第44話 ユーザリア帝国との戦い④
帝国軍の中央に展開する主力本隊は、11名の戦姫の奮闘により、1万4000人もの兵力が半分以下まで減少していた。さらに、王国軍は両翼展開によって数的優位と高い士気を活かし、終始帝国軍を圧倒していた。
―――― 視点切り替え (SR戦姫 シノブ) ――――
これまで私は、御館様(ヒビキ)の能力覚醒にはまだ時間を要すると判断し、Nキャラとして彼を支えることに専念した。以前は最弱グレードのため、充分なサポートができなかったが、現在はSRキャラとして御館様に顕現して頂いたので、彼の期待に添えるよう邁進したいと考えている。
私の狙いは、敵のボスキャラ悪魔族のルーナスの首、ただ一つ。情報共有では、我々戦姫のSRキャラにも引けを取らない戦力だったので身を引き締めて任務に当たる。まずは、顕現されたこの世界での自身の能力を確認する。
名前 シノブ
年齢 20歳
性別 女性
種族 人間族
ランク SR
ジョブ くノ一
レベル 150 (MAX)
HP 1100
MP 1050
AT 1058
MAT 942
DEF 830
MDEF 830
DEX 1010
INT 945
AGI 1005
スキル 中級忍術 ・ 妖刀顕現『魂喰(ソウルイーター)』
説明 東方国の忍。非常に真面目な性格をしている。スキルはないが、潜入や暗殺は得意。団長に全てを捧げる程の団長崇拝者である。
(Nキャラの頃とは雲泥の差ね。忍術が使えるようになったことは僥倖だわ。しかし、説明の文章は恥ずかしいから何とかならないのかしら?間違ってはいないけど…。)
能力を確認した後、移動を開始する。他の戦姫たちは、すでにバトルを開始していた。
「忍法 『瞬発の術』!」
忍術『瞬発の術』によって脚力が強化され、一時的に移動能力が向上する。
「あれ?風なのか?何かが通り過ぎたみたい…?」
帝国兵士の隣を疾走する。あまりにも速い速度のため、風と間違えられたようだ。そのまま攻撃を仕掛けることは可能であるが、この勢いで斬撃を繰り出せば胴体が真っ二つになるだろうから、自重した。御館様の意向に反することはしたくなかったのだ。
瞬く間に駆け上がり、敵軍の懐深くにまで浸透し、遂には其処にある本陣へ至った。然るに、私が目撃したのは、髭を蓄えた老獪な男の姿であった。しかしその実、彼が人ではなく悪魔そのものであることは、私には先だって明白だった。巧妙に間合いを窺い、攻撃の機を伺い続けた。
「行け、オプスよ!」
悪魔ルーナスが宿る老獪なる男の背後から、突如として何者かが飛び出し、王国軍の本陣を目指して瞬く間に飛翔した。
「あっ…。」
一瞬の出来事に対応できずに見送るだけになってしまう。私は、すぐに御館様に念話にて報告する。
(御館様!申し訳ありません、ボス悪魔より、邪の存在がそちらに向かいました。一体だけですが取り逃しました。)
(了解!大丈夫だ。それに関しては、俺達で対応する。シノブは、悪魔を確実に滅ぼすこと。いいね?)
(承知しました。全力を尽くします。)
私は、悪魔ルーナスと対峙する。目の前の老獪な男が、あくまでも表向きのカモフラージュに過ぎぬことを、私は知っている。その内実は、凶悪かつ邪悪なる悪魔である。従って、容赦なき一撃でその命を断つことこそが、筆舌に尽くしがたいほど適切である。私は、御館様の調べた悪魔の情報を確認する。
名前 悪魔ルーナス
年齢 1092歳
種族 悪魔
レベル 109
HP 1024
MP 910
AT 892
MAT 910
DEF 754
MDEF 710
DEX 624
INT 821
AGI 609
スキル 不明
どうやら、彼こそが今まで対峙してきた敵の中でも最強の存在である。私もSRクラスとなり能力が向上しているが、慢心は禁物であることを自覚している。
馬上にいるルーナスと目が合う…。
「忍法『瞬発の術』!」
その瞬間、私は脚力を強化して一気にルーナスに接近する。忍者刀を手に、素早い太刀筋で斬撃を繰り出したのである。
Zaku!
Potori!
ルーナスの首に私の刀が届き、真っ赤な血しぶきが空を舞い上がる。身体から分離した頭がポトリと地面に落ち、その身体もやがて力無く地面に倒れた。勝負は数秒で決まった。
(しかし、本当に倒したのだろうか?あまりにも簡単すぎる…。)
ルーナスは、地面に横たわったまま、動かなくなった。
「うぉぉぉ!貴様、キテマラ侯爵に何てことを!」
本来、キテマラ侯爵こと悪魔ルーナスを守護する役目を持つ兵士達が、今になってようやく私の存在に気づいた。そして、私に迎撃の体勢をとる。しかしながら、私にとっては些細な妨げに過ぎなかった。
「あなた達が必死になって守っていたのは、悪魔だったのよ。邪魔しないでくれるかしら?」「忍法『風遁(ふうとん)、風波の術』!」
兵士達は、風波によって吹き飛ばされて、遠くの方で地面に横たわっていた。殺傷能力の低い術なので恐らく死者が出ることは無いだろう。
「ん!?」
私は、身につまされるような気配を感じ、後ろを振り向いた。
地面に横たわっていた老人を突き破るようにして、悪魔が外に這い出してきた。その光景は、吐き気を催すほどに忌まわしく、不快感に襲われた。
(やはり、これが本来の悪魔の姿か…。)
―――― to be continued ――――
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