四天王との決戦 (結)

 親子丼を完食したじーちゃんばーちゃん達。

 その体がカッと光り、曲がった腰が真っ直ぐになり、白髪は色を取り戻す。


 ギルドマスターのサカキのばーちゃんは、出るところは出て、締まる所は締まっているモデル体型になっていた。真っ直ぐな黒髪とその雪のように白い肌は実に蠱惑的で、見事な和風美人だった。


 そしてジョニーの冒険者カードを作ってくれたドーマンのじーちゃんは、理知的だがどこか邪悪さを感じさせるメガネの魔術師になっていた。イケメンだがどこか陰のある様子。たまらん奴にはたまらん感じのアレだ。


 変わったのは彼らだけではない。ギルドの縁側で日向ぼっこをして猫を抱いていた「輝きの白」の面々は誰もが往時の姿を取り戻し……要は「若返っていた」のだ!!


「ファファファ……これは、一体何が起きた?!」


「俺が聞きたい!!」


 ジョニーもさっぱりわからなかった。

 料理バフの効果なのは間違いない、だがこんなことが起きたのは初めてだった。


「きっと、ジョニー君の想いが私たちに力をくれたのね」


「フン、気にくわないが、その想いとやらにのってやろう」


「ありがとう!俺にもよくわかんないけど!」


「ファファファ……だが若返ったとはいえ、所詮はジジババよ。現役世代の我々に敵うはずも無し……死ねぃ!!」


「ホホホ……ワイナビ四天王の連携技、その身に受けなさい!」


「クカカ……謝ってももう遅いぜぇ!!」


 ファビョランテがその両手から勢いよく炎を発し、バリバリシアがつむじ風を起こしてその炎をさらに強める。ゴウゴウと繚乱する炎は、ギルドハウスの中を狂ったように舞い踊り、サカキたちへ襲いかかった!


 ……そしてカイカイッツォは、ちゃんと水の入ったバケツを用意していた!!


「これぞ我らの連携技デルタ・アタックだ!」


「一人何もしてなくね?」


「ファファファ……バカ者!全員が働いていたら、もしもの時に大変だろう!」

「予備は無駄ではない!」


「なるほど!!」


 ミタケの突っ込みをよそに、炎はまるで生きているかのように姿を形を変える。

 そして地獄めいた火炎が、サカキたちに襲い掛かった!


 しかしその炎はドーマンの張った光り輝くドームによって弾かれる。

 弾かれた炎は千路に飛び散ってテーブルの上にあったナプキンを燃やすが、すんでのところで、カイカイナッツォがバケツの水で消し止めた。


「思い出すわね……こんな戦いは、いつ振りかしら」


「ああ、冒険者カードのステータスをみるに、当時のままって感じだな」


 サカキとドーマンが取り出したのは冒険者カードだ。

 そこに書かれていたLVは共に80台。そしてそのステータスは、ミタケもジョニーも見たことない感じの、万単位が並ぶ数字となっていた。


~~~~~~~~~


 『破空』のサカキ


スキル:『天空術』『神聖魔法』『審判』

状態 :若返り


LV:85

筋力 :12000

体力 :35000

器用さ:23000

素早さ:85000

賢さ :120000

魅力 :980000


~~~~~~~~~


 『陰陽』のドーマン


スキル:『陰陽術』『屍鬼神召喚』

状態 :若返り


LV:87

筋力 :14800

体力 :24500

器用さ:10000

素早さ:90000

賢さ :140000

魅力 :20000


~~~~~~~~~


「やるか、サカキ」

「えぇ!」


「ファファファ……嫌な予感がする。撤退!!」

「「おう!」」


「判断が速い!」


 ジョニーが四天王の判断の速さに驚いて声をあげた瞬間だった。


 ドーマンは既にお見通しといった様子で、呪文の書かれた紙を投げつける!

 すると宙を泳ぐように飛ぶ紙は、飛びながらヒト型になり、悪鬼のような姿になって四天王たちにつかみかかったのだ。


「ファー!!!ええい離せ!!離さんか!!」


「金縛りにする!!よしサカキ、吹き飛ばせ!!」


「パワーを光に!!」

「「いいですとも!!」」


 サカキがそういうと、ギルドの中にいた冒険者が、両手を空に向ける。

 するとどうだろう、彼らの両手から光が生まれ、サカキの元に集まっていくではないか。たちまちのうちに魔力の奔流が集まり、彼女は光輝く姿となった。


「天からの死を!!ジャッジメント!!」


 サカキの短い詠唱に応えるように、光の柱がワイナビ四天王を襲った!

 極太の白いレーザーが、ファビョランテたちを一瞬で焼き尽くした。


 残ったのは少量の白い灰だけだった。


「えっぐ」


 あまりにも容赦ない攻撃に、ジョニーもドン引きだった。


「ふっ、まあこんなもんかな」

「あなたは足止めしただけでしょ!」


「すげーな!ばーちゃんたち!」


「まあ、当時はこれくらいが普通だったけどな」


「ええ、冒険者ギルドが好き放題やり始めてから、本当に冒険者の質が落ちたわよね。精神的にも、もちろん能力的にも……」


「それがイヤで自分たちで冒険者ギルドを組織したんだけど、結局私たちも時代の流れには勝てなかった。ありがとうジョニーくん、やっと思い出せたわ」


「ああ、俺たちのやるべきことは、今の悪徳ギルドをなんとかすることだな!」


「ええ!」


「なあジョニー、ところで……なんで料理で若返んの?」


「さぁ?卵とトリ肉って、コラーゲンとかなんかがいっぱいで、肌にいいとか聞いたことあるし、それじゃない?」


「肌にいいからビームでんの?だったらニワトリもビームを撃てるよなー?」


「うぅむ」


 そういえば……俺が「漆黒の黒」の冒険者に出していた飯は、何となくでつくったものがおおかったのかもしれない。


 今回作ったのは、じーちゃんばーちゃんたちが楽しんで食べられるように考えた。

 違うのは、「思いやり」くらいしかない。


 どうなってるんだろうなぁと、首をひねるジョニー。

 しかし、その考えは彼にとんできたある言葉ですぐに吹き飛んだ。


「お代わり!」


「はいよろこんで!」


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