第46話運命のボトルメール
大海原と呼ばれる海の、たった一つ浮かぶ小さな島に、僕は一人生きている。
周りには当然ながら何もなく、島の敷地でさえ誰もいない。
それでも、運良く食べ物も飲み水も、不思議な程確保出来ているから、生きていくうえで不便は感じていなかった。
空と海の青は、本当は違う色のはずなのに、残念ながら僕には同じ色に見える。
「……何で、そう見えるのだろう?」
僕はポツリ呟き、心の声を聞く為に瞳を閉じた。
「多分、何かが欠けているから、同じに見えるんだ」
僕が尤もらしい答えを出して、深く頷いた時である。
遠方から、何やらプカプカと浮かぶものを発見した。
時間はかかったが、それを回収した僕は目を丸くする。
薄汚れていた瓶の中に、真っ白い紙が入っていたからだ。
不思議に思って、その紙を慎重に取り出した僕は、震える手で広げてみる。
その紙には、細い文字で“おともだちになって”と書かれていた。
僕は迷う。
返事を出したところで、差出人に確実に届くには、かなりの時間を要するだろう。
まして、僕の島には住所はなく、手紙が途絶えるのは目に見えている。
迷いに迷い、空が赤く染まった頃。
僕は手紙が入った瓶を強く握りしめ、瞳に焼き付けるかのように見つめた。
そして、僕は大きく頷く。
その表情は、僕がきっと今までにない明るさを放っていたに違いなかった。
次の日から約1ヶ月かけて家付きの小舟を完成させる。
この船旅は、想像をはるかに越えた、厳しい[[rb:旅路 > モノ]]になるだろう。
故に、必要最低限の生活を維持する為の部屋を付け加えたのである。
「上出来!」
僕は、決して上手とは言えない船を、感慨深い眼差しで見つめた。
それから僕は、あの時の瓶へと瞳を移したあと、砂浜へ近づき
「まだ見ぬ君に、会いたくなりました」
と、愛おしそうに呟いた。
そして、しゃがみこんで、瓶を真っ青な大海原に解き放つ。
「どちらが早く着くか勝負だ」
まるで見えない敵に戦いでも挑むように、僕そう宣言した。
それを合図に波が穏やかになる。
僕は手作りの船に飛び乗り、住み慣れた島を離れた。
まだ見ぬ土地に君がいる。
その姿に思いを馳せた僕は、ゆっくりとオールを動かし始めた。
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