第19話 食材選び
スーパーマーケットに到着して中に入ると、リュノが
『何これ!?凄い沢山の種類と量!時間停止とかをしてる感じはないし、旬の食材がこんなにあるの!?』
と驚いてテンションが上がり、文字通り飛び回っていた。
『おーい!戻ってこーい!ちなみに全部が旬ではなくて、生産者の人達が育成や保管の温度とかの環境を調整することで、採れる時期を広げているんだよ』
『へー!これだけ種類があると目移りしちゃうねー』
『リュノの世界のものとは似てる?それとも全然違う感じ?』
『果実とかは似てる形状のものはあるけど、見慣れないものが多いかな?お肉は元の形が分からないし』
『お肉は確かにそうだよねー。ところで、さっき言ってたけどリュノさんの世界では時間停止があるの?』
『うん、でも魔法の難易度が凄く高いし効果範囲を大きくできないから、魔法が得意な私たちの里でも小さいBOX状の保存箱がいくつかあるだけなんだけどね。生き物は入れられないし』
『なるほど。じゃあ、魔力量と食材の保存期間に差がない場合は、食材が小さい方が良いのかもしれないな』
『そういえば朱里ちゃん、付いてきてるけど一緒に食べるの?それなら大樹さんに連絡しときなよ』
『もちろん一緒にたべるよ!っと連絡、連絡っと……で食べて帰るってことで。じゃ』
……何か大樹さんの「魔力譲渡した後、大丈夫だったか、どうなったか直ぐに連絡しろよ!」という声が聞こえてた気がするが…ちゃっちゃと言葉短く切り上げて、食べて帰るって伝えてた…大樹さんも大変だな…
『あーリュノ、何か気になるものあった?』
『味が分からないからねー。一通り試したいけど、数も多いし。調理済みのもあるよね?あの絵が描いてある袋とかはあの絵のものが入ってるの?』
『うん。絵のやつはそう。でもそうだなー、素材の比較するなら調理済みはなしかな?そうだ、朱里ちゃんは食べたいものとかある?』
『フレンチのフルコースかな?』
『…俺が場所と材料を提供するから、作るのは朱里ちゃんだよね?』
『うん、やっぱり素材毎で比較し易い調理法じゃないとダメだよね。しょうがない』
かぶせ気味で反応早っ!まぁ朱里ちゃんが料理得意とは思ってなかったけど……
結局、単品で比較できて異世界で同様に食べられるように、生で食べられる野菜や果物、あとは塩ゆでや鉄板焼きで調理できるものを試すことにした。
『それはそうと、主食もいるから…鉄板があるなら、焼きそばかお好み焼きにするかな。どっちが良い?』
『むむっ!広島風で!』
…両取りかい。朱里ちゃん貪欲だなぁ…
ってことで、散々食べまくったが…
『トマト、芋類、枝豆ってところが優秀だったかな?』
『そうねー。果物も良いのはあったけど季節限定されるし高いよね。お肉や魚は種類に関係なくそこそこな感じだけど、保存考えると厳しそうだし……あっ、さっき挙げたの、必要なら山で畑をして育てられるよ…はっ!?頑張るよお父さんが!』
『異世界で育てるのを試すのを考えても良さそうだね。畑することになったら朱里ちゃんに頑張ってもらうとして…』
『…むぅ、私がやったら絶対私が持って行くからね』
『私もさっき挙げたので良いと思います!ただお肉は要らないですが、ウィンナーは必須です!』
『あぁー、前回持って行ったのが争奪戦になったんだっけ。まぁ賞味期限もそこそこあるし、良いけど。リュノもめっちゃ気に入ってるよね』
『そ、そんなことは……ありますけど。でも、今回の枝豆にビールも最高です!!』
『あぁ、定番だけあって美味いよね。それに枝豆というか大豆が優秀なのは料理するのにもありがたい』
『そういえば、和真君の作った広島風お好み焼きとついでのポトフが予想以上に美味しかったのに驚いたんだけど』
『一人暮らししてるから、ある程度はね。俺はお好み焼きをひっくり返す朱里ちゃんの真剣な目つきと鮮やかな手並みに圧倒されたけど』
『ふっふっふっ。あーいうのは任せなさい』
そうしてとりあえず食材選びの目星が付いたので、明日の金曜は講義のあとに持ち物や魔力充填などの準備をして、土曜日の朝からリュノの里に向かうことに決めたのだった。
朱里ちゃんが絶対大樹さんから異世界行きの許可を貰ってくると意気込んでいたけど、どうなるかなー?
なおリュノにこの後の予定を確認したら、
祠の扉を開けるためにリュノに魔力充填した手袋を渡し、部屋から出ていく朱里ちゃんとリュノを見送ろうとしたところ、ガチャッと隣の部屋の扉が開き、先輩が勢いよく出てきた。
うわっ面倒だなと思っていると、先輩がこちらを睨んだ後
「あ、お嬢さん、藤堂に何か問題になるようなことをされ…」
と言いながら朱里ちゃんに笑顔を向けて寄ってこようとした途中で
「うわぁーー!手が!?」
と叫んで腰を抜かしていた。
…あっ、間に居るリュノの手袋だけ浮いた感じで見えてるのかな?
朱里ちゃんも瞬時に気付いたようだが、不思議そうな顔を維持して
「先輩どうしたのですか?…あっそういえば、
とつぶやいた後
『リュノさん、あの人に掴みかかるようにゆっくり近づいて』
と念話で指示を出していた。
リュノが両手を広げてゆっくりと近づくと、先輩は腰を落としたままズザザッと後ずさりした。
「と、藤堂、お前見えてないのか!?」
「先輩、何のことです?何か見えてるんですか?…邪なもの?」
「い、いや、何でもない!ま、またな!」
そうして先輩は急いで部屋に戻って行ったが…
朱里ちゃんがクククッと笑いながら
「これでもう声をかけてくることはなさそうね」
とつぶやいていた…朱里ちゃんの切れ味鋭い対応すげぇな。
年上のリュノの方がどぎまぎしているよ…
朱里ちゃん怒らせると怖そうなんで、からかい過ぎないように気を付けよう
(からかいまくるのはリュノだけにしておこう。うむ)
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