第48話プリン騒動(直す前)


 オレの同居人はとても我儘だ。


 四六時中、何かにつけては文句をいい、同居人であるオレを困らせた。


 ある日、散歩に出ていた同居人が帰って来るや否や、何処で購入したのか、大きくて怪しいビニール袋を、玄関まで出迎えたオレに突き付けた。


 不機嫌な顔で中を覗き込むと、何かの材料が入っている。


 眉をひそめたオレに

「これで今すぐプリンを作れ」

と、同居人が命令する。


「やなこった、自分で作れ!」

「ここの部屋代、誰が出していると思っているんだ?」

「……それを言うな」


 オレは不貞腐れて、もう一度袋の中身を見ながら、材料を確認した。


「何かが足らん」


 そう呟くオレの瞳には、牛乳という物が捉えられなかった。


「なぁ、牛乳……」

「買うの忘れた」

「仕方ねぇなぁ、ちょっと買ってくるから、用意だけしておいてくれ」


 オレは、大きく溜め息を吐いてそう言うと、自室へと向かう。


 数分後、再び同居人の前に姿を現したオレの手には、可愛いアヒルの絵柄の財布が握られていた。


 それから、近くのスーパーで牛乳とプラス[[rb:α > アルファ]]を購入して帰ってきたオレは、早足でキッチンに入って驚愕した。


 まるでキッチンにだけ台風が通り過ぎたかのように、何もかもがひっちゃかめっちゃかになっていたからだ。


「あっ、ゴキブリがいて、追っかけていたらこうなった」


”仕留めた”と言わんばかりに、丸まったティッシュを見せた同居人に

「どうでもいいから、さっさと片付けろ!」

と、オレは目くじらを立てて命令する。


 流石にまずいと思ったのであろう。


 同居人は特に反抗もせず、辺りを無言のまま片付け始める。


 オレも、“こんなに本気で怒ったのは久しぶりだな”と思いながら、黙々と手を動かす同居人に倣い、片付けを手伝った。


 それから1時間後。


 普段よりも綺麗になったキッチンで、珍しく2人で協力しあって出来たプリンは、市販されているものよりも、大きくて食べがいがある[[rb:プリン > モノ]]になった。


 同居人と一緒に食べるプリン。


 数年後、いつか笑い話として語り継がれるんだろうなと思ったら、なんだかいつもよりも美味しく感じた。


お仕舞い


令和6(2024)10月10日~令和6(2024)年10月18日作成




 



 

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