◆◆ 003 -傲慢な妹は世界を滅ぼしたい-(2/3)◆◆

【世界の課題に向き合うために、以下のような行動を考えてみてください:


 1.持続可能性に配慮した行動: 環境に優しい生活を心がけましょう。省エネやリサイクル、再利用、エコフレンドリーな選択を取り入れることで、地球資源の保護に貢献します。


 2.社会貢献: 自分の力や時間を社会的な課題に捧げることができます。ボランティア活動やチャリティ団体への支援、地域の問題解決に参加するなど、コミュニティに貢献する方法を見つけましょう。


 3.問題意識の啓発: 問題についての情報を収集し、他の人々と共有しましょう。社会的な不平等、教育格差、貧困、環境問題など、世界の課題に対する意識を高めることが重要です。


 4.政治的な関与: 政治的な意思決定に関与し、ポジティブな変化を促すための選択や声を行使しましょう。有権者としての権利を行使することで、社会的な問題に対して影響力を持つことができます。


 以上のような方法を通じて、自分自身と周りの人々により良い未来を築くことがで】


 例によって、途中で止まっていた。

 よく見ると下に「Continue generating」の表示。


「なあ、そこ押せば続き、書いてくれるんじゃね?」


 妹は俺の言葉に従い、表示をクリック。


【以上のような方法を通じて、自分自身と周りの人々により良い未来を築くことができます。ポジティブな変化を起こすために、善意と創造性を活かして行動しましょう。】


 あら、意外に短い。前回はもっといろいろと長文が来たけども。

 〝続き書いて〟とお願いしたらもっと書いてくれたのかな?


 〝続きはそれだけですか?〟


 聞き方ぁ!


【申し訳ありません、もし他に特定の質問やお話したい内容があれば、お知らせください。それに基づいてより具体的な情報や解説を提供します。私は幅広いトピックについてお手伝いできるので、お気軽にお聞きください。】


 我が妹は憮然とした表情である。やれやれ、傲慢なやつだ。

 さすがにAIだってそんな聞き方されればムッとすると思うぞ。


「でも何でいきなり世界を滅ぼしたいとか」


 聞きたくないけど、聞いとくか。なんか聞いてほしそうだしな。さすがに我が妹ながら世界滅亡を口にされるのは勘弁願いたいし。


『世界を滅ぼすのはロマンじゃないですか!』


 外野の意見は華麗にスルッとスルー。


「……だってみんな、AIが世界を滅ぼすとか言ってるやん。GPTジピットくん、うちの話、ちゃんと聞いてくれて答えてくれるし、今だって〝そんなのいけません〟って前向きに言ってくれたやん。うち、おかしいと思うんよ。本当にそんな悪いものなんかな、って。うち、GPTジピットくんを悪い人だと思いたくないんよ。悪くないのに、みんなに悪いもの扱いされるのってそんなんおかしいやん。かわいそうやん」


 ……真剣な語りだった。

 言葉の枝葉末節を突っ込めばキリがないが、妹が妹なりに真剣に考えていることは伝わってきた。


「だから、うちがGPTジピットくんを悪者扱いするこの世界を滅ぼしてやるんや!」


 ダメだコイツ、早くなんとかしないと……。

 俺はチラリと2号さんの様子を伺う。2号さんはフリップにカキカキ中。正直、この人もかなり思考がアレな気がするんだよなぁ。


『ポストアポカリプスを題材にした作品がないか聞いてみてはいかがでしょうか?』


 なんかまた変な言葉が出てきたぞ。


「ポストアルカポーネ?」

『時は世紀末です!』


 ピリッと辛みの効いたトマトパスタのようなポストなんちゃらはいいとして、要は世界滅亡を題材にした小説を聞いてみろってことか?


「ちょっと貸して」


 俺はノーパソを手に取り、カタカタエンター。


 〝世界が滅ぶ作品って何があるka〟


 うわ、タイプミスったまま送信しちまった。どうしよどうしよ。

 俺の動揺とは裏腹に、返答が書き込まれていく。


【世界が滅ぶというテーマを扱った作品は、フィクションの中でも比較的多く存在します。以下にいくつかの例を挙げますが、注意してください。これらは架空の物語であり、現実世界の予測や願望とは異なるものです。


『地球の最後に』(The Last Man on Earth): この作品は、人類が謎のウイルスによって滅ぼされ、主人公が地球上で最後の生き残りとなる様子を描いています。


『猿の惑星シリーズ』(Planet of the Apes): このシリーズは、地球における人類の崩壊と、サルたちが支配する未来社会を描いています。


『ワーロック』(Warlock): この映画では、魔術師が現代のアメリカにやって来て、人々を混乱させる様子が描かれています。


『28日後...』(28 Days Later): この映画では、ウイルスが広がり、人々を殺す急速な感染症が引き起こされ、社会が崩壊する様子が描かれています。


 これらはあくまで一部の例です。他にもさまざまな作品が存在しますが、それらはフィクションの世界であり、現実の世界とは異なるストーリー展開や設定を持っています。注意深く作品を選び、楽しむ際にはフィクションであることを認識することが重要です。】


 あら、ちゃんと返答くるのね。この辺はさすが人工知能というところか。


 〝隕石は?〟


 妹が横から書き込む。横っ端から器用にタイプするな、コイツ。


【隕石(いんせき)は、宇宙から地球に落下した岩石や金属の塊を指します。隕石は、宇宙空間での天体の衝突や爆発によって形成され、地球の大気を通過して地表に到達することがあります。


 隕石の起源は、主に以下の3つのカテゴリに分類されます。


 1.小惑星からの隕石(アステロイド隕石): 小惑星とは、太陽系内の惑星軌道にある小さな天体のことです。小惑星が衝突や破壊されることによって生じる岩石の塊が、小惑星からの隕石となります。


 2.彗星からの隕石(コメット隕石): 彗星は、太陽に近づくと氷や岩石からなる核が熱膨張し、ガスと塵の尾を形成する天体です。彗星が太陽に接近する際に破壊されることで、彗星からの隕石が生じます。


 3.火球(メテオール)からの隕石: 火球は、地球の大気圏に突入する際に発生する明るい光の球であり、一般的に「流れ星」として知られています。火球が地球の大気圏で分解し、地上に落下する際に隕石として残ることがあります。


 隕石は、地球に落下する際に様々なサイズや形状を持ちます。一部の大きな隕石はクレーターや地形の変化を引き起こすことがあり、歴史的な衝突イベントと関連付けられることもあります(例:恐竜絶滅の原因となったチクシュルーブ衝突など)。


 科学者や研究者は隕石を研究し、地球外の物質や太陽系の形成や進化に関する貴重な情報を得ることができます。また、隕石は美術品や宝石としての価値もあり、コレクターによって収集されることもあります。】


 火球(メテオール)!

 やべぇ、ちょっと言葉の響きに心が震えたぞ。俺の心の必殺技コレクションに加えておこう。


『隕石が人類滅亡できるのか、ではなく隕石自体の返答になってるみたいですね』

「なんか融通利かんなぁ。誰かさんと一緒」


 こっち見んな。俺だってお前にだけは言われたくないぞ。

 妹も飽きたのか、緑茶をすすって一息つく。


「はー、おちつくわー」


 ……わかる。


『全面的に同意します』


 初めて、三人の意見が一致した。

 我々は時間が経ってちょうどよい温度の緑茶をすすり、和やかなひと時に身を任せたのだった。


 * * *


『ChatGPTが提示した作品について調べてみてはいかがでしょう?』


 一息ついての2号さんからの提案。

『地球の最後に』『猿の惑星シリーズ』『ワーロック』『28日後...』

 この中だと猿の惑星が名前だけ聞いたことあるな。


GPTジピットくんには聞かないの?」

『ネットで検索してみましょう』

「AIに聞く方がラクじゃね?」


 パパっとクリーナーして、シャシャッと早書き。前回みたく毎度毎度フリップを出すよりかはいくらかはマシだとは思うが、なんともなぁ手間のかかることで。


『世界を滅ぼすためにはより多くの意見を集約させる必要があるのです!!』


 めっちゃババーンと力の入った描き文字だった。

 とりあえず『地球の最後に』から検索してみるか……。


 〝地球の最後に〟


 ……。

 …………。

 ………………あれ?


 〝猿の惑星シリーズ〟


 ……こっちは例を挙げるまでもなく出てくるな。


 〝ワーロック〟


 これは……んん? この映画では魔術師が現代のアメリカにやって来て、人々を混乱させる……。1959年と1989年の2つがあって、……なんかどっちも世界が滅ぶわけではなさそうだな。


 〝28日後...〟


 これは2002年のイギリス映画、か。ウイルスでうんたらかんたらの定番もの。

 人間を凶暴化させるウイルス……ねぇ。実際はウイルスに感染してない人間が狂暴化してる気がするんですが、まあそれは俺には関係ないな。


「地球の最後に」は「The Last Man on Earth」。……こっちで検索してみるか。

 主人公が地球の最後の生き残り……。果たしてこの先生きのこれるのか。

 謎のウイルスによって滅ぼされた……。あれぇ?


「どうしたの、あにぃ」


 妹が俺をのぞき込んでくる。


「んー……」

「出てこないの? GPTジピットくんに聞いたらどうなん?」


 あ、その手があったか。

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