第20話愛情

「君はずっとマスクを着けているね」


“いつ外すの?“


 その台詞コトバから、僕は君に興味を持った。


 初めて見かけた長い黒髪を、頭の天辺で縛る君の姿は、僕から見ればいつでも手の届かない場所にいたのに。


 今こうして直ぐ隣で会話出来ることがとても不思議で……


「どうしたの?」


“やっぱり、何か言いたい事があるんでしょう?”


 覗き込んだ彼女の瞳は正直だ。


 上手く心を隠しても、こうして読み取られてしまう。


 だから僕は、とうとう観念して瞳を閉じた。


 そして恐らく、不思議と怪訝な表情が入り混じった双眸で見つめる君に、僕は初めてマスク越しから魔法をかけるんだ。


 でないと君が君の意思で決められなくなってしまうから……


「僕は君が大好きです」

「……うん」

「まずはお友達から始めてもらえませんか?」

「そうね……

でも多分、もうなっていると思うよ」


 彼女の何処か確信に満ちた言葉を合図で、恐恐コワゴワと時間をかけて開いた瞳の先に、満面の笑顔が広がっていて……


“ああ、大切な想いをちゃんと言葉にして良かった!”


 僕が悪魔でも、天使の君と友達になれるんだ!!


 これから誰かが邪魔をしようとしても、この僕の言葉で君を守るから、安心してね。


 僕はキリッとした瞳の彼女にそう誓い、マスクを着け直した。


令和3(2021)年12月27日3:15~令和4(2022)年1月1日15:43作成


Mのお題

令和3(2021)年12月17日

「MIYASHITAPARK 空想映画祭」

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