高級装甲車。
太陽の位置を気にしながら走る事で、『知らぬ間に円移動してて遭難』なんて事故を回避しつつ二日。とにかく真っ直ぐ走って森を抜けた。
もちろん、進行方向は中層や深層とは真逆を選んだ。今はまだ深層のクソトカゲに勝てないから、突っ切るのもリスキーだ。
途中途中で休憩を挟み、ユニコを呼び出して荷台に積んだ食料を食べたり運転席で寝たりしながら進んだ二日で、無事に森から出る事は出来た。
しかし、森から出た俺を出迎えたのは背の高い草に覆われた大草原。これを
ステータス的には無理矢理行けると思うが、バイクでこんな所を突っ切ったら乗ってる俺がひたすら大変なだけだ。ステータスでゴリ押すにしても運転席に乗って行きたい。
という訳でユニコを呼ぼうと思ったのだが、どうせなら移動用で別の眷属を買うべきかと思い至ってワークビークルショッピングを起動する。
「キャンピングカーとかねぇかな…………」
無かった。とても残念。
このスキル、俺のレベルアップに応じて微妙にラインナップが増えたりするので、今後に期待したい。
ベッド付きの車両なら別に救急車とかでも良いんだが、カラーリングが派手過ぎるので心情的に普段使いしたくない。
それだったら業務用のワゴン車でも買ってから余計な物を剥ぎ取って、自分の手でキャンピングカーモドキを自作した方が幾分かマシである。
「んー、ポイントには余裕あるし、移動用と宿泊用も分けて良いかな」
宿泊用は後々、人里に行って家具とか買えるようになってから作るとして、今は移動用の車両か。
「選択肢としては、普通の乗用車をベースにした『
竜とか居る世界である。だったら盗賊とか居るかも知れないし、弓矢とかを経過して防御力高そうな車を選ぶのは間違ってない様に思う。
だがVITも共用で防御力が上がってる事を思えば、乗用車型でも充分に守れる可能性も少なくない。
「だけどなぁ、盗賊とかもレベル高かったら普通に装甲抜かれたりとか有りそうだよなぁ……」
俺のレベルはまだ21なのだ。ネトゲならまだ初心者扱いされても不思議じゃないレベルであり、仮にレベル100の盗賊とか居たら瞬殺されるかも知れない。
スキルだって持ってるだろうし、馬鹿みたいに高いステータスから放たれる剛弓とか、余裕で鉄板ぶち抜きそうだ。
だってレベル21の俺でさえ、こんな馬鹿げた身体能力になってるんだ。こんな世界で小さい頃から生きてる人間が、どれだけ化け物なのか想像もしたくない。
「まぁ、それくらいのステータスが無いとクソトカゲに対抗出来ないもんな。これがこの世界のスタンダードなんだろうよ」
頭のおかしい現象に巻き込まれたからか、もうずっと明確に独り言が増えた。これも自己の精神を保護する為の無意識なんだろうか?
いや、正確には自分の記憶が曖昧だから独り言を喋らない人間だったかも分からないが、流石に地球にいた頃でもこんなにベラベラと独り言を喋ってたらヤベー奴だと思う。
「さて、そんな世界で少しでも防御力が欲しいし、装甲車を買おうかね」
海外製のくっそカッコイイ装甲車が買えて満足。乗用車にかなり近い見た目で、だけどゴツゴツしてて、海外の要人護衛とかする人達が使う『働く車』って事らしい。
そんなガバガバ判定が有りならキャンピングカー寄越せよ畜生が。
ワゴン車ほど広々とはして無いが、ミニバンくらいのデカさはある装甲車を呼び出し、眷属化して召還契約。名前はガードナーにしよう。
本当は多分、こんなにポンポンと眷属を増やせたりはしないんだろうなと思いつつ、ガードナーに乗り込む俺。
眷属にしたいと思えるほどの性能を持つ機械を用意するのって普通に大変だし、莫大な資金が要ると思う。俺の眷属化は機械限定になってるけど、生物を対象にしたとしても同じだろう。
スキルの効果には確か、非生物なら無上限で眷属化出来るとあった。つまり逆に言えば生物を眷属にする場合は無条件では無いのだろう。気に入られたり、屈服させたり、利害を揃えたり、色々な手間があるはずだ。
非生物でも生物でも、眷属化するのに相応の苦労があるはずで、なのに俺はワークビークルショッピングのお陰で眷属にする機械を呼び出し放題なのだ。シナジーが強すぎる。
「それじゃぁガードナー、取り敢えず真っ直ぐ走ってくれ。人工の道が見えたらその道に沿ってルートの変更も頼む」
指示を出すと、身の丈程もある草を轢き倒しながら走り始めるガードナー。その内部はかなり快適であり、ユニコの運転席とは比べ物にならない。
「流石、要人の護衛に使われる車だな」
つまりお偉いさんが乗っても不満を抱かないだけのクオリティなんだろう。運転席のシートも座り心地が良過ぎる。椅子を後ろに倒したらそれだけでもう充分にベッド代わりになる。
ちなみにガードナーは8000万ポイントもした。要人を乗せる為の装甲車、流石に高い。
「文明って良いよなぁ」
冷暖房も当然付いてるし、ラジオは付かないがライトは付く。
改めて地球の文明力に感謝しつつも、バチバチと薙ぎ払われる草を眺める。景色を眺めるって表現をしたいが、視界全部が草だらけなので無理がある。
ハンドルも握らず、アクセルも踏まなくて良いのは楽だが、何もしてないと眠くなって来て困る。眷属化による自動運転も善し悪しだな。
「人里まで、あとどれくらいだろうか」
知的生命体が居ないって事は無いと思うが、それでも実際に目撃するまでは不安になる。この世界に俺以外の知的生命体が居なかった場合、永遠の孤独からどうやって逃げれば良いのか。
その時はマジでクソトカゲ絶対殺すマンになるしか楽しみが無くなる。
と言うか、今の時点でもう既にクソトカゲを殺すくらいしか娯楽が無い。ジャックの故障で森から出る決心をしたが、戦闘が遠退いたからこそ暇である。
「あぁ〜、暇。早くなんか起きねぇかな……」
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