選択制。
気を取り直して、スキルリストの方に増えてた謎表示を見る。
「拡張可能ってなんだよ」
タップして見ると、何やら少なくない数の文字列が並ぶリストに切り替わった。なんだこれ。
適当な物を押してみると、何やら説明文的な物が表示された後、『このスキルを選択しますか?』と出る。つまりなんだ、このリストは全部スキルなのか? 選べと?
「拡張可能って言うのは、持てるスキルが増えたから選べって事なのか?」
ちなみに、気になってタップしたスキルは『
「今はもう、一億超のポイントが有るしなぁ……」
速度が必要ならワークビークルショッピングで出前用のバイクでも買えば済む。足を早くするのは意味が薄い。選択するかと聞いてくるウィンドウに『いいえ』を押してアンサーした。
「それにしても、なんで突然増えたんだろうな」
いきなり二枠もスキルが増えた理由はなんだろうか? クソトカゲを殺した特典とかなのか? ドラゴンって腐ってもドラゴンだもんな。倒したら特典が付くとか普通にありそうだ。ゲーム的過ぎて反吐が出るけど。
ドラゴン撃破ボーナスとモンスター初回撃破ボーナスが被って二枠、と考えれば一応は辻褄が合う。
「まぁ、そのうち誰か知ってる奴に聞けば良いか。この世界に知的生命体が俺しか居ないって事もないだろうし」
今はとにかく、スキルを選ぼうか。
正直、こんな奇妙なチカラをポンポン手に入れてる状況は度がしがたいし気持ち悪い。こんな物を有難がってはしゃぐ歳でも無い。
と言うか、冷静に考えると喜ぶべき情報なんてひとつも無い。
変なチカラを持たされて、命の危険がある場所に説明ゼロで放り出される。そんな事して誰が得する? まるでブラックジョークで数字取ってるドッキリ番組みたいじゃないか。
つまりアレだろう? 神的な存在が居て、下民がこうやって足掻く様を眺めて楽しんでるんじゃないか? そう考えるのが一番しっくりくる。
だが、それを踏まえた上でスキルは必要だ。何故ならワークビークルショッピングなんて
有用性が確認出来てしまった以上、もはや必須。
「…………と言うか、今更だけどなんで俺は回復してるんだ?」
レベルが上がった影響か? レベルアップ時にHPもMPも全回復するタイプのRPGか?
「くそっ、どこまでゲームチックなんだよ気色悪ぃな」
だったら、レベルが上がった影響で回復力も増えて、寝てる間に自己回復したって方がまだ納得出来る。ステータスに表示されるVITも唯一三桁だし、有り得なくは無いか。それに全回復制だったら気持ち悪いし、今は『徐々に回復した』んだと思っておこう。これ以上SAN値を減らしたくない。
「と言うか、ステータスに
リストからスキルを一つ一つ見て内容を確認しつつ、そんな事を考えた。
運さえも数値化されてるなら、もうそれは現実とは言えないだろう。俺がゲームキャラ化されてる証拠とさえ言える。
サイコロってのは何が出るか分からないからサイコロなんだし、同時に出目が均等になるのがサイコロである。
世界中で数十億人が好き勝手にサイコロを振っても確率が収束するから世界はフラットなのだ。なのに、レベルを上げたら明確に運が上がってしまう人間が居る世界とか、マトモな訳が無いよな?
このままレベルを上げ続け、仮にLUCが四桁にでも突入したとする。そんな奴がサイコロを振ったら、六以外の出目は出るのか?
確率を確実にしてしまう人間なんて、ただ生きてるだけでも経済をぶっ壊す害悪だろう。俺が為政者だったら確実に探し出して殺すね。間違いない。
カジノでスロット回すだけで生活出来て、宝くじを買えば毎回一等。事故がソイツから逃げる様に毎日が平穏無事であり、株や為替に手を出せば連戦連勝。
もうそんな奴は、人間じゃない。明確な化け物だ。
そして、そんな存在を現実に生み出すことは不可能である。何故なら一個人の運勢とは世界規模の確率収束に紛れた歯車でしか無いから、一人の運勢を明確に上昇させるなら世界規模の改変が必要になる。
だって運で百万稼ぐ奴が居るなら、運で百万を失う奴が居ないと辻褄が合わなくなる。ラッキーが起きるなら、その前提が必要なのだ。運とは決して個人では完結しない。
道で小銭を拾ってラッキーなら、その小銭を落としたアンラッキーな奴が絶対に居る。急いでる時に道が空いててラッキーなら、その道をその日に使わなかった者たちに相応の理由が発生してないと辻褄が合わない。
そんな存在を許容出来るのは創作とデータの中だけであり、ステータスにLUCの項目があったらこの世界は現実では無くデータの世界って事になるだろう。
だから、うん。ステータスにLUCの記載が無いのは本当に良かったと思う。アレは創作の中だから許されるんだ。間違っても現実にあってはいけない。
世間で言う『運が良い人』ってのは、世界規模で人類がサイコロを振り続ける中で、出目の偏りが顕著に出てしまってるだけなのだ。個人単位で見れば運が良いだけで、世界規模で見ると確率の収束にしっかりと組み込まれてる。『運が悪い人』も同じだ。
「……………………お、このスキルは──」
内心で最低限の安心を確保してると、丁度良さげなスキルを一つ見つけた。余りにもファンタジーなスキルだが、今の俺にはピッタリだろう。
──『眷属化(?)/万物に対して契約を交わせる。初契約後は、契約した対象カテゴリーとしか契約が出来無くなるが、契約した対象を無条件で使役出来る』
更に詳細をタップ。
──『眷属化(?)/生物・非生物に関わらず契約可能だが、自我を持った生物と契約する際には双方の合意が必要。非生物との契約であれば無条件で成立し、駆動部が存在する非生物であればゴーレム化する』
これが有れば、運転出来ない重機類も自立行動させられるのでは? 俺にピッタリのスキルである。
「一つはコレで良いな。もう一つは…………」
──『召喚術/隷属・眷属下の存在と召還契約を交わし、召喚術を使用出来る』
詳細をタップ。
──『召喚術/契約条件を満たしてる存在に対して無条件で召喚契約を結べる。契約した存在に対して召喚術を行使し、召喚と送還が出来る。送還とは対象の存在を限定魔力化して術者に吸収する事を指す。送還中は対象の魔力に応じて、術者の魔力量が増大する』
限定魔力をタップして詳細表示。
──『限定魔力/何かしらの意味を持つ魔力概念の総称。目減りしても意味を失わず、補充される魔力によって補完される』
………………ふむ? つまりアレか、召喚して無い時は魔力として吸収可能で、吸収中はその魔力を別の事に使って良いと。減っても補充されれば元に戻り、意味を失わないと。
この『意味を持つ魔力概念』ってのは、召喚する対象である事を指すんだろう。例えば俺がエクスカベーターと契約して送還すると、エクスカベーターは魔力となって俺に吸収され、俺はその魔力を好きに使える。
だが使われて減ろうと、その魔力がエクスカベーターだった事実は消えない。だから召喚出来る。そんな所か?
「逆に言うと、使って目減りしてる状態だと召喚は出来ないって事か?」
文面から推測すると、多分そうだろう。
「とりあえず、今はこの二つで良いか。他に欲しいスキルも無いし」
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