第9話君の星座


 君が星になったと聞いて、思わず家を飛び出す。


 その人はテレビで放映されるまで、赤の他人だった。


 だから、本当は行かなくても良かったのに。


 何故か行かないと後悔しそうで……


 橋の下に辿り着いた僕は、何気なく辺りを見回す。


 瞳が捕らえたのは、その場に似合わない、鮮やかな花の色。


“ここで君は星にされたの?

1番望まない星に……”


 問いかけても、答えはない。


 それは、僕が君を知らなすぎたから?


 否、ここではない遠くの星座クニに行っただけ。


 誰も君を否定しない、あの空に輝く星座クニに帰ってしまっただけ……


“それだけだから”という思いが、僕を現実に引き戻す。


 やっぱり僕は、君とは無縁。


 でも、確かに一瞬は繋がった。


「お元気で」


 僕はようやくその場に合わない台詞コトバを発し、後ろ髪を引かれぬまま、その場を後にした。


令和3(2021)年3月26日23:30~3月27日0:10作成


Mのお題

令和3(2021)年3月26日

「星座」




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