第35話 ジュリアのジョブ
王都マルロムに滞在して3日目。
「ヒビキ様!私も冒険者になりたいです!」
今日が王都マルロム滞在の最終日。昨日は、大教会や古代遺跡などの有名所を観光してしまったので、今日は特にやることが無くなってしまった。ジュリアにやりたいことを聞いた所、こんなことになっていたのである。
「ジュリア。分かってる?冒険者になるということは、魔物との戦闘もあるし、盗…。悪い連中とも戦うかも知れないんだよ。」
「分かっています。ヒビキ様は、冒険者ですので、その従者が戦えなくてどう主人を守るんですか!」
真っ直ぐ意志の籠った瞳…。俺は、この瞳に弱い。俺は、ジュリアの安全の為に反対していたのだが、根負けしてしまう。
(団長…負けたね…。)
(ああ。情けないと笑ってくれ。)
(あはは…団長。頑張れ。)
結局、今日はジュリアを冒険者ギルドに連れていくことになった。
(王都マルロム 冒険者ギルド)
マルロムのギルドは、バランのギルドと内装が殆ど変わらなかった。正直、わざと同じようにしているのだろうと思うくらい同じである。見慣れたギルドの造りではあっても、利用者や、職員の面々は違う為、このギャップに違和感を覚えてしまう。
「すみません。彼女の冒険者登録をお願いしたいのですが。」
「はい。かしこまりました。えっと…。ジョブはお持ちですか?」
「あっ、いえ。ジョブは頂いていないようですが、大丈夫ですか?」
「あっ、そうですか…。ええ。こちらでもジョブを付与できますから。ただし、手数料が銀貨5枚必要です。」
「5枚もですか?」
「申し訳ございません。規則でして…。もし費用を抑えたいのでしたら、西部の都市ルナレスのジョブ教会を訪れるのをおすすめします。」
(ジョブ教会は、注目を浴びるし、ちょっとトラウマがあるんだよな。それに、ジュリアは…。)
「ここでお願いする場合は、別室でやって頂くことは可能ですか?」
「ええ。ご希望あれば、ジョブ付与と登録も別室で執り行います。」
「わかりました。では、お願いします。」
「ヒビキ様!そんな大金…。大丈夫ですか?」
「心配するな。俺は意外とあるんだ。大丈夫だよ。」
「ありがとうございます!」
(ギルド応接室)
「君達がジョブ付与を希望するのだね?」
「ええ。彼女の方です。宜しくお願いします。」
この世界では、ジョブ付与には二種類の方法がある。一つはジョブ神殿。もう一つは、冒険者ギルドである。この二つ大きな違いは、費用の違いと、タイミングである。
ジョブ教会は、費用は安いが、国からの順番の連絡がないとやって貰えない。基本、成人になると順番に連絡がくる仕組みなのである。ジュリアは、とうに成人しているので、村に連絡が行っていた筈だ。それなのにやって無かったのには理由があるのかも知れない。それに順番が失効しているだろうから、今行っても、やって貰えない可能性が高い。
冒険者ギルドは、何時でもやって貰えるが、費用が高い。訳ありの人くらいしかやらないのが一般的のようだ。
今、俺達と対峙しているのは、ギルド職員で神官のジョブを持つ、ガイさんである。人間族で、髭を生やしたダンディーなおじさんだ。
「ちなみにジョブ付与は、初めてかな?ジョブは、人生に一度きり。そう神がお定めになられているからね。」
「はい!もちろんです。」
「いいでしょう。それでは始めるとしよう。」
「ジュリア。神玉に手をかざしなさい。さすれば、そなたにジョブが与えられるでしょう。」
ジュリアは、恐る恐る神玉に手を翳す。神玉は、一瞬光を帯びて直ぐに鎮まった。
「出たぞ。おお!これは…嘘だろ?」
「ガイさん?」
「驚いたよ!ジュリアは、賢者だ!」
「ええー!?賢者ってSSRの?」
「ああ。そうだ。このジョブは、初めて見る。ギルドでもこのジョブを持つ者は見たことがないよ。」
念の為、鑑定スキルを使って確認をする。
(北条響が発動する!スキル"鑑定"!)
心の中で、真名によるスキル発動を行った。アプリが起動し、画面にジュリアを表示させる。
名前 ジュリア
年齢 26歳
性別 女性
種族 エルフ族
ジョブ 賢者 (SSR)
レベル 3
HP 32 (+100 )
MP 53 (+140 )
AT 20 (+20 )
MAT 35 ( +20 )
DEF 18 ( +140 )
MDEF 28 ( +140 )
DEX 20 (+20 )
INT 33 ( +20 )
AGI 19 ( +120 )
スキル 連続詠唱✕6 魔法解析
装備 バトルドレス(R) バトルブーツ(R) 天使の涙(R)
装備スキル 温度調節 防汚 疲労軽減 修練の奇跡 (上限50レベル)
「あの、ガイさん。ギルドには守秘義務がありましたよね?」
「ああ。もちろんだ。ジュリアのジョブの情報は、口外しないと約束する。ただし、ギルドマスターや、ギルド会長には情報は共有される。それは、承知して欲しい。」
「仕方ありませんね。承知しました。」
「では、登録に移ろう…。」
手続きは、30分程で終わった。俺達は、手始めに一つだけ依頼を受けることにした。
「王都の南東の森林に生息するゴブリン討伐ですね?」
「はい。ヒビキとジュリアの二人で行います。」
「申し訳ございません。ジュリアさんは、まだGランクですので、参加はできません。」
「そんな…。彼女は、俺の従者なので、経験を積ませたいのです。何とかなりませんか?」
「それでしたら、パーティ登録されては如何でしょうか?パーティでしたら、Dランク依頼でもGランクのジュリアさんの同行が可能です。」
「では、お願いします。」
俺は、初めてパーティを組んだ。蒼天の翼のメンバーとは一緒の依頼を受けているが、パーティ登録はしていなかった。パーティ登録の方は、その場ですぐに手続きが完了した。
("パーティの修練共有"の能力を取得しました。)
「ええーっ!!あっ!すみません。」
突然脳裏に声がして、うっかり声をあげてしまった。どうやらパーティを組んだ相手とは、戦いなどで取得した経験を共有することができるらしい。これは、使い方次第でかなりチートな能力と言えそうだ。
俺達は、依頼を受けて王都を出発した。
―――― to be continued ――――
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