デスイタマエとの戦い(破)
7万5千字に到達したので
後10話くらいで終わります
いやむしろ終われ(怒
――――――――――――
死を目前にしたこの時、マタミンの脳にある脳神経細胞、ニューロンが異常に活性化した。多量のノルアドレナリンが分泌され、世界最高のスーパーコンピューターを凌駕する情報処理がマタミンの脳細胞の中で行われたのだ!!
そしてその時、マタミンの脳内に電撃が走った!!
彼の眼前を白い稲妻が通り過ぎていき、魔法の言葉を思いついたのだ!!
「実は私、小麦アレルギーでしてな」
「おっとこれは申し訳ない」
デスイタマエは小麦アレルギーというマタミンの言葉にまんまと騙された。
しかし……
「あれでも、さっきコメントしながら食ってましたよね?」
投げかけられた味王の言葉にギクリとするマタミン。
「いえいえ、急性の小麦アレルギーを発症したのです。急いで食べたので急に小麦が受け付けなくなりまして」
デスイタマエは納得いかない様子ではあったが、アレルギーを持つものに食べることを無理強いすることはできない。
それは板前として、いやその前に人としてどうかと思うからだ。
「とはいえ、せっかく作った食べ物を無駄にはできません」
「皆様に取り分けてもよろしいか?」
彼は「おっきりこみ」マタミン「以外」の全員に取り分けようとしたのだ!
まず一番マタミンの横にいた、ハーケンの鍋にそれが取り分けられた。
(手前えぇぇぇぇぇッ!!!!マタミンンンンンンン!!!!)
(いや~不思議なことが起きるものですなぁ)
マタミンは安堵し、心のうちで「いっそ俺以外の連中がみんな死ねば良いんだ!殺象剤でくたばっちまいな!!」と思っていた。
彼はこれ幸いと、ジョニーもろともハーケンも始末しようとしたのだ!
さすがは「漆黒の黒」のギルドマスターである。
自身のコンサルタントすらサツガイしようとは、何たる邪悪!!
ついに審査員も含めて全員に毒入りのスープが配られてしまった。
マタミンら二人以外には、このスープに毒が入っていることを知らない。
次の瞬間、全員が泡を吹いてひっくり返るのを期待していたマタミンだったが――。
全員がこともなげに「おっきりこみ」のスープをすっとすすり、飲みきってしまったのだ。いや、実際のジョニーは、かなり嫌そうな顔をしていたが。
驚愕したのはマタミン、そしてスープを前にして迷っていたハーケンだ。
殺象剤が入っているにもかかわらず、誰も何ともなっていない。
マタミンは立ち上がり、「バカな!毒が入っているのに!」と叫んでしまった。
彼はすぐに正気に返って、しまったと思ったが、もう遅かった。
この場の全員がマタミンの言葉を聞いていた。
「毒だと?」
「何の話しだ?」
ざわつく会場。
どよめきをその手で制したのはデスイタマエだ。
彼は懐から銀色のスプーンを取り出すと、まだ多くが残るハーケンのスープのなかをくぐらせた。そして……持ち上げられたスプーンの色は、火で炙ったかのように暗い茶色に変色していた。
苦々しい表情をして、彼は吐き捨てるように言った。
「なるほど、我の料理に、間違いなく毒物が入れられていますな」
「ち、違う!これはハーケンの!」
「てめぇ!!!!オレのせいにすんじゃね!入れたのは手前だろうが!」
「「――あっ!」」
「ほう……語るに落ちたということか」
「これは一体、どういうつもりですか?『漆黒の黒』と『ワイナビ』のお二方は」
味王と山原の二人、そしてデスイタマエが眼光鋭く二人を見据える。
もはや逃げようがなかった。
「どうやら料理勝負を口実に、我々をサツガイしようとしたのだな?」
包丁を手に詰め寄るデスイタマエに、マタミンは真実をボロボロとこぼす。
「ち、違う、あんたらは殺そうとしてない!ジョニーだ!板前のジョニーをやっちまうはずだったんだ!!」
「でも殺象剤っていう、象も殺すっていう毒薬を渡してきたのはハーケンだ!オレは無理やり入れさせらたんだァァァ!信じてくれぇぇぇ!!」
滝のような涙を流して命乞いするマタミンに、ついにハーケンがブチ切れた。
「そもそも手前が、料理勝負なんぞくだらねぇと、ジョニーをやっちまおうっていう話を持ちかけたんだろうがッ!サンシタのアサシンを飛ばしたくせにッ!」
「なんだと?!ジョニー、それは本当か?」
驚きの声をあげたのは、意外にもデスイタマエだった。
「ああ、『漆黒の黒』の御三家とかいう連中が、料理しているときに襲ってきた」
「まずあんた、デスイタマエの差し金とは思ってなかったけどな」
「なんと……これでは、この勝負は、最初から勝負の体をなしていなかったということではないか!」
「何が勝負だ!おれたちゃバフ料理で金が稼げりゃそれで良いんだ、お前の考えなんて、知ったこっちゃない!」
進退窮まったマタミン達は、今度は悪態をつき始めた。
「そもそも、ジョニーなんか、さっさと殺しちまえばいいだろう!」
「最初っからこうしちまえばいい!」
ハーケンとマタミンは、それぞれソードオフショットガンとリボルバー拳銃を取り出した。カチリと撃鉄を上げ、ジョニーに狙いを定めようとする。
「――ッ!お主らの争いはここまでにしてもらおう」
デスイタマエが動いた。ロールキャベツを巻く時なんかに使う、長いかんぴょうを取り出すと、それを西部劇のカウボーイがするように頭上で振り回し、ロープのようにして二人に投げたのだ!
たちまちのうちに、かんぴょうで簀巻きになって、二人は捕縛された。
「ヒューッ!すげぇやデスイタマエ!ありがとうな!」
軽くデスイタマエにお礼を言うジョニーだったが、彼はフンと鼻を鳴らした。
「勘違いするな、お前を助けたわけじゃない。勝負はまだ終わってないからな」
それはともかくとして、まだ気になることが残っている。
味王と山原は首を傾げながら、その疑問を口にした。
「しかし毒が入っているのは確かなのでしょう?なぜなんともないのでしょう」
「然り。このあと病院とかいかなくて大丈夫なのか?デスイタマエさん」
「ああ、それはですな……このグンマーで取れる野菜は、ドラゴンでさえ殺す猛毒を持っていましてな。そのために『おっきりこみ』には解毒剤を使用しているのです」
「「もっとやべぇもんが入ってたぁ?!」」
「あ、うちもグンマーの野菜使ってるけど大丈夫?」
「道なりに現れた、動いて襲ってきたやつなんだけど」
「動いてこっちを襲ってくる野菜に関しては、問題ないぞ、ジョニー。動く野菜はぶっ殺しさえすれば、普通に美味しく食べられる」
「動くということは、物理的に害獣を始末できるということだからな、その身に毒を持つ必要がない」
「なんだかなぁ……」
「しかし、一見普通の野菜に見えるもの、グンマーではそれが一番危険なのだ。この暗黒魔大陸に等しい大地で普通の野菜が生えていられるか?否だ。断じて否だ。」
「狼の群れの中にいる羊が、普通なはずはないだろう?」
「なるほど、それは言えてるや」
「ともかく、お前の料理を見る前に死なれたら、私としても困るのだ。さぁ、お前が作った料理を、我にみせてみろ」
「あぁ……!魅せてやるともさ!
デスイタマエになんとなく親しみを感じ始めていたジョニー。
しかし勝負は勝負だ。
彼は皿を並べ、自分の手番の準備に取り掛かった。
・
・
・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます