第8話……なんて呼ばれているけど

「今日も沢山の新聞を読んで、時折ぽけーっと外を眺めて……」


“充実した1日だったなぁ”と呟いた俺は、窓際族と揶揄されて5年目の50代男性である。


 そんな俺が仕事を与えられていないにも拘わらず、いつまでも会社に居座っている理由。


 それは……


「鍵山さん、6時を過ぎていても特売品がある八百屋って何処かしら?」

「それなら、駅前の八百屋で確か安売りをやっているはずだ。

ほら、手作りのチラシが○○新聞に入っていたから、行ってみるといい」

「有難う、早速寄ってみるわ!」


「す、済みません……鍵山さん」

「奥さんを説得するんだね?」

「いつもこんなことを頼んでしまって、申し訳ありません」

「いいよ、その代わり後で手土産宜しくな」

「はい……」

「お付き合いも大変だね」


 そう言って、俺はいそいそと差し出す携帯を手に取り、彼の奥さんに飲み会の許可を取る。


 このように、俺の仕事は午後6時から本格的に始まる。


 愚痴は言っていられなかった。


 その為に、あらゆる新聞を読んだり、テレビを番組を見たりして、夜を楽しむ人々の役に立つという仕事をするのである。


「た、大変です、鍵山さ-ん!」


 どうやらまた一件仕事がきたようだ。


「どうしたんだい?」

「社長が階段から転げ落ちました!」

「救急車を呼んで下さい!」

「はい!」

「今日は、入院かな?」


……これで何回目なんだろう?


お仕舞い


令和4(2022)年3月8日12:09~12:40作成


Mのお題

令和4(2022)年3月8日

「窓際族のアフター6」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る