この世界観がとてつもなく素敵で、どう言葉で表現したらいいのか。
冬の景色に感じる清廉とした空気、暖炉の匂い、香草の香り。夜の静寂、音が聞こえそうな星の瞬き、何処か恐ろしい闇と影。その空間に身を置いているかのような、臨場感と広がりを感じる文章と表現。
自然と限りなく溶け合った美しい魔術の世界で、長い寿命を持つゆえか人とはずれた感性を持つのんびりとした素直な魔女と、冷徹でいつも何か企んでいそうな不穏な魔術師が勝負をする事になります。その日に向けてメッセージをやり取りしていく中で、お互いに影響を与え合って行く過程が最高。
お話は、魔術師サイドと魔女サイドの交互で綴られていて、二人の日々と考え方のズレを味わいつつ、来るべきその日に向けて準備する様子が本当に素敵。
読者の想像が入る余地もたくさんあって、1話ごとに噛み締めるように反芻するのも楽しい。
雰囲気としては童話的なメルヘンさがありますが、「大人が読みたくなる」という言葉を添えたい感じです。
森に住むふんわりおっとりした魔女と、夜の魔術師と呼ばれる冷徹な人間の男。
来たる祝祭日をどちらがより見事に彩ることができるのか、勝負に向けて準備をする二人の物語です。
お菓子やお酒、手紙に住居。そこかしこに魔法の組み込まれた世界観は、文字を追っているだけでワクワクします。
色香の漂うような文章と、隅々まで作り込まれた舞台。作者さまの発想と感性が素晴らしく、大変魅力的です。
純粋に祝祭日を心待ちにする魔女と、彼女に対して拗らせた想いを抱く魔術師の、絶妙に噛み合わないメッセージのやりとりが楽しい。
勝負の行方はどうなるのか。
二人の関係性に変化はあるのか。
結末をしっかり見届けたいです。