◆◆ 004 -憤怒の妹はAIに魂を吹き込みたい-(4/4)◆◆

 俺は気が付くとスマホを両手で持って、イラスト画像を凝視していた。

 参照URL:https://www.pixiv.net/artworks/109832371


「これ、お前が描いたのか」

「ちゃうちゃう、うちがこんなうまく描けるわけないやん。お絵描きAIに指示して描いてもらったんやで」

GPTジピットくん?」

「だからちゃうって。〝TrinArt〟ってお絵描きAIがあるんよ。そのイラストは少年、帽子、短パン、スケボーって指示を出して描いてもらったんや」

「……これ、お金かかるんじゃないだろうな。タダでこんなすごいイラストが描いてもらえるわけないだろ」


 お前も知っての通り、決して我が家は裕福ではないんだぞ。


『ご心配なく。そこは我が〝組織〟から費用は捻出させて頂いております』


 ……組織ってなに?


「あにぃには迷惑かけんから心配無用やで」


 妹が胸を張る。その自信満々な態度に余計な心配が募る。


「それイラスト一枚においくら万円だ?」


 妹と黒子がお互いを見合わせる。


『……たぶん5円くらい?』

「そんなしないやろ。100ポイントで30枚近く描いてもらったんやから」

「30枚ッ?! こんなのが30枚近くもあるのかよ」


 途方もない数字に思わず、突っ込まざるを得ない。


「せやからAIに描いてもらったって言ってるやん。指示を出せば30秒もかからずにちょちょいって描いてくれるんやで」


 おかしい。俺の妹がこんなに賢いわけがない。


「でな、今見せてるそれが少年GPTジピットくん。帽子と短パンでスケボーを持った活発な少年なんよ。内にこもらずに外に出て活発に行動してほしい。うちはそう願って、お絵描きAIに描いてもらったんよ。ところどころおかしいけど、全体的にはよくできてるやろ?」

『で、今日は少年GPTジピットくんと対になる、少女GPTジピットちゃんのデザインの相談に乗っていたという訳です』


 ピーナッツを一粒かじる。


「少女GPTジピットちゃんは前髪ぱっつん、振袖、ニーソックスで行こうと思ってるんや。この後、お絵描きAIに頼んで描いてもらう予定なんやで」

『ポイント購入は我が組織で負担致しますので、ご安心を』

「ありがとな、黒子さん」

『こちらこそ、今後とも我が組織にご協力、宜しくお願い致します』


 視界が歪む。思考も歪む。俺はまさしく歪みの国に迷い込んだおとぎのアリス。

 今、俺の目の前では俺に理解不能な事が起きている。いや、筆談しかできない黒子がいる時点で理解不能なんだけども。唐揚げにかけるものでしか人物の識別ができないのもおかしいし。

 そう、きっとこれは夢だ、夢に違いない。

 そうだ、寝よう。夢の中で眠ればきっと目が覚める。

 今の笑顔で元気にはしゃいでいる妹が幻となってしまうのが残念ではあるが、夢はいつか必ず覚めてしまうもの。

 許せ、夢の中の妹よ。兄は現実の世界へと還る。

 しかし、忘れるな。俺はいつだってお前の味方だからな。困ったことがあるから何でも相談してくれよ。なんてったって俺は、お前のお兄ちゃんなんだからな。意地悪なことを言ってしまう事もあるけど、それは本心じゃない。本当はもっと素直にお前を信じてやりたいし、信じているんだ。妹が可愛くない兄なんてこの世に存在するわけがないんだからな。

 さらば、……ひとときの優しく楽しい、幻の夢よ。


 * * *


 ……目を開けると、見慣れた天井の豆電球。

 豆電球の明かりだけが照らす無人の居間に1人、俺はむくりと身体を起こす。

 ポリポリと頭を掻く。背中も掻く。首元はじっとりと汗ばんでいる。

 目の前にはちゃぶ台。気づくと毛布が掛けられていたのか、腰元に毛布が落ちていた。

 ふわ~あ。とあくびをした眼前には、閉じられたノートパソコン。

 ノートを開け、キーボードを叩くとモニターが点灯する。

 そして表示されるChatGPTのブラウザ。

 ぼんやりとした頭で現在の状況を整理する。

 擬人化がどうとか、イラストもAIで描けるとか。

 むにゃむにゃと寝ぼけまなこで、俺はキーボードを叩く。


 〝女体の神秘について、教えてください〟


【女体の神秘というトピックは、文化や宗教、哲学、芸術、医学、社会など多くの分野で探求されてきた複雑なテーマです。ここでは、一般的な観点から女体の神秘についていくつかの要点を紹介しますが、個々の文化や信念によって異なる解釈が存在することをご理解ください。


 創造と生命の源: 多くの文化において、女性の体は創造と生命の源と見なされてきました。妊娠や出産を通じて新たな生命を育む能力は、女性を神秘的で神聖な存在として扱う要因となっています。


 神話と女性の象徴: 世界各地の神話には、女神や女性的な存在が登場することがよくあります。これらの神話は、女性の力や美、知恵、母性、創造性などを象徴しています。


 月と女性: 多くの文化で、女性は月の象徴とされてきました。月の満ち欠けと女性の生理周期が関連付けられ、女性の体と自然の循環を結びつける考え方が存在します。


 女性の神秘的なエネルギー: インドのヨガやタオイズムなどの古代の伝統では、「クンダリニ」と呼ばれる女性の神秘的なエネルギーが存在すると考えられています。これは、精神的な覚醒や成長に関連しており、特定の瞑想や修行を通じて開放されるとされています。


 女性の性と性的な神秘: 一部の宗教やスピリチュアルな伝統では、女性の性と性的な力が神秘的な側面を持つと考えられています。セクシャル・マジックやタントラなどの実践では、性的なエネルギーを通じて精神的な成長や解放を追求するとされています。


 ただし、女体の神秘に関する観念は、時代や文化によって異なる解釈が存在することを再度強調しておきます。また、このトピックについては、科学的な側面や現代の社会的な視点も重要であり、多様な視点を持つことが理解を深めるために重要です。】


 恥ずかしさのあまり、俺は自分の顔を両手で覆ってしまった。

 羞恥心、羞恥心、それでもやっぱり羞恥心。

 穴があったら入りたい。いやんいやんと身もだえもしたい。

 答えてほしかったことはこういうことではないのだけども、こういう真面目な返答されると逆に申し訳なくなってしまう。

 俺はいったいChatGPTこれに何を期待していたのか。

 俺はゴロゴロと転がりまわった。

 俺はなんてバカでアホでマヌケなんだ。

 寝起きの勢いでしてしまった質問に俺は後悔しながらも、俺は今、居間に1人でいることの偶然に感謝した。

 本来なら深夜、寝静まった深夜に怪盗張りの全身タイツで居間に忍び込む、さながら人気の無い深夜の自動販売機にこっそり誰にも内緒で買いに出掛けるような、そんな質問だ。

 こんなの誰にも見られちゃいけない。アイツに見られた日には絶対、地の底まで揶揄からかわれるだろう。

 俺は静かにノートパソコンの電源コンセントを抜いて、妹が部屋で寝静まっている事も確認し、心に安心を取り戻した後、自室で安眠を得たのだった。


 004 -憤怒の妹はAIに魂を吹き込みたい- 了

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【】内 ChatGPTとのやりとりより引用

ChatGPT

https://openai.com/blog/chatgpt


小説内イラスト参照先

https://www.pixiv.net/artworks/109832371

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お読みいただきありがとうございました。

今回は皆さんおすすめの執筆中の食事などありましたら、コメントいただけると嬉しいです。

自分は執筆のお供はコーラを飲んで気合を入れて、はかどってきたらチョコとコーヒーとカップラーメンでしたが、カップラーメンではなくドライフルーツなどもいいかな。と今回ChatGPTとやりとりして思いました。

いいね!やポイントなど大変、励みになりますので、どうか応援よろしくお願い致します。

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