「漆黒の黒」御三家

~一方そのころ、グンマーのどこかで~


「フン……どうやら始まったようですが、あのジョニーとやら、どう見てもデスイタマエさんに敵うようにはみえませんね」


 ぼそりと口走ったのは、インテリヤクザ風の男だ。

 彼はイビルアイ、「漆黒の黒」のエース級冒険者だ。


 彼はスキル「邪眼」が宿った金色の瞳で、ジョニーを見つめる。

 すると、その視界に写ったジョニーの周りに、「足が臭い」「スネ毛が濃い」といった彼をディスるような内容がポンポン浮かんだ。


 イビルアイの持つスキル「邪眼」は弱点を見出す。

 しかし弱点は弱点でも、相手がディスられると一番凹む部分を見つけるのだ!

 

「しかしきゃつらはワイナビ四天王を倒したとのこと。見た目通りの雑魚ではありますまいて」


 イビルアイの言葉に答えたのは「ザコガリ師匠」だ。

 二束三文のボロボロのゴミ防具に、なぜかやたら質のいいスナイパーライフルという装備をしている彼は、その愛銃「イモスナMk2」をすっと構えた。


「ザコガリ師匠、バカはやめろッ、ここで殺したら怪しまれンだろうがッ!」


 スコープの先を手で遮って、狙撃をやめさせたのは「マウントナイト」だった。

 しかしこれは彼の善意から起きた行動などではない。


「奴を殺るなら、もっとモンスターの多い所でやれッ!死体が残るだろうがッ」


 そう、証拠隠滅を考えての事だった。


 彼ら三人はある任務を受けている。 

 それはごく単純なもので、ジョニーが料理を作り終えて、デスイタマエと勝負する前に始末するという任務だった。


 この任務を発したのは、もちろんマタミンとハーケンだ。

 

 ブラックギルドを経営する彼らは、こんな料理勝負に本気になるはずがない。 


 二人はギルドをハチャメチャにしたジョニーをたいそう逆恨みしており、人知れず抹殺するつもりだったのだ。


 マタミンたちにとって、この決闘はギルドから抜け出させ、ここに来させるための口実くらいにしか考えていない。そしてこの事実はデスイタマエも知らないのだ!


「ホッホウ、そうでしたな……ここは泳がせておきますかな」


「俺がやった時はモンスターを引き連れてだな……テクニックが……で……」


 マウントナイトはまた自慢話を始めた。


 彼は口を開けばなにかと自分語りを始めるので、日常会話すら困難なのだ。


 こうなるとすごーく、すごーく長くなるので、ザコガリ師匠とイビルアイは彼の事を放っておくことにした。


「フン……慎重すぎる気もしますがね。あのジョニーとか言う男、弱点だらけです」


「ホウ、しかし四天王を倒したというのも事実。ここは慎重にいくのがよかろうて」


「ザコガリ師匠は彼らの事をずいぶん評価するのですね。ただの雑魚ではないと?」


「然り。ただの雑魚なら、ここグンマーに来ることがそもそもできまいて」


「ではどうする?」


「ホッホウ!神話に伝わるような強者であっても、雑魚になる瞬間と言うのがありますからな。そこで仕掛けるとしましょうぞ」


「フン……では待つとするか」


「ホウ!お若いのは気が早い。まあ見てなされ、好機は必ずきますぞ」


「そして我ら『漆黒の黒』の御三家に歯向かった事、奴らに後悔させてやりますか」


「「フフフフ……」」


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