第6話 ご飯のために!(1)
『イタタタ、まだ足しびれてる…でも、ホントに希望が見えてきたわ。ありがとう』
落ち着いた後、リュノが改めて感謝を伝えてきた。
『あぁ。でもまだ扉が開けれた訳でもないからな。その言葉は早いと思うぞ』
『そうだけど、こうして会話ができて、魔力が補充できるだけで、ホントに救われてるのよ』
『そうか』
『うん』
リュノはドキッとするような優しげな顔で微笑んでいた。…こいつこうしてたら可愛いのに。
『そういえば、扉はここから近いのか?』
『うーん、遠くはないけど山に入っていくのよね…今から暗い森に向かうと迷うかもしれないし、危ないかな〜』
『じゃあ扉に向かうのは明日だな』
『うん。お願いします』
それじゃあ、ひとまず飯だな。
『何してるの?』
こちらがリュックをガサゴソして荷物を取り出そうとし始めると、肩に乗ってきた。
『あぁ、腹が減ったのでとりあえず食事をしようと思ってな』
魔力を渡した影響もあるのか、かなり腹が減っていた。
焚き火で焼き肉をする予定だったので、テントを開けて外に出ようとしたが、肩に乗っているリュノを見て
『他の人からは見えないんだよな』
『そのはず。とりあえず今まで5日間、あの光る虫を見に来た人にアピールしてたけど、私に反応した人はいなかったよ。』
『じゃあ大丈夫かな。念のため焚き火はテントの影になるところに移動しとくか』
焚き火台を移動したあと、火をおこして焚き火をし、頃合いをみて有名なアウトドアスパイスを振りかけた肉を網の上で焼きだした。すると焼けるジューという音と共に暴力的に良い匂いがしてきた。
よし、めっちゃ美味そう!
勢いよく食べようとするとリュノが、
『凄ーく美味しそうねー』
と言ってじーっと見てきた。
…そんなに見られると食べにくいって。
『…お前触れないだろ』
箸を止めてそう言うと
『で、でもワンチャンあるかもしれないし!』
と言うので、ため息をついて、焼けた肉を使ってない予備のシェラカップに入れてあげた。
『どうだ?』
とフォークと共に目の前に置いてあげると、ありがとうと言って、キラキラした目をしてフォークを
次に意を決して直接肉を触ろうとしたが、すり抜けてしまい涙目になっていた。
『ふぇぇん』
『さすがにどうしてやることもできんので、これは俺のな』
そう言って肉をパクっと食べると、口の中にガツンと旨味が広がり、自然と顔がほころんでいた。
そんな俺と肉をリュノは『あうあう』言って見ていたが、いきなり目をくわっと見開くと、
『そうだ!一回カズマの魔力を肉にまとわせて焼いてみて!』
とお願いしてきた。
…なるほど。考えたな。
『まぁいいけど。でもそのコーティングした結果、食べれるけど不味くなっても知らんぞ』
『う゛っ。で、できるだけ薄―くまとわせてみて!』
『今日初めて魔力の操作をしだしたのに無茶言うなって』
とりあえず肉に触れるか触れないかぐらいの距離に手を持っていって魔力を付けようとすると、魔力がお肉にうっすらとまとわり付いたので、無色になるぐらい薄く伸ばして両面に魔力を付けて肉を焼いてみた。
注目して観察したが、特に焼け具合や匂いなどが変化することもなく、普通に焼けていた。
焼けた肉を先ほどと同じようにシェラカップに入れ、そういえば物に魔力をまとわせるとどうなるんだろう?とちょっと思いつき、添えるフォークにも魔力をまとわせてみた。
『これでどうだ?』
と目の前に置くと、リュノがそろーっとフォークに手を近づけた。そして、リュノの手がフォークに触れたとたん、フォークが動いてカチャリと音を立てていた。
『さ、触れる!!』
そう言うとリュノはガシッとフォークを掴み、驚いた表情で感触を確かめていた。
…おぉー、俺が魔力をまとわせると触れるようになるのか…。これは凄いことじゃね?
思いつきで試してみたことが驚きの結果になって感動していると、リュノはそれまでよりも興奮した顔でお肉にバッと目を向けた。
そしてリュノはゴクッと喉を鳴らし、自分と同じくらいの大きさのフォークを少しよろけながら抱え、同じくらいの大きさの焼肉に刺そうと、目をらんらんと輝かせ狙いを定めていた。
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