第30話 聖王国 王都マルロム①
(ナバラム聖王国 王都マルロム)
遠征6日目。予定より1日遅れたものの、一行は無事に王都マルロムに到着した。
マルロムの大門検閲では、入場者が盗賊などの犯罪者でないか、また違法品が侵入しないように入念にチェックが行われていた。しかしながら、アルマ商会は、その名声に恥じぬ栄誉を誇るだけあり、大門検閲を難なく通過した。
王都マルロムは、王国の首都であるバランと比肩するほどの広大な街であり、その美しい景観は、街全体に活気を与えていた。アルマ商会の目的は、この聖王国における商取引の足掛かりを得ることであり、彼女は王都内の数多くの商家を訪れて回るのだと言う。
「みんな、お疲れ様。往路は、本当にお世話になったね。王都マルロムでの滞在日数は、明日から3日間の予定だよ。」
「明日からの商家巡りは、護衛役をアインさんとゼキさんの2人にお願いすることにしたからね。他のみんなは、観光などして、マルロムを楽しんでね。えーと、宿屋は、"猫のまんま亭"という所だよ。予約や支払いはアルマ商会でしてあるから、私の名前で宿泊してね。」
晩御飯は、みんなで食べようと約束をし、俺とジュリアは、ここでみんなと別れて行動するすることにした。
「団長!ジュリアさんの服は?何か買ってあげなよ!」
「いえ!私は、今のままでも充分ですので…。」
「そうだね。ジュリア、ごめんね。気づかなくて…。それなら俺のストレージから…。」
名前 バトルドレス
ランク R ( レア )
レベル 100 (MAX)
補正値 HP +80 MP +120 DEF +100 MDEF +100
装備スキル 温度調節 防汚
名前 バトルブーツ
ランク R ( レア )
レベル 100 ( MAX )
補正値 AGI +100 DEF +20 MDEF +20
装備スキル 疲労軽減
名前 天使の涙
ランク R ( レア )
レベル 20 ( MAX )
補正値 全ステータス +20
装備スキル 修練の奇跡 (上限50レベル)
俺は、ストレージの中からバトルドレスとバトルブーツと天使の涙を取り出した。
バトルドレスは、見た目も若い女性向けで、薄いグリーンを基色にし、オシャレな形状をしていた。薄目の生地のシャツと、短パンは、装備品の能力としては軟弱に見えるが、魔法の力でしっかりと強化されており、守備の補正値がかなり高い。
バトルブーツも、若者向けなオシャレな形状だが、機能面も優れており、守備や素早さの補正値が向上する。
「天使の涙」という装備品は、ネックレスの形をしている。これは全ての能力を若干向上させることができる優れたアイテムであるが、それが最大の魅力ではない。このアイテムの素晴らしい点は、「修練の奇跡」というスキルである。このスキルを装備していると、僅かな修練でもレベルが上がることができるのである。レベルの上限は50であるが、通常よりも5倍の経験値を得ることができるため、非常に魅力的である。このアイテムはFFWのイベントアイテムであり、所持しているのは5つだけである。
俺たちは、裏通りに行き、人通りの少ない場所で着替えを済ませることにした。ジュリアにはバトルドレス、バトルブーツ、そして天使の涙を手渡した。私は、ジュリアの背中に立って、彼女の着替えが覗かれないように壁役を務めた。
Kasa…Pasa…Shu。
「ヒビキ様。壁になって下さってありがとうございました。着替え終わりました。いかがでしょうか?」
ジュリアは恥ずかしそうに、こちらを見上げた。短めのパンツや、お腹の少し見えるシャツといった露出が多めの衣装であるが、彼女の背中には同色のマントが見事なバランスを作り出し、妖艶さというよりは、洗練されたオシャレさと可愛らしさを兼ね備えている。その姿には、何とも言えない魅力があった。
「おぉ!凄くいいね。良く似合っているし、とても可愛いいと思うよ。」
「えへへ。良かったです。」
俺達は、再び大通りを歩き始める。
「ねぇ、ジュリア。どこか行きたい所はある?」
「この王都の街並を色々と見てみたいです。」
俺達は、このまま王都を散策することにした。
現在俺たちは、商業地帯を歩いている。様々な店舗が、ひしめき合う様な形で建ち並んでいる。建物の壁や屋根、店舗の大きさには統一感があり、美しい街並みを演出している。人々の行き交う様子は活気にあふれ、賑わっている印象を受ける。
「凄いですね。イセ村とは全然違います。私は、王都どころか、村以外の場所に行ったことがないので、王都の街並には感動します。」
ジュリアは、都会の景観に大変興奮している様だ。俺も初めて王都バランに行った時は、同じ様な反応だったことだろう。
露店で肉串を購入し、2人並んで食べている。王都マルロムでは、揃わない物はないと言われる様に、道具屋、薬屋、鍛冶屋、書物屋、旅宿など様々なお店があった。
日が南へ傾いており、暮夜への移り変わりを予感させる。
「そろそろ、宿へ向かおうか。」
「はい。ヒビキ様。」
スマホのマップアプリを使って宿泊先の"猫のまんま亭"へ移動した。
――
(猫のまんま亭)
「いらっしゃい!泊まりかい?」
猫のまんま亭と言うだけあって、現れた女将は、猫人族の御夫人であった。
「ええ。アルマ商会の護衛のヒビキと言います。」
「ああ。聞いてるよ。さっきお連れさんを案内した所だ。残りは1部屋だね?」
「え?1部屋ですか?」
「うん?違うのかい?」
(団長!ジュリアは想定外だから、部屋が別に用意されている訳ないじゃない。)
(ああ。そうか。確かに。)
「ジュリア。悪いが同室になる。」
「はい。従者ですから問題ありません。」
「あら?可愛らしい従者さんだね?本来ならば、追加で食事代を頂く所だが、嬢ちゃんはサービスするよ。」
「女将さん。すみません。ありがとうございます。」
俺たちは、大通り沿いにある2階の部屋に先に移動した。窓を開けると王城が見え、ロケーションは素晴らしい。ベッドはまだ一つしかないが、後でもう一つ用意してもらえるそうだ。とりあえず部屋で少し休憩することにした。
Kon、Kon!
「ヒビキ!居るか?」
蒼天の翼のアインさんだ。夕食のお誘いだったようだ。ジュリアを連れて1階の食堂へ移動した。
――
「乾杯!」
今日は、アルマさんも合流して、7人でテーブルを囲む。一同は、果実酒で乾杯した。
「プハー!」「てか、ジュリアは酒飲めるの?」「ああ、成人はしてなさそう。」
「やっぱり、お子様に見えます?これでも30歳なんですよ?ちゃんと成人はしてますよ。」
「エルフは、長命種だからな。その辺の感覚は、俺達にはわかりにくいんだよな。」
「30歳なら俺より年上だぞ!」
「えっ、アインさん20代だったんですか!?」
「おい!ヒビキ!殴るぞ!」「あはは!」「あはは!」
楽しい夕食は、続いていく…。
「みんな。聞いた?我々の祖国アルスガルド王国は、帝国に狙われているって話。」
情報通のアルマさんが、おもむろに口を開く…。
「ええ。帝国は、軍事力は強いけど、食物の生産率は低めで、肥沃な土地を欲していると聞いたことがありますね。」
「まさか。戦争とかにはならないですよね?」
「王家もそうならないことを望んでいるけど、あの国とは国交がないからね。」
少々不穏な情報が耳に入る。今後の王国の動向には注意する必要があるかも知れないと感じたヒビキであった…。
―――― to be continued ――――
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