詩的で何処までも美しい風景。祝祭の勝負に向けての、心地よい不思議

  • ★★★ Excellent!!!

 この世界観がとてつもなく素敵で、どう言葉で表現したらいいのか。

 冬の景色に感じる清廉とした空気、暖炉の匂い、香草の香り。夜の静寂、音が聞こえそうな星の瞬き、何処か恐ろしい闇と影。その空間に身を置いているかのような、臨場感と広がりを感じる文章と表現。

 自然と限りなく溶け合った美しい魔術の世界で、長い寿命を持つゆえか人とはずれた感性を持つのんびりとした素直な魔女と、冷徹でいつも何か企んでいそうな不穏な魔術師が勝負をする事になります。その日に向けてメッセージをやり取りしていく中で、お互いに影響を与え合って行く過程が最高。
 お話は、魔術師サイドと魔女サイドの交互で綴られていて、二人の日々と考え方のズレを味わいつつ、来るべきその日に向けて準備する様子が本当に素敵。
 
 読者の想像が入る余地もたくさんあって、1話ごとに噛み締めるように反芻するのも楽しい。
 雰囲気としては童話的なメルヘンさがありますが、「大人が読みたくなる」という言葉を添えたい感じです。

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