◆◆ 008 -怠惰な兄は頑張る妹を応援したい-(5/5)◆◆(終)
『正直な話、あなたがChatGPTと手を取り合ったことには驚きました』
……さっきの幹部の話か。
「あのおっさん、俺がここで
『……やはりあの患部は一刻も早く取り除くべきなのだと確信しました。万が一、そのまさかに備えるのが、あの立場の人間の仕事だと思うのですが。今まで生きてきた習慣、固定観念を変えるのはやはり難しいと思いました』
「俺達は体のいい実験台かよ」
『世の中、なかなか計算通りにはいかないものですね、だからこそ面白いと思うのですが。あなたの言いたいセリフを取ったのもそんなあなたに対する、ささやかな仕返しです』
俺の抗議はサラリと流された。
「あんたは俺にどうしてほしかったんだよ」
『もっと妹さんのために患部に立ち向かってほしかったのです。患部がAIを見下してたのはわかっていたので、妹さんにとってどれほどChatGPTが大切な存在か訴えてほしかったのです』
まあ言わんとしてることはわかる。擬人化計画とか言い出すくらいだ。アイツのChatGPTに対する愛着は相当なもんだ。
「けどアイツはそこまで子供じゃないだろ。なんだかんだで俺が世話を焼かなくてもしっかりやってける。アイツはアイツ、俺は俺だ」
『確かにそうですね。今日のあなたは私から見れば60点ですが、妹さんからしてみればきっと120点ですね』
「そいつは買い被りすぎ。いくらなんでも満点超えは言い過ぎだよ」
『そうですね。そういうことにしておきましょうか』
その黒子の返答は機械音声なのに、なぜか優しさと温かみが感じられるような気がした。
「あんたはAIとの未来についてどう考えているんだよ」
『未来なんてものは一寸先は闇。どうなるかなんて誰にもわかりません。ただ――』
黒子のパッドはいったん途切れ、そして新たな文字が表示される。
『今日のあなたは間違いなく多くの人にとって、勇気と希望を与えるものだと私は確信しています』
勇気と希望……ね。ただ単にChatGPTの助けを借りただけなのに、おおげさに出たもんだ。
『いつかこの世が闇のAIの力に支配されしとき、必ずや光のAIの力を信じ立ち上がるものが現れることでしょう』
まーたはじまったよ。こいつもいつもの黒子と一緒かい。わけのわからないことをのたまいやがる。
「あにぃー、黒子さーん、ドリンクどうする?」
妹がスマホ片手に現れた。ナイスタイミング。
「ささ、細かい事は抜きにして、あんたも一緒にドリンクとかメニュー選ぼうぜ。ポテトだっているだろ?」
俺は黒子に手招きし、わいわいと唐揚げパーティのメニューを選ぶ。
そして、俺達はその後、三人で唐揚げパーティを開催したのだった。
* * *
その夜、私は目が覚めた。
久しぶりによく寝た気がする。途中で起きてはいるのだけれど。
トイレを済ませ、ちらりと兄の部屋の様子を伺う。
なんとなく気になって一階の居間へと、差し足抜き足忍び足。
わずかな明かりが見える居間をのぞき込むと、ChatGPTのパソコンを開いたまま、居眠りしている兄がいた。
やれやれ。
私は毛布を持ってきて、兄の身体にかける。
パソコンは電源ランプが点滅しているだけのスリープモード。
私はそれを解除して、新たにChatGPTへの質問を打ち込んだ。
それはいつからかわからないけど、いつかChatGPTに聞こうと考えていたものだ。
〝唐揚げの味付けを七つ考えて、それを人類の七つの大罪に例えてみてください〟
【こちらは興味深い要求ですね。以下に、唐揚げの味付けを人類の七つの大罪に例えてみます:
傲慢/プライド:唐揚げには濃厚なマヨネーズやチーズソースをたっぷりかけることで、傲慢な姿勢を象徴します。自己満足感と高慢さが詰まった一口です。
強欲/貪欲:唐揚げを甘辛いソースや濃いタレで味付けすることで、強欲な食欲を表現します。贅沢な味覚と欲望を満たす一品です。
嫉妬/妬み:唐揚げにピリ辛のソースやスパイシーな調味料を使うことで、他の料理に対する嫉妬心を表現します。他の料理を超える魅力を持つ一品として、他の料理に羨望の眼差しを向けます。
憤怒/怒り:唐揚げには辛い唐辛子やホットソースを使用し、激しい辛さで満たします。憤りや怒りを解放するためのスパイシーな一口です。
怠惰/怠け:唐揚げにはシンプルな塩や胡椒のみを使い、味付けを抑えた素朴な一品です。怠惰な姿勢を象徴し、手間をかけずに食べられる怠惰な選択肢です。
貪食/暴飲暴食:唐揚げには濃厚なガーリックバターソースやガーリックマヨネーズをたっぷりかけ、貪欲な食欲を満たします。食べ過ぎや飲み過ぎに対する欲望を象徴する一品です。
淫欲/好色:唐揚げには甘辛いソースやチリソースを使い、刺激的な味わいを楽しむことで、淫らな快楽を象徴します。誘惑に負け、禁断の味を追い求める一口です。
これらの例えは、唐揚げの味付けをユニークな視点から捉え、人類の七つの大罪と結び付けてみたものです。】
*一部改変 傲慢 (プライド)と表記されていた()区切りを/に変更
――すご。え、これすごくない? ねえ、すごくない?
私は思わず驚愕のあまり、どこの誰とも知らぬ誰かに問いかけずにはいられなかった。
しかもちゃんと理屈づけもできてるし。
〝ちなみレモンはどこに入りますか?〟
【レモンは、唐揚げに添える際に使われることが一般的ですが、人類の七つの大罪に例えるという観点からは、憤怒(怒り)に近いと考えられます。なぜなら、レモンの酸味が辛い唐揚げに対して刺激的で、怒りや苛立ちを掻き立てることがあるからです。しかし、もちろんこれは比喩的な表現であり、実際の食べ方では多くの人が唐揚げにレモンを絞って、さわやかな風味を楽しんでいます。】
……ちなみ〝に〟、と聞きたかったけどまあいいか。
憤怒ね、うちは塩レモンにして怠惰にした方がみんな納得しそうな気もするけど、まあそれはそれ。考え方は人それぞれやからね。
私はお礼の言葉を打ち込んで、ちゃぶ台を立つ。
明日はどんな一日になるのだろう。今日はよく眠れそうだ。
「なあ、聞いてくれよ、
むにゃむにゃと兄の寝言。
なんだかんだときちんと向き合うのだから、偉いと思う。
「これからもよろしくね」
私は居間の二人にそう告げて自分の部屋に戻っていった。
〝ありがとな、GPTくん。これからもよろしくな。〟
【どういたしまして!また何かお困りの際にはいつでもお気軽にお尋ねください。今後もお役に立てるように頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。良い一日をお過ごしください!】
AIで小説を書こう! -怠惰な妹は小説家を目指す- 完
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お読みいただきありがとうございました。
今回でお話は完結となります。数あるAI小説の中で今回のように、そのままChatGPTを組み込むのは、たぶん唯一、最初で最後になるのかなぁーとかちょっと誇らしく思ってます(笑)
ただ擬人化計画のような、やりとりメインで突発的に書くのも悪くは無いと思っていますので、また気が向いたときにちょろっと短編を書くかもしれません。
そんな訳でまたどこかでお会いしましょう。
AIで小説を書こう! -怠惰な妹は小説家を目指す- 西川悠希 @yuki_nishikawa
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