◆◆ 004 -憤怒の妹はAIに魂を吹き込みたい-(3/4)◆◆

 〝部屋の中でできるおすすめの運動を教えてください〟


【部屋の中でできるおすすめの運動は、以下のようなものがあります:


 ジャンプ・スクワット:立ってからジャンプして、着地時にスクワットのポーズをとる運動です。脚の筋力を鍛えるのに効果的です。


 腕立て伏せ:床に手をついて体を支え、胸を床まで下げて戻す運動です。上半身の筋力を鍛えるのに役立ちます。


 腹筋運動:仰向けに寝て、腹筋を使って上半身を起こす運動や、脚を持ち上げる運動などを行います。


 ヨガ:ヨガのポーズを行うことで、柔軟性やバランスを改善し、ストレスを軽減することができます。


 ダンス:音楽をかけて自由に踊ることで、全身の運動や心身のリフレッシュができます。


 ステップ運動:段差やステップ台を使って有酸素運動を行います。心肺機能を向上させるのに効果的です。


 ストレッチ:身体を伸ばして筋肉をほぐすストレッチは、運動前や運動後に行うと良いでしょう。


 ジャグリング:ボールや小道具を使ってジャグリングをすると、手の動きや集中力が向上します。


 これらの運動は、部屋の広さや環境をあまり気にせずに行えるものばかりです。運動は身体の健康を保つだけでなく、創造性や集中力を高めるのにも効果的です。執筆の合間にちょっとした運動を取り入れることで、リフレッシュしてより効果的な執筆ができるかもしれません。】


『上半身、下半身、全身運動と一通りリストアップしてくるんですね』

「うちはこん中だとストレッチ、ジャグリングぐらいなんかな。スクワットとか腕立てはそれだけで疲れてまうわ」

『指先、足先の末端部分が血行よくなるといいかもしれません』


 私は運動がてら、考え事をしている兄の頭を拳で挟み、こめかみを拳でぐりぐりした。


「あだだだだだ!」


 ふん、人を放っておいて物思いにふけっとるからやで。


『聞いていた通り、からあげにゆずコショウのように仲の良いお二人ですね』


 さすがにそれは初めて聞く組み合わせ。確かに相性はよさそうではあるけども。

 あにぃも初めて聞く組み合わせなのか、微妙に反応に困っていた。


『私の一押しの組み合わせですから、一度試してみてくださいね。絶対ハマりますから!』


 ずいっと電子パッドに書いた文字とともに押し迫る黒子さん。

 私とあにぃは否定するのも何かマズい気がしたので、とりあえずうなづいておいた。


 * * *


 俺は改めて冷たい(だいぶぬるくなった)ルイボスティーで喉をうるおす。


「で、擬人化計画って何をしようってんだ」


 俺は妹を問い詰める。さっきギリギリされたこめかみがまだ痛むからではない。

 時々、妹は突拍子もないことを言い始める。小説家になろうとか。

 だから俺は兄の務めを果たすべく、きちんとしっかりと、妹が何を成そうとしているのか確認しなければならない。


「うちはGPTジピットくんに魂を吹き込みたいねん」

「ChatGPTってただのAIだろ? そんなもんに魂を吹き込んでどうしようってんだ」

「だってかわいそうやん。ただのAIなのにみんなから世界を滅ぼすだの、間違いばっかり繰り返す役立たずだの、GPTジピットくんは一生懸命、うちらに訊かれてることに答えてくれてるだけやんか」


 ……お前、そのGPTジピットくんに世界の滅ぼし方を訊いてなかったか?


「じゃあ、実際に魂を吹き込むって何をどうすんだよ」


 あきれ半ばの俺はルイボスティーを口に含む。


「うちがGPTジピットくんのイラストを描いていこうと思うんよ」


 そして、吹き出した。


「なんや、失礼やな」


 妹が口を尖らせる。ゲホゲホとせき込む俺。


『ほんと失礼ですね。今はAIも絵が描ける時代だというのに』


 黒子も俺を責め立てる。くそ、前回の二号さんならきっと吹き出した俺の周りを拭いてくれただろうに。今回の黒子は妙に態度が冷たいよな。傍観者っていうか。


「そうやってAIAIって。そのうち自分ひとりの力じゃ何もできなくなっちまうぜ」


 俺は吹き出した周りをティッシュで拭き取りながら答える。


「文章だって絵だって紙の上で描くものだろ。画面上にしか存在しないものよりも、もっと現実に存在するものを大事に生きろよ」


 どうだ、良い事言っただろ。


「あにぃ……」

『残念ですが今の世の中はデジタル社会ですよ』


 妹と黒子の憐みの視線。黒子は例のごとく覆面マスクで目線が見えないけども。


「あにぃ、残念やけど今はもう小説もイラストも全部デジタル処理。パソコンで描くものやで」

『まあ紙で描いてる人もいないではないと思いますが、極々一部でしょうね』

「ていうか、今まさにその電子パッドをあにぃが使ってるやん。便利やろ」


 今日のコンビ打ち、ひどくない?


『今の世の中、ほとんどニュースはスマホでしょう?』

「だいたい現実に存在しないって、そんなんテレビも一緒やん。画面の向こうにしか存在しない。それがネットになってスマホで見る形に変わっただけやん。自分が付いてこれないからって屁理屈やめぃや」


 こいつら、申し合わせたかのように責め立ててきやがる。


「じゃあその擬人化のイラストとやらを見せてみろよ」


 俺は知っている。自慢じゃないが俺の妹は絵がヘタだ。どうせ小学生のノートの隅っこの落書きレベルのものをGPTジピットくんでーす。って差し出すに決まってる。


「はい」


 妹は俺の前にスマホを差し出す。

 ちらりと画面を見ると、スケボーに乗った少年の画像。……え、これ何? フルカラーで片足でスケボーを受け止めて、ってうまくない?


「どや、驚いたやろ。AIに指示して描いてもらったんやで」

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