★★★ Excellent!!!
闇と夜に生きる異種族のふたり、もてなしを競い合い、言の葉を交わす ヨドミバチ
魔女と魔術師は勝負をすることにした。
去年のクリスマスに合わせたアドベントカレンダー企画(基本12月1日~25日の毎日投稿で一作書きあげる自主企画)の参加作品なこともあり、現実の24・25日にあたる祝祭日をふたりは勝負の日と決める。内容は、祝祭のディナーで相手をもてなし、より相手を満足させた方の勝ち。1話ずつ、ふたりの視点を交互に入れ替えながら、それぞれの準備が整っていく様子を描いていく。
全体にゆったりとしていて、やさしく甘やかな雰囲気の物語だ。ただもてなしの準備にいそしむだけでなく、ふたりは異なる種族(魔術師は人間らしい)なりの異なる棲み処で、日常のことや季節行事など、それぞれの営みもこなしていく。合間合間に自然な流れで現れる幻想世界のフラグメントは、どれも童話のように品がよく、時には物々しく、どこか詩的でさえあり、小さな世界を驚くほど豊かに彩る。
ふたりはまた、勝負の日まで相手を訪ねないこととし、代わりに魔法のメッセージカードで進捗を報告し合うことにする。騒々しさとは無縁そうなふたりのささやかな〝文通〟は、時に恋人未満のようなういういしさやいじらしさを垣間見せ、読む者の心をあたためる。
しかしながら、ふたりは決して善の者ではないという。人を超えた倫理を持ち、闇に生きる者。時には恐ろしい業にすら手を染める彼らには、それぞれに確かに思惑と望みがあり、魔女が時おり見せるかげ…
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