検証。
ネットショップであると同時に、ネットゲームの様な印象を受けたのは間違いでは無かったのだろう。
やはりスキルなんて物はどうにもゲーム的であるし、何よりサービスチケットの存在がその事実を後押ししてる。
本来なら、
何故なら、物を用意するにも労力が要るから。当たり前だが一年かけて完成させた重機をタダで引き渡してしまったら利益もクソも無いのである。
原価だけでなく、物が作られるまでに流れた時間がそのまま人件費として嵩むし、それを加味した利益を乗せるならば売値が跳ね上がるのは必然。
つまり何が言いたいか。要するにこのスキルとやらは遊びなのだと言う事だ。
金銭に代わるポイントによって購入するシステムではあるが、そこに含まれる意味はゲーム的な物でしかない。
簡単に言えば、オンラインゲームでモブを狩り続けてゲーム内通貨を稼ぐのと一緒だ。物流や経済に組み込まれてない通貨だから、いくらでも発行出来るし破綻もしない。
この事から分かるのは、俺の異世界転生は作為的な物って事実だ。
何者かの意思が介入して無いなら、こんな『いかにも誰かが作りました』って能力なんか持たされないだろう。
自然現象と呼んで良いか分からないが、誰の意思にも関係無く異世界に来てしまって、その上で両世界の差異などから辻褄合わせが発生してスキルも自然発生なんて事もあったかもしれないが、その場合ならもっとシンプルな能力を得たと思われる。
例えば魔法を使えるようになるとか、体が頑強になるとか、そういった類の物だ。
しかし、実際に俺が手にしたスキルとは誰がどう見ても『デザインされた』物であり、つまりデザインした誰かが居るんだ。
「…………と、なると。俺の記憶は奪われたのか?」
異世界に来るなんて理外の出来事だから、その際に何かしらの不具合が起きて記憶の一部を失ったのだと思っていた。だがどうだ、俺の異世界行きには人為的……、いや、
「どうせなら、神の間に呼ばれて事情を説明される類の転生が良かったが……」
知ってると知らないのとでは、自分が取る行動にも差が生まれる。出来るなら事情の説明が欲しかったところだ。
「いや、記憶を奪われた可能性が有るんだ。説明も無しに送り込まれた事にも理由が有るんだろうな」
もちろん、俺をこの世界に送り込んだ神的な奴が好意的でない可能性も充分だ。むしろラスボスであるパターンだってある種のベターだろう。テンプレって奴だな。
「…………さて、推測はこの辺で良いか。答えを導いたとて、目の前に食料が生まれる訳でも無し。今はとにかく生き残ろう」
そうなると、このスキルをもっと詳しく知るべきだな。サービスチケットは絶大な効果を持ってるから逆に使いにくい。もしかしたら低価格なワークビークルならば直ぐに買えるかも知れないのに、値段を無視して使える権利を使い潰すのは有り得ない。
「まずは、ポイントの入手だよな。…………その辺の石とかでも売却出来るのか?」
試してみると、出来た。
地面から石ころを拾い上げ、それを手に持ったまま売却の意思を強く念じる。すると手のひらから石が消え去り、スキルのウィンドウから『ちゃり〜ん♪︎』と軽快な音が鳴る。
…………コンビニで電子決済の時に良く聞く感じの音だったな。
早速とスキルのポイント明細を確認してみるが、『
ふむ。長石って言うのは多分、石の種類なのかな? 石英とか玄武石とか、そういった物の区分なんだろうか。詳しくないから分からん。
次に肝心のポイントだが、石ころでは0.1ポイントしか貰えなかった。これを多いと見るか、少ないと見るかは人によるだろう。俺は多いと思う。
ショップのラインナップを見ると、ワークビークルはどれも大体百万ポイントを超えた値段設定になってる。恐らくは日本円で買う時と殆ど等価なんだろう。
ほぼ乗用車と変わらない作りの物でさえそれだ。石をどれだけの数売れば良いのか、気が遠くなる程の数字だ。だが、逆に言えば『大量の石を売り続けるだけで入手自体は可能』って事でもある。
例えば、300万ポイントに設定されてるワークビークルを買いたかったら、3000万個の石を売れば必要なポイントが貯まる。
仮に、日本だったら河原の石を3000万個売ったからって300万円にはならないだろう。…………ならないよな? 一応、その辺の石だって舗装用だったりに使えるから売り物として価値はあるから、もしかしたらそれだけの数を売れば300万円くらいにはなるのか?
分からないが、とにかく拾った物でもポイントに変えられるのが分かった。
ちなみに、殆どの商品が百万単位の値段だが、一応は安い物も存在した。その代表が二輪系だろう。
新聞や出前の配達で良く使われる燃費最強の原付は20万ポイントだ。日本で新品を買うと、ちょっとしたバージョン違いやカラーリングでも値段が変わるので一概には言えないが、少し安めかなと思った。まぁそれでも「大体そんな値段」ってラインでもあるだろう。大きくは外してない。
他にも、もっと安いところで自転車もある。これも配達用の物だ。
自転車も『車』には違いないし、仕事用に作られた物は確かに一応はワークビークルと呼べなくも無いのだろう。それでも数万ポイントが必要だけど。
「ふむふむ……」
ポイントの入手方法は分かった。入手ポイントと消費ポイントの対比と言うか比率も何となく理解した。
「あとは、売却システムの限界を検証か」
拾った石は売れた。では、今俺が腰掛けてる巨木は? 売れる物に限界は? 大きさはどこまで? 重さは? 地面に根を張ってる状態でも売却は可能なのか?
その辺の事を試して行こうか。もし木が売れるなら、どんどん売ろう。流石に拾った石より安いって事は無いだろうよ。
「売却。…………流石に無理か」
石を売った時の様な反応が一切無い。どうやら巨木は売却出来ないらしい。
ただ、この売却出来なかった理由を知るのが検証である。売れなかったのは、そもこの木に価値が無いからか、それとも他に理由があるのか。
それを知らねばこの先きっと困る事になるだろう。だから今のうちに調べておく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます