第6話 新たな依頼

 本日は、Fランクとして初めての任務に臨むこととなった。朝から多くの冒険者がギルドに集結し、依頼書を巡る苛烈な競争が繰り広げられていた。


「おはよ、ヒビキ君!」


「アマーシャさん。おはようございます!昨日は、ありがとうございました。今から依頼探しですか?」


「ええ。ここまで混むと思っていなくて、参ったわ。」


「同感です。アマーシャさん、ランクは?」


「Dよ。討伐依頼がかなり増えてきてるから、悩むわね。」


「もう、Dですか!?流石だなぁ。」


「あなただって、そのうちすぐに上がれるわ。あなたは最弱職って言われてるけど、何か他の人とは違う感じがするのよ。これは感覚的なものなんだけどね。」


「評価して頂き、光栄に存じます。」


「あはは。なにその言い方!」


「あはは。少し気取ってみました。」


 アマーシャさんは、やりたいと思う依頼書を見つけたようで、早速受付に向かっていった。その一方で、俺は…。


 Jランクの掲示板にある依頼書の内容を纏めると、以下の通りだった。


1. 薬草採取

2. 運搬業務 ( ニール村から王都へ )

3. 王都内下水清掃

4. 貴族の猫探し

5. 王都近郊のスライム、キラーマウスの討伐。


 もちろん、本来はもっとあるのだろうが、私は遅れてしまったためにほとんどの依頼書が消え去ってしまっていた。そんな中から、自分にとって最適なものを選び抜くしかなさそうだ。


「じゃ、これにしますか。」


 俺が選んだのは、運搬業務である。この依頼であれば、薬草採取の時ように過剰な作業によって失敗することはなく、目立ち過ぎることもないだろう。


「ヒビキ君、今日は運搬業務ね!隣村からだから、少し歩くよ。大丈夫?しかも、これ鉱石運搬だよ。結構不人気な依頼で、いつも残っているのよね。」


「大丈夫ですよ。任せて下さい!」


 俺は、決して逞しくない二の腕を見せつけながら、そう述べた。


「あはは、わかったわ。では、この依頼、承認します。」


 俺は、早速ニール村へ向かうことに決めた。GOGOMAPアプリを起動し、ニール村までのルートを確認した。ニール村までの道程は片道1時間ほどであり、平坦な地形を通過するため危険性は少ないだろう。しかし、何が起こるかわからないというナビィの忠告に従い、戦姫を1人同行させることにした。


「北条 響が命ずる!戦姫ロロ。前へ!」


「はい!」


 私の掛け声に反応して、ロロがスマホ画面に表れる。私はロロの存在を確認して指示を与える。

 

「顕現せよ!!」


 俺の合図と同時に、スマートフォンの画面からロロの姿がスッと消え、スマートフォンから多数の光粒子が放たれた。散乱していた光粒子が一つにまとまり、やがて大きな光となり、ロロの形が浮かび上がっていった。


「団長!お久しぶりです!呼んで頂いて嬉しいです。」


 戦姫ロロは、N(ノーマル)キャラの一人である。俺が所有するキャラは、ゲーム内での余暇の暇つぶしに、全てのキャラをカンストさせている。彼女は犬人族の戦姫であり、格闘タイプのキャラクターである。エルルの場合と同じく、アプリ上ではアニメーションキャラクターとして描かれているが、実際に出現したのは立派な犬人の女性であった。


(やっぱり、これは素晴らしい!WWGファンには大変嬉しい変化だな。)


「ロロ、久しぶり!ニール村までの同行、宜しく頼んだよ!」


「はい!任せて下さい。」


 途中で現れたスライムやキラーマウスたちを、彼女は淡々とした様子で軽く一撃で屠ってしまった。まるで彼らが自身に対する脅威ではなく、ただの害虫のように扱うかのようであった。


(強さの次元が違う…。)


「団長、今の戦闘で団長のレベルが上がったよ。確認する?」


「俺は、何もしてないぞ!」


「戦姫達は、団長の能力でこちらで活動ができてるんだよ。だから、団長の能力の結果という訳。WWGもそうだったでしょう?」


「理解はしていないが、納得はした。ステータスを見せてくれ。」


名前 ビビキ

真名 北条 響

年齢 18歳

性別 男性

種族 人間族

ジョブ スマホマスター

レベル 3 → 5

HP 27 → 29

MP 7 → 9

AT 12 → 14

MAT 7→ 9

DEF 7 → 9

MDEF 7→ 9

DEX 12 → 14

INT 17 → 19

AGI 7 → 9

顕現コスト 10

スキル スマホ召喚 ・ 異能アプリ ・ スマホフィルター


「見事に1ずつしか上がらないのな…。」


「まあ、そればかりは…ね!でも、新しいアプリが使えそうだよ。」


「それは、楽しみだな。」


 俺は、GOGOアプリを起動してインストール出来そうなアプリを探し始める。


「あ、これだ!鑑定アプリ?」


 必ずしも必要ではないかもしれないが、念の為に正確な使用方法を調べてみた。その結果、鑑定アプリは、カメラ機能と密接に連携しており、カメラを通じて映し出された物体や人物の詳細な情報を取得することができるようだ。


「おお!これは、かなり便利そうなアプリだぞ!」「ロロ!試しに使わせてくれ。」


「団長、了解です!」


「北条響が発動する!スキル"鑑定"!」

 

 鑑定アプリが、瞬く間に端末にインストールされ、素早く起動した。俺は、スマホ画面に彼女を表示させる。


名前 ロロ

年齢 19歳

性別 女性

種族 犬人族

ランク N (ノーマル)

ジョブ 総合格闘

レベル 100 (MAX)

HP 450

MP 200

AT 350

MAT 291

DEF 255

MDEF 278

DEX 356

INT 154

AGI 352

スキル なし

説明 非常に真面目な性格をしている。


「おぉ、ロロは強いな。俺のステータスとは雲泥の差だ。」


「クスッ。団長が鍛えてくれたお陰ですよ。」


 Nキャラでもカンスト状態である彼女は、世界水準で見ても極めて強力な存在であると考えられる。今後更に上位ランクの戦姫を手に入れることができれば、どのような力を発揮するのか、今から興味津々である。


 戦利品となったスライム2匹とキラーマウス3匹は、ストレージに保管された。小ブラックホールに消えていく様子は、何度見ても圧巻である。


 遠くに見える建物群は、村の様である。住居は数は少ないが、小さな集落があり、煙突からは薄い煙が立ち上っていた。恐らく、それがニール村であろう。


私は、鑑定アプリを用いて、すぐに情報を確認することにした。


地名 ニール村

所属国 アルスガルド

住居数 29棟

住民数 74名

説明 ニール山の麓の村。


「説明が表れた!やはり便利だね。」


「団長、今から何をするんですか?」


「依頼で村からの運搬を頼まれてるんだ。」


「運搬なら私も活躍できますよ!」


「期待してるよ。よ~し、頑張ろう!」


 俺は、決して逞しくない二の腕をロロに見せつけながら、気合いを込めた口調で答えた。


「団長、またやってるよ…。」


 ウンザリそうに話すナビィ。俺達は、目的地のニール村に無事に辿り着くことが出来たのであった…。


―― to be continued ――

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