第31話 聖王国 王都マルロム②
王都マルロムに滞在して2日目。
昨夜は、ジュリアと同室で過ごした。言ってみれば、食事の合間にベッドが運ばれ、別々のベッドで眠ることになったため、ロマンチックな展開には至らなかった。しかしながら、美しさとスタイルの良さで目を引くジュリアという存在を意識しない方が無理だろう。それでも、彼女と過ごす時間を理性的にコントロールできていたようだ。
「…様。ヒビキ様!」
「ん?ああ。ジュリアか。おはよう!」
「ヒビキ様。おはようございます。」
俺は、ジュリアの声で目を覚ます。寝る時も、起きる時もいつも1人きりだった俺にとって、今まで経験したことの無い朝を経験した。
(誰かに起こされる朝も悪くないな。)
俺達の一日が動き始める…。
我々二人は、都市の散策を決めた。今日は、マルロムの大教会を訪れ、その壮大な建築物や、豊かな歴史を誇る女神像を拝観することになっている。その後は、名所として有名な古代遺跡にも足を伸ばす予定だ。
(マルロム大教会)
マルロムの大教会は、礼拝のために多くの人々が訪れ、ホール内は静寂に包まれながらも、躍動感に溢れている。背の高い天井は、かつてジョブ神殿が立ち並んでいたことを思わせる。美しいステンドグラスや、緻密な彫刻が施された建物や壁は、神秘的な雰囲気を纏い、大教会にふさわしい気品と威厳を醸し出していた。
そして、この大教会の中心に鎮座する女神像は、教会の象徴として、微笑みを浮かべ、人々に平和と慈悲を授けているように見えた。その瞳は、見る者を優しく包み込み、心に安らぎを与えてくれるかのようだった。
俺達は、女神像の前で、お祈りを済ませてから大教会を後にした…。
――――
( マルロムの古代遺跡)
この場所は、古代ナバラム城や城下町が栄えた場所であり、今は古代遺跡として残っている。
現在のナバラム城やマルロム王都は、この古代遺跡から移転して出来たとされている。
遺跡内の建造物はほとんど崩壊しており、保存されているものは数少ない。特別な歴史的価値を持つ建物はないため、一般人に解放されている。
高い建物はほとんど残っていないが、通路は丁寧に手入れされており、整然としている。管理者がいることが感じられるほどだ。風化により瓦礫になっていないのは、遺跡を保護するために丁寧に管理されているからだろう。
「ヒビキ様。ここに絵のようなものか…。」
「本当だね!これは子供か書いたのかな?」
まだ、崩れずに残されている壁には、削って描かれた絵のような物が見えた。人ではないロボットの様な形をした絵のようだ。」
「不思議な絵だろう?」
突然後方から声を掛けられて振り向くと、長身、長髪な男が立っていた。
「普通は、人や動物、花などが描かれていることが多いんだ。それは、とても風変わりな形をしているね。まあ、こわれが人間という見方もできなくはないけどね。」
「人間や亜人ではない、別の何かが存在していたとか?」
「おぉ。君はなかなか鋭いね。僕は、考古学者のダニーと言います。」
「俺は、ヒビキ。こっちは、従者のジュリアです。」
「よろしく。僕は、その別の何かが気になっているのだがね。実は、それらしい物は未だ発見出来ていないんだ。」
「でも、この絵だけでは、他の何かが存在していたという根拠にはならないですよね?」
「もちろんその通りだよ。僕が気になっているのは、あの奇妙な形をした物の絵は、これまでこの遺跡内でいくつも発見されているからなんだよ。」
「なるほど…。」
「ここからは、僕の勝手な予想になってしまうけど、ここは古代遺跡の一部分で、本来は別にある気がしているんだよね。」
ダニーさんの話は、色々と興味を引くような内容であった。きっと、彼はこれまで手掛かりを探し続けて、今の推論に至るのであろう。
「何かお手伝い出来ればいいんですけどね。」
「あはは。ありがとう!気持ちだけ受け取っておくよ。では、僕はこれで失礼するよ。」
ダニーさんは、別の場所を調べに行ったようだ。
(待てよ…。探索アプリを使えば何かわかるかも知れないな。)
「北条 響が発動する。スキル"探索"!」
探索アプリが起動する。
(さて、何て入力するかだが…。)
ダニーさんの話では、今見ている遺跡は一部分で、他にも存在しているだろうと言う話だった。
「それなら…。」
俺は、"発見されていない遺跡の入口"と入力して検索を実行してみた。
Picon!
どうやら検索内容でヒットした様だ。内容を確認する。マップ上では、ここから南西方向に400m進んだ所を示していた。
「よし、ここだ。ジュリア、何だか面白くなってきたよ。行ってみよう。」
「はい、ヒビキ様。」
俺達は、地図を頼りに目的地に移動した。
――
ここは、特に瓦礫が多い場所の様だ。何となく不要な瓦礫をここに集めている様な感じにも見受けられる。落ちた建物の破片や石や岩などが山積みに置かれていた。
「ヒビキ様、ここは?」
「うん。ここに古代遺跡の入口がありそうだよ。ここまで瓦礫の山状態だと、流石に入口は見つからないよね。それでは…。」
「北条 響が発動する。スキル"ストレージ"!」
ストレージアプリを起動する。ストレージは、重量も容量も無制限である。一度瓦礫の山を全てストレージに移動させて、近くの空き地に再び移動させた。
「おお!やっぱり!」
地面に接する様に地面の下へ向かう階段か表れた。階段の先には、踊り場の様な空間があり、ドアの存在も確認できた。
「ヒビキ様!凄いです!えっと、これって…。」
「うん。もしかしたら未発見の遺跡の入口かも。ジュリア。ダニーさんを探して連れてきて貰えるかな?」
「わかりました。」
ジュリアは、大急ぎでダニーさんを探しに行ったのであった…。
―――― to be continued ――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます