第7話 ご飯のために!(2)
焼肉に
『あ~ちょっとリュノには大き過ぎたな。あまり現実的に考えてなかった、スマン。
と言うとリュノは
『あ、そういえば魔力補充してもらったから、ここまで節約する必要ないわね。』
と答えるとフォークから手を離し、少し離れた位置に移動した。
えっ!?どうした?
あんなに興奮して前のめりだったのに急に離れたことを
すると何とリュノの体が、ボンッと
『うわっ!?リュノ!体の大きさ変えられたのか!?』
『ええ、今までは魔力とエネルギーの節約のため、一番小さくなっていたの。ホントの私の大きさはカズマより頭一つ小さいくらいかな。大きくはなれないけど、小さくはなれるの』
『マジか!』
『ふふっ、これでしっかり食べられるからこのままで大丈夫よ!』
そう言うと、リュノは大きくなった手でフォークを掴み、焼肉に刺して掲げると、勢いよくお肉にかじりついた!
……おぉぉ、つまり焼肉のために大きくなったのか。
若干引き気味に驚いているこっちをよそに、リュノはもぐもぐと食べると
『美味しい!しかも魔力も増えてる!最高ー!!』
と満面の笑顔で叫んでいた。
そして一切れ食べ終わると、名残惜しそうな顔をして、
『ねぇカズマ、もうちょっと欲しいのだけど』
と言ってきた…。
『……もともと一人分だからそんな量ないんだけど』
『そこを何とか!お願い!』
『なんか魔力を使ったからか、めっちゃお腹すいてるんだよなー。これさ、魔力まとわして焼いてたら、俺の腹は膨れないんじゃ?』
『き、気のせいじゃない?』
『…なぁ、省エネのために小さくなっていたんだよな?』
『う、うん。そうだよ』
『ってことは、小さいままならそんなに食べなくても良いんじゃないか?』
『え、えーとね?(汗)そ、それは生命活動のエネルギーであって、魔力量は小さくなっても変わらないから、魔力の補充として、私を助けると思って…』
『さっき、節約しなくても良くなったって言ってなかったっけ?』
『…あ、あと少し魔力欲しいーなー』
『…じゃあ丸薬を』
『ふぇぇぇ〜ん』
リュノが絶望的な表情になった……めっちゃ腹減ってるところに予想以上に食われそうになって、ちょっと大人げなかったかも…ったく、しょうがねーな。残りの肉は6枚か。
『じゃああと2枚な』
『!!カズマ、いいの?ありがとう!』
『じゃがいもとウィンナーもあるから欲しけりゃ言いな。…あぁ、じゃがいものホイル焼きは後付けするの面倒そうだから先にコーティングしとくか』
『神!』
リュノは拝むような感じで目をキラキラさせていた。
…まぁ、悲しげな顔で側にいると
…んーあれ?ホイル焼きの後追いのバターってリュノ的にはどうなるんだろ?
おっとビール、ビール。フッフッフッこの前誕生日を迎えて20歳になった俺に死角はない!
そんな風にとりとめのない事を考えながら準備をし、笑顔のリュノに魔力コーティングをしたトングを渡して一緒に焼いていった。
『あぁ、美味しい!それに魔力だけよりも増える量が多い気がするー♪』
ん?お肉を食べて上機嫌なリュノがポロッと言った感覚的なことだけど…今後も続くなら重要かも?と興味が沸いた。あと、調べる方法に思い至って、ちょっといたずら心も沸いた。フッフッフッ。
『ホントか?じゃあ実験してみるか』
『え?』
『コーティングした食べ物と、コーティングに使った魔力と同じ量を丸薬にしたものを食べ比べたら分かるよね?』
『いや、知らなくても良いんじゃないかな?(汗)』
『はっはっはっ、死活問題だから正確に知らないとな。ほい丸薬。まぁ一回だけだし、こっち先食べたら後は美味しいのだけだからね』
『うぇぇぇ、やっぱり悪魔~』
そんな訳で美味しく(丸薬除く。笑)食べながら色々と実験した。その結果、
・魔力コーティングした食べ物はその素材がもつ魔力分も追加される(魔力量としては非常に少ないが、1種類の木の実からしか得ることができなかったリュノとしては、色々なものから取ることができる地球の作物に驚愕していた)
・魔力はコーティングだと無味だけど、丸薬のように凝縮するとかなりエグくなる
・追いバターで溶けた場合は味も魔力も追加されたけど、冷めた上に載せただけのバターはリュノの口からすり抜けた(料理中なら混ざって追加できそう)
・リュノを想って触れると魔力をリュノに渡せれるが、リュノを想ってないときにリュノが触れてきても勝手に魔力を吸収されることはない。
・食べ物ではなく物にコーティングした場合、リュノが触れても魔力は吸収されない(リュノがフォークを舐めても吸収できなかったので、食べ物を作るとか物を覆うとかの意識が影響してそう)
ということが何となく分かった。
あと、調子に乗って色々とコーティングしまくっていたら頭が痛くなった。
リュノに聞くと、魔力の使い過ぎってことだった。
無理して使いすぎると気絶するらしい。
気絶するほど使ったら魔力量が増えたりするのかって思わず聞いたら、リュノの世界ではそれで増えたって話は聞いたことがないってことだった。
まぁご飯食べたら魔力も頭痛も直ぐに回復したし、胃袋の限界があるとはいえ回復手段があるなら、小さい可能性のために気絶してまで追い求めようとは今は感じないかな。
『あー美味しかった。ありがとうカズマ』
『おう』
色々あったがリュノはお腹も魔力も満足したのと、今日までの極限状態の緊張が解けた影響か、ふわっと笑ったあと、眠そうな感じになっていた。
ちょっと小さいリュノのその姿に、今まで大変だったんだろうなという思いと、ゆっくり休めという気持ちが湧き上がり、
『眠いんならテントに寝袋と毛布があるから、どっちか使って眠ってれば良いぞ。俺は片付けしとくから』
と声をかけていた。
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