第39話 帝国と王国
これは、ヒビキたちがナバラム聖王国への護衛任務に向かうために旅立ったの頃のお話です。
(ユーザリア帝国)
アルスガルド王国の南側に位置する大国、ユーザリア帝国。ユーザリア帝国においては、微かな波紋が徐々に拡大し、その勢いはますます大きくなりつつありました。未曾有の大波が押し寄せる前触れを感じさせる、そんな予感が漂っていたのです。
「宰相、アルスガルド王国に宣戦布告することについては、どのように考えているか?」
「陛下、アルスガルド王国は豊かな大地を持ち、食料の自給率も高いため、私たちが求めているものを持っています。しかし、彼らは我々との貿易交渉を断ったため、我々は彼らとの関係を修復することができません。」
「貿易交渉を拒否されたとは、これは大きな問題だ。しかし、それだけでは理由が不十分だ。何か他にあるのか?」
「はい、陛下。アルスガルド王国は、我が国や領民に対して、目に余る悪事を働いている様です。彼らは我々の領土に押し入り、領民を攻撃し、更には領民を攫いました。この行為は、我々の尊厳を傷つけるものであり、決して許すことはできません。」
「そうか、それは許せない。我々は彼らに報いなければならない。では、どのような作戦を考えているか?」
「はっ。それでしたら、今回の件の立案者であるキテマラ侯爵に説明させましょう。キテマラ侯爵、どうぞ。」
「キテマラ侯爵でございます。陛下、発言をお許しください。我々ユーザリア帝国は、食料自給率が低く、確保が困難な状況にあります。一方、アルスガルド王国は豊かな土地と高い自給率を持ち、長期戦になると我々が不利になる可能性があります。しかしながら、彼らは我々のような軍事力を持っておらず、守りに専念してきました。そのため、我々は高い軍事力を活かして攻撃し、彼らの領土を短期間に制圧することで勝利を手に入れることができるでしょう。」
「キテマラ侯爵。ご苦労であった。非常に良い考えだ。それでは、アルスガルド王国への宣戦布告を決定しよう。我々は彼らに教えてやる必要がある。」
――――
(アルスガルド王国)
アルスガルド王国においては、ユーザリア帝国からの宣戦布告によって王宮は深刻な混乱状態に陥っておりました。高官たちは相次いで情報収集を行い、軍備を整える一方、一般市民は不安を募らせ、王国の安寧を祈りつつ、自らも行動を起こすことを余儀なくされていたのです。
「大臣。一体どういうことだ。何故帝国は、突然我々に宣戦布告をしてきたのだ。確かに友好国の関係にはないが、紛争に発展するような問題など無かったはずだ。」
「陛下の仰る通りです。しかし、帝国は次の理由で宣戦布告をしております。これより、帝国から届いた書状を読み上げます。」
《 アルスガルド王国 国王陛下殿 》
我々は、以下の理由で貴国と刃を交える決断をした。
一つ、我々の友好的な貿易交渉を貴国が一方的に断ったこと。
一つ、アルスガルドが我々の領土に侵入し、領民に攻撃し、領民を攫ったこと。
一つ、我が王宮に侵入した間者の持っていた武器にアルスガルドの紋章が入っていたこと。
これらにより、我々の尊厳は深く傷つき、容赦ない怒りに満ちている。よって、神の声に従い我々は立ち上がることを決意した。
「以上でごさいます。」
「何だと!?これは事実無根ではないか?このような話は聞いたことがないぞ。」
「仰る通りでごさいます。貿易や襲撃、間者に関する全ての内容が偽りであると考えます。」
「では、使者を向かわせ、事実と異なることを弁明させよ!」
「我々の国の使者であるロッカーは、すでに帝国に向かい、我々の国の無実を訴えましたが、捕縛されてしまいました。ロッカーの安否は、現在も確認されていません。」
「何ということだ。一体帝国は何を企んでいるのだ。」
「恐らくは、それらしい戦争の理由を掲げて領民の支持を取りつけ、我が国を攻め入る口実としたのでしょう。我々の国とは違い、帝国は貧弱な大地が原因で作物が十分に育たず、食料危機に瀕しているとのことです。したがって、彼らが狙うのは、我々の領土であると考えられます。」
「なるほど、彼らは侵略を企てていると言う訳だな。勝てる見込みはあるのか?」
「軍事力に関しては、帝国の方が私たちの国よりも優位に立っていますが、帝国側は食料危機に陥っています。もし長期戦になれば、私たちの国が有利になる可能性があります。」
「うむ…。では、帝国に我が国の力を見せつけてやろうではないか。軍隊に戦争の準備を命じよ。また、貴族たちを直ちに召集して作戦会議を開始する。」
こうして、双方の国は対話による解決を選ばず、武力による解決を目指すことになりました。
ヒビキは戦争が勃発したと聞かされ、今後どのような関わり方をすることになるのでしょうか?
―――― to be continued ――――
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