活用。



「この、スキルを得るとその使い方が薄らと分かるファンタジー仕様も中々におぞましいよな」


 スキルを設定した俺は、早速使ってみる事にした。ちなみにスキルは一度選ぶと変更出来ないらしい。本当に変更不可なのか、俺が変え方を知らないだけなのかはまだ分からないが、とりあえず今は無理。


 スキル欄をタップすると詳細しか表示されず、スキルリストが現れなくなった。


 もう深く考えたくない俺は、ありのままを受け入れ始めた。能力の付与とかステータスとか、自分の体を弄くり回されてるようで気持ち悪くて仕方ないが、生き残る為には必要なのでその辺の感情をシャットダウンするしか無い。じゃないと毎秒ストレスで禿げそうだ。


「さて、クソトカゲをぶっ殺してくれたエクスカベーター君。俺が呼び出した初めての相棒だが、俺はその巨体を持ち運ぶすべを他に知らん。悪いが無理矢理契約するぞ」


 物言わぬ鉄の塊に手を当て、スキルを使用する。


 まずは眷属化とやらでゴーレムにした後、眷属になった事で契約可能となった召喚術を行使する。


 ゴーレムとやらに変化したらしいエクスカベーター君は、それでも物言わぬ鉄塊のままだった。スキルの不発かと思ったが、召喚術が正しく発動し、送還出来たので不発では無かったらしい。


「んぉ……?」


 そして、光となって消えたエクスカベーター君が俺の体に吸い込まれた瞬間、またもステータス画面みたいな物が目の前に浮かび上がる。もう俺は何も言わんよ。


 ──『スキル連動/ワークビークルショッピング・眷属化(機械)・召喚術が連動します』

 ──『損害率五割を超えて起動不全となった眷属が送還されました。ワークビークルショッピングのアフターサービスが起動します』

 ──『召喚術で送還された眷属下のゴーレムが、ワークビークルショッピングの効果で修理中です。修理が終わるまで召喚不可』


 …………俺は無言でワークビークルショッピングを起動してスクロールする。


「…………なるほど? 故障したワークビークルを修理してくれるサービスもあるのか。それが他のスキルと連動して勝手に発動したと」


 自動発動とか普通に困るから止めて欲しいんだけど。この先、またクソトカゲと戦闘になった時に一番有効な手段がエクスカベーターによるメテオなのだ。勝手に召喚不可にされると非常に困る。


「スキルもステータスも、呼べば出て来たもんな。だったら、可能な事なら口頭で宣言すれば何かしら反応があるだろ」


 俺はスキル連動とやらの設定を呼び出した。声で。


 すると本当に出て来るから気持ち悪い。マジでなんなんだこの世界ほんとキショい。


「スキルの自動連動はオフ。修理タイミングはこっちで選ぶ」


 他にも設定項目があるけど、分からんから今は放置。


「て言うか、修理時間がえげつないんだけど…………」


 それと、修理費として勝手に消費されたポイントもえげつない。一億持ってかれたんだが? ポイント消費があるシステムなら自動にするなよマジで。お前これ、場合によっちゃこの時点で詰んでたぞ?


 唯一呼び出せた最大の攻撃手段であるエクスカベーター君が召喚不可になり、その修理には勝手に大量のポイントが使われる。これで余剰分のポイントが無かったら、俺は完全に何も出来ない非捕食者だ。


 幸いポイントはまだ沢山あるからワークビークルショッピングが使えるけど、ピッタリ全額とかだったら本当に笑えない事態になってた。


 表示されてる修理時間が120日オーバー。つまり四ヶ月以上掛かる。


「まぁ、本物のエクスカベーターって建造に年単位の時間が必要らしいし、修理に時間が掛かるのも仕方ないか……?」


 いや、でも、購入したら一瞬で出て来たファンタジースキルを思えば、修理も一瞬で出来ても不思議じゃないと思うんだが、なんでこんな微妙にリアルなデメリット作るんだ? やっぱ誰か娯楽として楽しんでるだろコレ。巫山戯んなよクソッタレ。


「ダメだ、どんどん心が荒んでいく…………」


 この調子で一ヶ月も過ごせば、口から出る言葉が常時ヤンキーになるぞコレ。


「……で、眷属化スキルが変化してるのは、これが初契約後のカテゴリーがどうとかって奴か?」


 ──『眷属化(機械)』


 うん。『?』だった所が『機械』に変わってる。この先、もうこのスキルは機械系統にか使えないんだろう。その『機械』の定義がどうなってるのかは別途検証が必要だろうが、それは手が空いた時にでもやろうか。


「んで、魔力が増えたってのは…………」



 ──『アルマ/Lv.12』

 ──『HP:1200/MP:1200』

 ──『【未設定】MP:9600』

 ──『STR:96/INT:84』

 ──『VIT:108/MIN:48』

 ──『AGI:84/DEX:72』


 この9600って奴か。だが未設定ってのはなんだ?


「…………ああ、そうか。個体識別の為に名前が要るのか。それで、限定魔力って奴だから個別に管理するんだな」


 例えば、俺がパワーショベルを買って、眷属化して召喚契約したとする。すると送還時にはエクスカベーターとパワーショベルのMPがそれぞれ別管理される。


 俺の持ってるMPじゃ足りなくてエクスカベーターの魔力から半分を使うと、エクスカベーターの魔力が回復するまで召喚は不可。だがパワーショベルの魔力はノータッチだから召喚可能って事なんだろう。全部から満遍なく魔力を借りたら、全部の眷属が等しく使えなくなる訳だ。


「その辺も良く考えて使おうか。肝心な時に使いたい眷族が使えなくて死ぬとか、普通に嫌だもんな」


 とりあえず、手持ちの能力は大体確認出来たと思う。次にやるべきはワークビークルショッピングで重機を買って、眷属を増やす事だろう。今の俺は余りにも非力だ。


「ああ、そうだ。エクスカベーターに名前も付けなきゃ」


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