第32話 古代遺跡①

 俺は、探索アプリで遺跡の新たな入口の様な所を発見した。ジュリアに頼んで、考古学者のダニーさんを連れて来て貰うことにした。


「俺は、念の為に戦姫を顕現しておこうかな。」


「北条 響が命ずる!戦姫イーナエスタ。前へ!」


「はい!」


 俺の掛け声に反応して、イーナがスマホ画面に表れる。俺はイーナの存在を確認して指示を与える。

 

「顕現せよ!!」


 俺の合図と同時に、スマートフォンの画面からイーナの姿がスッと消え、スマートフォンから多数の光粒子が放たれた。散乱していた光粒子が一つにまとまり、やがて大きな光となり、イーナの形が浮かび上がっていった。


名前 イーナエスタ ( イーナ )

年齢 21歳

種族 人間族

ランク R ( レア )

ジョブ 聖騎士

レベル 125 (MAX)

HP 750

MP 510

AT 750

MAT 530

DEF 670

MDEF 650

DEX 705

INT 610

AGI 685

スキル ホーリースラッシュ

説明 白銀の鎧を身に纏う騎士。片手剣と盾での戦闘が得意である。見た目は、精悍な騎士だが、おっちょこちょいな一面を見せることがある。

 

「イーナ参りました!」


「ありがとう。イーナ。宜しく頼むよ。」


 イーナとしばらく待っていると、ジュリアがダニーさんを連れてやってきた。


「あれ?ヒビキ様。この方は?」


「彼女は、戦姫のイーナエスタだ。俺達の護衛をお願いした。」


「この方が戦姫…。ジュリアです。よろしくお願いします。」


「イーナと呼んでくれ。こちらこそよろしく頼む。」


「僕は、ダニーだ。おお。これが入口か!?良く見つけたね?そう言えば、この辺は瓦礫の集積場だった様な…。」


「そうでしたか?まあ、いいじゃないですか。ダニーさん。進みましょう。」


 新たに発見した場所に立つと、扉は掛かっておらず、下に続く階段だけが見える。内部は薄暗く、未知の領域が広がっているかのように不気味だ。


 イーナにランプを手渡し、俺たちは階段を降り始める。イーナが先導し、俺はスマホのライトで足元を照らしながら進む。ジュリアとダニーさんは最後尾についた。


 思ったよりも長く、深く地下へと続く階段。まるで未知なる世界に足を踏み入れたような不思議な感覚が漂っていた。


「あっ、先の方に光が見えるわ。」


 階段を降りた先には、見知らぬ地下フロアが広がっていた。


「これは、非常に素晴らしい!そして、何という広さなんだ!」


 ダニーさんは、終始感動している。


 地下フロアに広がる空間は、まさに無限にも感じるほどの広大さだった。床や壁、天井に至るまで、堅牢に固められ、崩れ落ちることのない強度を保っていた。周囲には、何の装飾や彫刻もなく、その存在意義はまったく謎に包まれている。それでも、何かを期待しているように、俺たちは足を進めていく。


 フロアの照明は、壁に均等に配置されたライトによって照らされていた。充分な光量が保たれ、そこにいることができる快適さをもたらしていた。


(ここが、古代遺跡なら、当時からずっと灯りが消えていないことになる。この光の元になるエネルギーは何なのだろう?)


「この光は、魔道具なのだろうか?古代よりずっと付いているとすると、仕組みはどうなっているのだろう?凄い!凄すぎるよ。」


 どうやら同じことを考えている人間がここにもいたらしい…。


「ヒビキ君!これを見てくれたまえ!」


 俺は、ダニーさんの指差す方に視線を送る。前世で言うロボットとの様な物が床に横たわっている。


「上で見た絵を覚えてるかい?あれは、これのことだったのかも知れないね。」


「ああ。確かに似ていますね。」


 俺は、鑑定アプリを起動して、この物体について調べてみることにした。


名前 作業型カラクリット

説明 この地下施設を維持する為に造らた、サポート機械。現在は、動力の魔力切れで動作停止中。


「これは、カラクリットと呼ばれる機械だそうです。この地下施設を維持する為に造られているみたいですね。今は、動力の魔力切れで動作を停止しているようです。」


「ということは、魔力を補充できたら動くのではないか!素晴らしい!素晴らし過ぎるよ!」


「団長!このオッサン、ヤバくないですか?」


「シッ!イーナ!」


「ははは!ごめんごめん!凄い発見ばかりで興奮してしまったよ。」


「ダニーさん。こちらこそ、なんかすみません。」


 俺は、必死にフォローする。


 俺達は、更に奥へと進んだ。地下フロアは、本当に広い。既に500mは進んだと思う。一体どれ程のスペースがあるのか。マルロムの避難場所にも使えそうだなと思った。


「ヒビキ様。何か来ます。」


 視力の高いジュリアは、何かを見つけたようだ。確かに何かがこちらに近づいているようだ。


「お客様、いらっしゃいませ!」


 先程見たカラクリットとは別のカラクリットが声を発した。


「素晴らしい!声を発する機械など見たことがありませんよ。これは大発見ですよ。」


「ここは、ナバラム帝王国の避難場所です。」


「ナバラム帝王国?」


「ええ。確かに聖王国は、かつては帝王国と呼んでいた過去があると歴史書でも見ましたよ。では、ここはやはり…。」


「お客様は、どうしてこちらに?」


 カラクリットは、疑問系の時にちゃんと首を傾げている。


「我々は、かつての帝王国の子孫に当たる人間です。偶然この場所を見つけたので、調査しに来たのですよ。あなた以外には誰かいないのですか?」


「対話型のカラクリットは、私だけです。後は作業型カラクリットとガーディアン型カラクリットがいます。」


「人間は、居ないのですか?」


「全員、天寿を全うしました。」


「そうですか…。この施設内を案内して頂けますか?」


「はい。かしこまりました。」


 対話型カラクリットは、軽やかな音を立ててクルッと向きを変え、奥深くへ進み始めた。その滑らかな動きは、まるで人間のように自然でありながら、その構造は一見すれば、前世で言うところのロボットそのものであった。しかしながら、その精巧な対話能力や思考機能、運動機能の高さは、明らかにかつての技術者たちの驚異的な才能の結晶であることがうかがえる。


 彼らの手によって作り出されたこの驚異的な存在は、今や滅んでしまったかのように消え失せてしまった時代に生み出されたものである。そして、その彼らの技術は、今では「ロストテクノロジー」と呼ばれる、失われた技術となってしまった。


しばらく進むと、対話型カラクリットは、静かに停止した。


「ごめんなさい。ガーディアン型カラクリットがお客様を誤認識しました。敵と見なしてしまった様です。私が説明しますが、念の為退避して下さい。」


 200m程先に見えるカラクリットが動き始めた。対話型カラクリットととは形が異なっており、戦闘に特化した機械に見える。


「ジュリア!ダニーさんを連れて逃げて下さい。ここは危険です。」 


「でも…。」


「行きなさい!」


―――― to be continued ――――

 

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