検証結果。
一時間ほど使って検証を続けた結果、売却システムの事は大体分かった。
まず、大地に根を張ってる巨木は売却不可。これは単純に地面ごと売却出来ないからだと思われる。
手で掘り返した土も、剥ぎ取った木の皮も売却出来た。だが生えたままの巨木は無理である事から、いくつかの推測が成り立つ。
一つ、所有権の有無が関係してる可能性。
掘り返した土も、剥ぎ取った木の皮も、これは俺のだと主張出来る状態であり、だからこそ売却が可能だった。逆に、地面から生える巨木を売却しようとすれば、必然的に大地もセットでついてくる。
巨木はこの森の所属であり、俺がこの森の所有権を持ってないから。もしくは地続きであるどこかの土地が誰かの物だから、セット扱いである巨木の所有権が地続きのどこかと干渉してるから。
──などと、色々な可能性が考えられるが、とにかく所有権を有している事が重要である可能性が高い。これは人里などに行けば自ずと分かる事だろう。
「これだけ立派な大樹なんだから、売れたら結構な値段すると思うんだけどなぁ……」
一応、一抱えもある『枝』なんかも見付けて売却してみたが、ちゃんとポイントに変えられた。巨木から落ちたらしい枝は相応にデカかったので、取り敢えず『売却物の大きさ制限』などは無いと仮定する。
ちなみに、売却した枝は『最高級竜樹の枝/168970P』で売れた。ここの大木達は竜樹って種類らしい。下手な街路樹よりも大きかったとはいえ、枝一本でこの値段なのだ。本体を売却出来たらどれだけのポイントになるか…………。
「うん、まずはサービスチケットを使わずに何かを買えるくらいにポイントを貯めようか。落ちてる竜樹の枝を探して売ろう」
竜樹の他にも、木の表面に生えてる苔とか、ちょっと裏側に生えてたキノコとか、売れそうな物は手当り次第に売ってみる。
──『
──『コロシダケ/1200P』
──『石英/1P』
──『ダマシエダムシ/3000P』
──『褐色竜の鱗片/21900P』
「へぇ、適当な物でも結構な値段────……」
………………待て、待ってくれ。なんか今、変なの見たな? いやコロシダケなんて物騒な名前のキノコはどうでも良い。お前じゃねぇ、その後だ。
「鱗片……? 鱗の、欠片って事か?」
ただの石ころにしか見えないが、これはどうやら褐色竜なんて名前の生物から取れた鱗の欠片らしい。ホント待って欲しい。
「…………えっ!? この場所ってそんな物騒な生物が居るのか!?」
そんなの、遭遇したら死ぬしか無いじゃないか。確殺デストラップが自律歩行だか飛行だかしてるフィールドとか勘弁して欲しいのだけど。
巨大なナナフシみたいな虫、ダマシエダムなる生物も居たが、他には生き物らしい生き物も見えず、直接的な害が視界に入らない森であったので、少しばかり気が緩んでいた。
「そうか、異世界だもんな。地球でだって野生動物が居る森でのんびりしてたら危ないんだし、こんな場所でのほほんとしてるのが間違いだよな…………」
これは早急に、安全を確保しなければダメかも知れない。もしばったり鱗の持ち主にでも遭遇したら、何も出来ずに殺される未来しか視えない。
──カロロロロロ………………。
そう、もしばったり遭遇したら。ちょうど、こんな感じで。
「………………ははっ、笑えねぇ」
突如聞こえた息遣いに視線を上げれば、大樹の後ろからはみ出して見える巨大な化け物が見えた。
色は光さえ通さぬ漆黒で、爪や角などが灰色の怪物。
見た感じでは熊の様に四足歩行から二足で立ち上がる事も可能なのだと推測出来る体付きで、その体を持ち上げるにはそのくらいは必要なんだろうと理解出来る巨大な翼。
鋭角が目立つゴツゴツした鱗に全身を包まれた、見上げるほどの竜がそこに居た。
「なんで……」
足音なんて聞こえなかった。息遣いも、聞こえる寸前まで本当に何も無かった。気配と言える物は何も無かったのに、いつの間にかそこに居る。
逃げなきゃ、そう思った瞬間に相手も察したのか、そいつは双眸を歪めて嗤った。
振り返って一直線。一本一本が電波塔かと見紛う程に大きな大樹の間を擦るように抜けて走る。せめて、あの巨大な化け物がつっかえてくれることを願って。
──ギュルァァアアアアアッッッ……!
背後から咆哮が聞こえ、そして地を揺らす足音が俺にピッタリ付いてくる。
「…………ちくしょうがっ」
止まったら死ぬ。
突如として、俺の命が景品にぶら下がった
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