫婦や娘さんも含まれる)が多いらしく、リュノ達のフーリル族を街で見かけることは滅多にないとのことだった。
ちなみにリュノ達の里は最寄りのこの街から西に1ヶ月程かかる辺境の森の中にあり、フラウ姫の話に出てきたローガ族の里はこの街から北に2週間程かかる山の中にあるらしい。
そしてローガ族というのは、腕力が強く鉱石の採掘や鍛冶の能力に優れた一族で、自分たちが制作した至高の装備を使う戦士が最強だと考えており、魔法の力に優れたリュノ達のフーリル族と相当仲が悪いらしい。
…何か、ドワーフとエルフみたいな感じかな?
ひとまず朱里ちゃんの魔力譲渡が切れる前に、宿の夫婦お勧めの武器屋に向かうことにした。
なお、武器屋に向かう時は面倒ないざこざを避けるため、リュノはフーリル族だと直ぐに分からないように、羽を覆い隠すようなリュックを魔力で作り出して偽装していた。リュノの魔法、便利だよな
武器屋は元冒険者夫婦が勧めるだけあって、リュノ
まず俺の鎧と盾は、金属製のもので動きやすさと頑丈さ、身を守れる範囲のバランスを見ながら軽量性を重視した…基本的に何十kgも身につけて動き回る体力は無いからな…
朱里ちゃんの鎧は、急所にだけ金属を使用したもので、俺のより更に動きやすくて軽いものとした。
朱里ちゃんの戦闘スタイルはスピード重視だからね。
また、無手での打撃や投げも行うので、小手や
それは良いのだが、もう一つのこだわりとして朱里ちゃんが、
『とりあえず、脱ぎ着がしやすいようにして下さい』
と言ったのが波紋を呼んだ。
魔力譲渡が切れた時に直ぐに脱げるようにと考えてだと思うけど、武器屋の主人が
『普通活動中は鎧を脱いだりしないから、はずみで脱げたりしないようにきつくするもんだが…特に女性の場合、簡単に外されたりしないように頼まれることもあるくらいなんだがな』
と言って俺をちらっと見てきた。
…何か勘違いされている気がする
『いや、俺の希望じゃないですよ!?』
『そう、彼の希望じゃないですが、彼とパーティーを組むのには必要なことなんです…』
…おおいっ!?誤解を解こうとしたのに、ややこしくなるような言い方でかぶせるんじゃない!しかもアンニュイな吐息付きで!あ、武器屋の主人に見えないように手で隠した口元、ニマニマしてやがる!
『…ホントに良いのか?』
『はい、脱ぎ着がしやすいようにお願いします』
『はぁ…兄ちゃん…命かかってるんだから、ほどほどにしとけよ』
…うわっ!武器屋の主人の蔑んだ目が突き刺さる!
『いや詳しく言えないですけど、想像してる理由と違いますから!誤解ですって!…』
結局、必死に誤解を解こうとしていたら、リュノと朱里ちゃんが堪えきれなくなって噴き出したので、武器屋の主人も想像と違うということに感づいてくれたが…畜生
朱里ちゃんの装備は細工に2,3日かかるとの事なので、完成したら宿に送って貰うことにした。
あと、日本刀のコーティングが急に切れると困るので、朱里ちゃん用の幅が広く頑丈で、ゆるく湾曲して切ることができそうな(長めのカットラスのような)剣と、俺用のメイス、そして解体用のナイフを2つ購入した。
俺の装備は簡単な調整で問題なかったので、その場で鎧を着て、武器を取り付けたのだが…テンション上がるな!これ!…重いけど!
さて、ひとまず装備の準備が整ったので、次は遂にギルドだな!
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