第21話進む

 先を行く君が歩いてきた道に花が咲き始め、みるみるうちに育っていく。


 僕はその花を悔しい表情(カオ)で見つめているだけで、何もせず一歩も動けないでいた。


「怖い?」

「……」

「落ちるのが嫌?」

「……分からない」


 君に直球で訊ねられても、“悔しさ”というプライドが邪魔をして答えられない。


「止まっていると、もっと大切なものを失くすよ」


 君はクスッと笑って、立ち止まりウズクマろうとしている僕から足早に離れていった。


 その途端、目の前に暗幕が引かれて何も見えなくなる暗くなる。


 僕の中には書きたい・伝えたいものなどなくて、それでも誰かから置き去りにされたくなくて……


 だから無理矢理空っぽの引き出しから材料になるものを引っ張り出して、物語を書き続けた。


 君が言っていた“原作が映画になるコンテスト”でもそう……


「受賞している人の作品見てしまうと、悔しさのあまり作品なんか作りたくなくなるんだよね」


 さらりと地面に落ちた悲しい言葉は、そのまま跡形もなく吸い込まれていき、誰も拾うことはない。


 それでもきっと“書こうかな”と思うのは、よく分からないけど。


 多分、“君の隣に並ぶ”って決めているから。


「……君が選んで笑ったり泣いたりしてくれれば、結局はそれで良いのかもしれないね」


 そう呟いた瞬間、今まで僕が歩いてきた軌跡から感謝の花が咲き誇る。


 そうして僕はまたペンを握り、書きたい物語を書いていく。


令和3(2021)年12月27日5:16~12月28日11:53作成


Mのお題

令和3(2021)年12月17日

「MIYASHITAPARK 空想映画祭」

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