◆◆ 002 -強欲な妹は知識を求める-(2/4)◆◆

 ChatGPT


 モニターに映っているブラウザの表示。

 周りには日本語ではない文字が表示されており、生まれてこの方日本生まれで外国語に興味がない俺には唐揚げにレモンをかけて食べるかのようにさっぱりだった。

 だがChatGPT自体は前回、確か検索結果に出てきてたような。


『画面下のSend A Messageの欄に質問を書き込んでみてください』


 トンと黒子のフリップ。


「なんて聞けばいいんやろ?」


 妹の問いかけ。


「君のことが知りたい。でいいんじゃね」


 俺はやれやれ、と麦茶でくぴぴと喉を潤す。

 妹のカタカタとタイプ音とエンタータイプ。


〝君のことが知りたい〟


 ……ほんとに打ちやがったぞ、こいつ。

 やがて音も無く文字がパパパと表示され始める。


【私はChatGPTとして知られるAIです。私は自然言語処理の技術を使って様々な情報を提供することができます。具体的に何について知りたいですか?】


 え、ほんとに返事が返って来た。驚きのあまり、妹も俺の顔を見た。

 続いて瞬時に返事の続きが書き込まれていく。


【私のプログラムは、一般的な知識、科学、技術、歴史、文化、エンターテイメントなどのさまざまなトピックについて情報を提供することができます。どのような質問や話題に興味がありますか?】


 妹は瞬時に質問を書き込む。


 〝小説の事〟


 そして瞬時に問いかけの返答。


【小説についてお聞かせいただけますか?具体的にどのような情報をお求めですか?小説のジャンルや作家、特定の作品についてお知りになりたいのでしょうか?お伺いできる範囲でお答えしますので、詳細を教えてください。】


 俺も妹も思考が止まる。なにこれ、しゅごい。おもわず脳内で幼児言葉になった。


『いかがですか? これが対話型AI「ChatGPT」です』


 黒子のフリップがトンと置かれる。

 頭巾の向こうはドヤ顔に違いない。だが、そうしたくなる気持ちもこれなら充分に理解できる。


「これは何を聞いても答えてくれるのか?」

『公序良俗に反しない一般的な質問なら大抵は答えてくれると思いますよ』


 カタカタカタ。

 妹は黒子の返事も待たずに、質問を問いかける。


 〝うち、小説家になりたいねん〟


 なんで関西弁?

 それはともかく続いてChatGPTの返答。


【素晴らしいですね!小説家になりたいという夢をお持ちなのですね。小説家になるためには、いくつかのステップや考え方があります。以下に、小説家になるための一般的なアドバイスをいくつかご紹介します。】


 形式的と言えば形式的だが、会話がほんとに成り立つんだな。

 そんな事を考えている間にもChatGPTはアドバイスをモニター上に書き込んでいく。


【1.読書を積極的に行う:優れた小説家になるためには、多くの作品を読むことが重要です。さまざまなジャンルやスタイルの小説を読み、様々な作家の手法に触れることで、自身の創作に影響を受けることができます。


 2.創作活動を継続する:小説を書くためには、日常的に創作活動を継続することが大切です。時間を確保し、定期的に執筆に取り組むことで、執筆スキルの向上やストーリーのアイデアの練り込みができます。


 3.批評を受け入れる姿勢を持つ:自分の作品を客観的に評価することは難しいかもしれませんが、批評を受け入れる姿勢を持つことは成長につながります。フィードバックを受けたら、建設的な要素を見つけ出し、自身の執筆スキルの改善に活かしましょう。


 4.プロのアドバイスを求める:小説の執筆や出版に関するプロのアドバイスを求めることも役立ちます。執筆ワークショップやクリエイティブライティングのコースに参加したり、作家や編集者との交流を持つことで、より専門的なアドバイスを得ることができます。


 5.忍耐力を持つ:小説家になる道は容易ではありません。成功するまでには時間と努力が必要です。挫折や困難に直面しても、忍耐力を持ち続けることが重要です。継続的な努力と自己啓発を通じて成長し、目標を追い求めましょう。】


 正直なところはよくわからんが、真剣にメッセージを追っている妹の顔は真剣だ。こいつもこんな顔ができるんだな。


【これらは一般的なアドバイスですが、個人のスタイルや目標に応じて柔軟にアレンジしていくことが大切です。自身の作品を信じ、情】


 ……情?


「おい、これって?」

「まさかメッセージが途中で止まった?」

『続きをお願いしてみましょう』


 は? なんだそりゃ。

 俺はあっけにとられるも、妹はメッセージを打ち込む。


 〝続きをお願いします〟


 馬鹿な、我が妹が進んで敬語でお願いするだと……。


【自身の作品を信じることは非常に重要です。自分の独自性や個性を表現することで、他の作家との差別化を図ることができます。以下に、さらなるアドバイスを提供します。


 6.キャラクターやプロットの開発:小説を書く際には、魅力的なキャラクターや興味深いプロットを考えることが重要です。キャラクターの内面や目標、葛藤を描写し、読者に感情移入させることができるように心掛けましょう。また、緻密なプロット構築や物語の展開にも時間をかけることが必要です。


 7.ライティングスキルの向上:執筆スキルを磨くことは、小説家として成長するために欠かせません。文章の構成や文体、語彙の使い方などに注意を払い、読みやすく魅力的な文章を作り上げるよう努めましょう。ライティングのテクニックや文学の基礎知識を学ぶことも役立ちます。


 8.出版の道を模索する:小説を完成させたら、出版の道を模索しましょう。出版社に原稿を送ったり、自費出版や電子出版の方法を考えることもあります。出版に関する情報や業界の動向を把握し、自身の作品を適切な形で読者に届けるための戦略を考えましょう。


 9.ネットワーキングとプロモーション:作家としてのキャリアを築くためには、ネットワーキングやプロモーションも重要です。作家仲間や業界関係者との交流を通じて情報やアドバイスを得たり、自身の作品を広めるためのオンラインやオフラインのプロモーション活動に積極的に参加しましょう。


 最後に、小説家になるための道のりは人それぞれ異なります。成功の定義やスタイルも個人によって異なるものです。自身の目標や情熱を持ちながら、地道に努力を続けてください。創作の喜びを大切にしながら、夢を追い求めることが大切です】


 ……え、マジで続きなのか?


『これは無料版なのでさっきは文字数か何かで引っかかったのでしょう』

「やり取り自体はちゃんと覚えてくれているってことなんやな?」


 ……それって逆にすごくないか?

 俺は自分の口が開いたままなのにも気づかず、ただ茫然とするしかなかった。


『これがAIチャットというものです』

「まるで人間と会話してるみたいやん。こんなにちゃんと答えてくれるとは思わんかったわ」

『他の話題を訊いてみましょう』


 間髪入れずに黒子のフリップ。あらかじめこの流れを想定していたのか。


「あにぃ、何を訊く?」


 俺はうーんと頬杖をつく。いきなり訊かれてもポンと出てくるわけないだろ。

 俺の様子を見て取った妹がカタカタカタとキーボードを叩く。


 〝兄に訊いても聞きたいことを答えてくれません。どうしたらいいですか?〟


 こいつ……。

 妹はイタズラ笑顔でべーっと俺に舌を見せた。

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