第11話 扉の先

 身構えた状態で扉を開けたが、何かが飛び出して来たりすることはなく、開けた先には洞窟のような感じとなっていた。


『ふー、とりあえず問題なさそうだな。リュノ、どうだ?』

『うん、私が通ってきた来たほこらっぽい…多分、私達の世界だと思う!』


リュノは安堵あんどしたあと、目を輝かせて凄く嬉しそうな笑顔になっていた。

うむ、やった甲斐かいがあったな。とりあえず良かった。


こちらもホッとしていると、

『ホントに私達の世界か、ちょっと見てくるね!』

とリュノは飛び出そうと少し羽ばたいたが、

『あっ、また扉が閉まって取り残されるのが怖いから、扉開いて待っててくれない?』

と急ブレーキをかけて戻ってくると手を合わせてお願いしてきた。


おぉ…成長してるな。さすがにまた帰れなくなって1人になるのは絶対嫌だろうしな。

『あぁ、分かった。浮かれてると危ないぞ。気をつけてな』

そう言って送り出すと、

『分かった!』

と言って、さっきよりは慎重に向かっていった。


しばらく待っていると、リュノが涙を流して歓喜の表情でビューンと戻ってきつつ、呪文を唱えて元の大きさ?まで大きくなった。そして、そのままの勢いで

『カズマ、ありがとう!』

と言って抱きついてきた!


『おうふっ!』

身体強化魔法かかってなかったら、押し倒されて転がってるぞ。激し過ぎるだろ(笑)

『良かったな』

とりあえず何とか受け止めて頭をポンポン撫でると、リュノは

『ふぇぇーん、ありがとう』

と俺の肩に顔をうずめて泣いていた。


リュノが感極まってるので、引き続き頭をポンポンしながら、気になることを聞いてみた。

『ときにリュノさんや、なぜ来る時大きくなった?』

『ぐすっ、感動と感謝を伝えるのに、やっぱりちゃんとした姿でしたいと思って』

『なるほど。それはご丁寧に、どうも。…ちなみに突進の破壊力がマシマシになってたんだけどね?』

『くすん………あっ』

『大きくなるの落ちついた後で良くね?背骨ミシッて鳴ったんだけど?』

『………テヘペロッ♪、あいただだっ!』

可愛らしくごまかそうとしてきたので、こめかみをグリグリしといた。

『まぁ気持ちは受け取ったし、嬉しいけどね』

ついでに、2つの大きくて柔らかい感触を感じて幸せになったのは秘密である。



リュノも落ち着き、リュノはとりあえず元の世界の里に帰ることになった。

『できればカズマのことを里の皆に話したいのだけど良いかな?』

まぁリュノの里が困っているのなら助けてあげたい。

それに、もしこっちの世界にリュノの世界の者達が来ても触れられない可能性が高そうだし、何かあっても悪影響を受けるのは俺だけで済みそうだしな。

『うん、良いぞ。相手次第だけどリュノのような人たちなら、俺にできることがあったら無理のない範囲で助けてあげるよ』

『ありがとう。絶対無理がかからないように話をするね!』

『あぁ、帰り気を付けてな。そういえば、この赤い発信機みたいなの、返さなくて良いのか?』

『うん。またこちらの世界に来るときは、その発信機でカズマに会いに来るから』

『了解。じゃあまたな』


そう言ってリュノを送り出そうとしたが、扉の先に繋がる異世界を改めて見て、今のうちにちょっとだけ行っておきたくなった。

『っと、バイバイの前に、俺も一回そっちに行ってみとこうかな』

『あっそうしといた方が良いかも。カズマが逆に私達の世界で認識されない可能性もあるし。私に気付けたから、何か私達の世界に親和性がありそうだけどね』


『よし、…っとその前に念のためナイフだけ持っとくか』

キャンプの薪割り(バトニング)や木工用の物だから大したものじゃないけど、ないよりマシだろうし。

『そちらの道具、私達の世界だと素通りするかもしれないから、カズマの魔力まとわしといた方が良いかも』

『なるほど』

確かにリュノは道具とか全部素通りしてたからな。

当てるつもりが素通りしたら致命的だし、リュノが気付いてくれて良かった。


 ということでナイフに魔力をまとわせて準備を完了したので、遂に扉の先に行くことにした。

まずは扉が閉まらないように、部屋にあった椅子を持ってきて扉を開けた状態で動かないように固定した。

さすがに勢いで行って扉が閉まって帰れないっていうリュノの二の舞をしたら、リュノに永遠と馬鹿にされそうだしなー。

リュノ、ちって舌打ちして残念そうな顔しないように。


『よし、行くぞ!』

かなり緊張しながらリュノと共に扉をくぐった。


 潜った先でちょっと留まってみたが、息ができないとか変調を起こすこともなく、とりあえず大丈夫そうだった。

体を見回しても変なところはなさそうだ。

そうやって、自分の状態を確認していると、ちょっと先に進んでいたリュノが振り返り、こちらを見た途端、

『きゃあぁぁあぁぁーー!!』

と叫んでいた!

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