ワイナビ四天王

 一方そのころ――


 ~冒険者ギルド「ワイナビ」ヴァイス支部~


 『不祥事はバレるまでビジネス』と書かれた額がかけられた壁を背に、執務室に座る男が一人。冒険者ギルド「ワイナビ」の支部長「シャチク」だ。


 彼は先ほどから、まるでゲロ味のグミを食ったような顔をしていた。

 その原因は他でもない、板前のジョニーとミタケのせいだ。


 冒険者ギルド「輝きの白」に所属する冒険者にパリピ冒険者とはいえ、メンバーが負傷させられたのだ。


 ヤの付く自由業と似たコンセプトを持つ職業である冒険者が、「やられたまま」というのは到底許されるものではない。ケジメが必要なのだ。


「ギルド訓唱和しょうわ!!」


「へい!!」


「「忘れてはならないのは『恨み』!!」」

「「捨ててはならないのは『復讐心』!!」」

「「人に与えたいのは『一発の銃弾』!!」」

「「繰り返してはならないのは『敗北』!!」」

「「ケジメ!!」」

「「ケジメ!!」」

「「ケジメ!!」」


 周囲のパリピ冒険者が、その身を漆黒の戦闘服「リクルートスーツ」で包み、揃いのサングラス、揃いの髪型でワイナビのギルド黄金律「ケジメの歌」を合唱した。


 これはワイナビのコンセプトの「個性は不要」を現している。


 すべての冒険者に、同じ格好、同じ武装、同じ教育を施しているのだ。

 冒険者の品質を揃える為もあるが、主な目的はコストダウンだ。


 冒険者に個性を認めていたら、とても大変になる。そのためワイナビの冒険者は、このようにまるでクローンのような扱いになっているのだ。


 ワイナビと言う冒険者ギルドは、同じような能力の冒険者を「生産」する工場であり、それを使う軍隊であった。


 支部長のシャチクはどれも同じような見た目の冒険者を前に考え込んでいた。


 LV30を超すオニ娘のミタケに対して、通常の冒険者ではまるで歯が立たないだろう。いくらケジメ案件とはいえ、過大な兵力の消耗は避けたい。査定にも響くしな。


 ここはあいつらを呼ぶしかあるまい。


「ワイナビ四天王を呼べ!!」


「ククク……既におりますぞ」


「そうか!!見た目が同じだったからわからなかったぞ!!」


「服装規定は絶対ゆえ……!」


『火病のファビョランテ!』

「ファファファ……謝罪と賠償を要求してやっぁぁぁあ!!ムカツクゥゥ!!!」


『土気色のツカレタヨーネ!』

「フシュルルル……もう帰っていい?カフェイン切れそう」


『水虫のカイカイッツォ!』

「クカカ……いいじゃねぇか、なかなかイキのいい奴がでてきたんじゃねぇの?」


『痛風のバリバリシア!』

「ホホホ……ちょうどいいですわ、そろそろ女子会にも飽きた所ですわ」


「奴らは遠からず、町の外に依頼に出るであろう」

「一人一人挑むなどという愚は犯すな。まとめて囲んでボコボコにせよ!!」


「御意!!」


 シャチクは四天王に対して、無慈悲で的確な指示を飛ばした。

 そして4つの邪悪な影は、流星のように町の外へ飛び出していった。


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