かってぇ。
搭乗を前提に作られた重機でありながらも、眷属化の効果で自律行動を始めたジャック。
その様子を見ながら、残りのポイントでどのビークルを買うか検討してると、何やらジャックの様子がおかしい事に気が付く。
「…………切れてなくね?」
割とシャレにならない騒音を立てながらチェーンソーが動いてるのに、アームから排出されるおが屑が殆ど無い。
この手の伐採機は高出力でチェーンソーや丸のこを動かす関係で、可動部から凄い勢いでおが屑が飛び出すタイプが殆どだし、ジャックもそのタイプのはず。
にも関わらずおが屑が出て来ないって事は、気が切れて無いって事に他ならない。
「え、本当に不良品なの?」
さっきは俺のポカで動かなかったが、今回はちゃんと稼働してるのに気を切れて無い。待ってくれよ、一千万ポイント以上を無駄打ちしたって事ならかなり辛いんだが。
「あ、違うこれ……」
焦りつつ切断部の様子を見てみると、しっかりチェーンソーが押し付けられてるのに切れてない。ギャリギャリと騒音を立てつつも、極わずかなおが屑が飛び散るだけだ。
「いやクソ硬くねぇ!? いやチェーンソーの歯が噛まないってどんだけ硬ぇんだよ!」
竜樹なんて大層な名前が付いてるだけはある。マシンパワーによる伐採をものともしない硬度の木って、それもう下手な鋼材並に硬いんじゃないんか?
これほどに馬鹿げた硬度を持ってるなら、そりゃ枝の一本でも相当な値段な付くよ。俺は納得してしまった。
予定としては、さっさと一本を処理して値段を確認したら、今度は食料や水の確保に動こうかと思ってた。なにせ俺は未だに「水、食料無しの極限サバイバル」をやらされてるんだ。依然としてピンチは脱してない。
「…………16億円の超大型重機が欲しかっただけなのに」
対クソトカゲ用にデカくてハイパワーな存在が欲しかった。重機ってのは基本的に鈍足だから、アームを振る速度だけならそこそこ早いショベルカー系の大型機が欲しいのだ。
「これだと、一日掛かりそうだなぁ」
そうなると、クソトカゲに対抗する方法がかなり微妙だ。最悪は俺自身をショベルカーのアームをフルスイングして空に飛ばし、また頭上からの重量物攻めくらいしか対抗策が無いぞ。
と言うか、今更だがこの騒音を聞いてクソトカゲが寄ってくる可能性も結構高いよな。伐採は諦めた方が良いだろうか?
残りポイントは約四千万。これでクソトカゲを殺すに足る重機を買えるだろうか? なんだかんだ、アイツを殺すのは一瞬だったから実際にどれくらい強いのか全然分からないんだよな。デカいって事しか知らない。
俺自身が戦えたらこんな苦労も無いんだが、残念ながら新しいスキルを選べる時だって戦闘に使えそうな物は特になかった。
候補にあったのは『
「…………あぁ、そう言えば俺のステータスみたいなのも上がったんだっけか。あまりにもキショくて無意識に記憶から封印してたわ」
あんなデカい化け物を殺したのに、たった12レベルしか無い貧弱なステータスだが、どのくらい強化されてるのかは確認しておくべきだろう。
「ジャック、一度戻れ」
全然進まない伐採を止めさせ、ジャックも送還して魔力に変える。
──『アルマ/Lv.12』
──『HP1200:MP:1200』
──『ヌルMP:9600』
──『ジャックMP:200』
──『ヘルメスMP:5』
──『STR:96/INT:84』
──『VIT:108/MIN:48』
──『AGI:84/DEX:72』
レベル12の、
と言うか、送還中の魔力を見ると格差が凄いな。ヌルが9600もあるのに、ジャックが200でヘルメスは5。ホント凄い差だな。
「さて…………」
試しに、拳を硬く握って構える。ジャックが切断部の表面を少しだけ削れた大木に向かって、全力で拳を突き出して見る。
────ズンっっ!
思ったよりも凄まじい音と衝撃が走り、そして────
「────かってぇっっっ!?」
痛ってぇ! いや硬いのは分かってたが、まだちょっと舐めてた!
良く考えなくても、チェーンソーの歯が滑る程度には硬い素材なんだから、殴ったら拳を痛めるのは当然の事だった。
と言うか、拳の方も結構な威力が出たな。クソほど重いハンマーで殴ったような威力が自分の拳から出たんだが、たった12レベルでこんなに強化されるのか?
断言するが、俺が今繰り出したパンチはヘヴィボクサーの全力よりも重かった。素人でもそう判断出来る程に強く殴れた確信がある。
「…………この世界、マジでキショいな。レベルがたった12の雑魚が、ヘビィ級ボクサーより重いパンチ打てるってアホ過ぎるだろ」
しかしまぁ、クソトカゲをちょっと殴って足止めくらいは出来そうなステータスだな。俺が囮をして、その間にジャックを突っ込ませれば多少は戦えそうか?
「いや、ダメだな。ジャックは四足歩行する重機だから速度が出ない。こんな事なら奇を
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